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過酷な境遇

俺「そういえば、ストリュとクラムはどうしたんだ?」


 魔法アイテムの倉庫を確認して1階に降りて来た所だが、二人が見当たらない。


エストリア「今朝から、あの二人には庭の掃除をやってもらってるわ。

    この館に主人がいない間、家の中は執事さんが綺麗にしていてくれていたのだけど、庭はそうでも無くて。」


執事「申しわけありません。」

あ、いたの! 相変わらず、執事さんは存在が希薄すぎる!


エストリア「いいのよ。執事さんの役目は館の保持であって、庭は含まれてなかったのよね。

 本来は庭師が必要なんだけど。」


俺「ストリュたちに出来るのか?」

エストリア「さぁ。どうでしょう。」

俺「おい! 丸投げで、放置かよ!、、。ちょっと、見てくる。」

エストリア「お願い。」


 庭に出ると、クラムは一応、それっぽく庭を掃いていた。

 ストリュは・・。竹ぼうきで、素振り?


俺「ストリュ! さぼるなよ!」

ストリュ「俺に、命令するな!」


 げっ。エストリアの指示には(したが)ってたじゃないか!


クラム「兄貴! ここではヒロタンが主人だぜ。」


 クラムはエライな。見た目はともかく素直さでは一番だろう。

 そういう意味では、この子もなぜ奴隷?って感じだ。しかも売れ残るとか。


ストリュ「わが主君(しゅくん)はただ一人。他者に(つか)える気など無い!」

俺「そういえば、聞いて無かったが、ストリュはどうして奴隷に?」

ストリュ「知らん!俺を奴隷にしたヤツに聞け!」


 うわ~。会話にならん!


俺「じゃぁ、おまえの主君って誰?」

ストリュ「セクタ王国 国王ダリャム三世 ただ一人!」


クラムが俺によってきて、耳元で

クラム「この前、帝国に滅ぼされた国なんだよ。王様もとっくに殺されてる。」


 つまり、戦争に負けて奴隷にされた?


俺「(すで)にいない王様に仕えるのは無理だろう。」

ストリュ「貴様! 俺を愚弄するか!」


 だめだ、まったく話しが通じない、。こういう時は。


俺「わかった・・。俺では手に負えないからエストリアを呼んでくる。」

ストリュ「ヤメロ!」

俺「へ?」

ストリュ「あいつはダメだ!ヤメロ!」


 何この反応。でもちょっと面白い。


俺「いいや。呼んでくる。すぐ呼んでくる!」

ストリュ「ぐぐっ。ヤメロ! 止めてくれ!」


 分からん反応だなぁ。


俺「なんでダメなんだ? 」


 おっぱい恐怖症とかか?


ストリュ「とにかく、あいつは苦手なんだ。俺も良く分からん。」

俺「まあ、俺もちょっと怖いと思う事はあるけど。」


エストリア「誰が怖いですって?」

ストリュ・俺 「 ひゃ!! 」


俺「い、いつから、そこに?」

エストリア「今、来たところよ。ヒロタンが戻らないから。」

俺「そ、そうか。」

エストリア「ストリュの事は、ルナから聞いてるけど・・。まあ、なかなか救われない境遇よね。

  ・・そういや、ヒロタンは聖者でしょ? それでも、なんとかして救う!とか?」

俺「むちゃぶりはヤメロ。聖者とか言われても無理だ。」

ストリュ「今、聖者と言ったか?」

エストリア「うん。こいつの職業に聖者というのがあるの。」

ストリュ「おまえが? う~ん。」

俺「何かあるのか? 聖者について。」

ストリュ「いや、なんでもない。ただ・・」

俺「なんだ?」

ストリュ「お前が、セクタ国を再興するなら、。」

俺「どうして俺が、そんな事を?」

ストリュ「俺の国には、聖者が国を救うという伝説がある。」

エストリア「面白いわね。ヒロタンがセクタ国を再興するなら、なんなの?」

ストリュ「国を再興するな、、。おまえに忠誠を誓おう。」

俺「すべては国のためか。古臭い価値観、、と言っても、それがストリュなら否定してもしょうがないのだろうな。」

ストリュ「そもそも、おまえが聖者というのが、ありえない(はなし)だ。」


 相変わらず会話にならない。


エストリア「ストリュ。とにかく、あんたは言われた通りに掃除しなさい!」

ストリュ「・・・分かった」


 おい!なんで、そうなる!


俺「やっぱり、変だぞ。なぜ、ストリュはエストリアには逆らわないのだ?」

ストリュ「・・、良く分からんが、かつての主君に仕えていた時のような・・」

エストリア「もしかして・・」

俺「何?」

エストリア「うちの家は、代々セクタと関係が深いらしいのよ。最近だと祖父の妹が、セクタの王家に(とつ)いだはず。」


ストリュ「そう言われると、どことなく陛下に・・。」


俺「う~ん。貴族社会か?なんか、ずるいな・・」


とか、やっていると、後ろから小さい声で。

クラム「俺、、ちょっと、、」

さっきから静かだと思ったら、クラムがフラフラしている。

エストリア「あら?! クラム! どうしたの!?」


 倒れそうになるのを支えたら、触れた部分が熱い。


俺「うわっ。すごい熱だぞ。」

ストリュ「早いな。今回は・・。そのまま運んでくれ。」

俺「よし!」


 意外に軽い。

 使用人の部屋のベッドは固いので、客間のベッドに寝かせた。


ルナリスも駆けつけている。

俺「もしかして、以前から病気なのか?」

ルナリス「はい。彼女が売れ残っていた理由は、、、もう、あまり長く生きられないから・・です。」


 えっ!?

 ちょっと待て! そういうのは無しだぞ!

 確かに昨日は、ストリュとクラムは要らんと思ったが。だが、だからと言って、それは無い!


俺「何か、薬とか、。魔法薬的な物とか無いのか?」

ルナリス「倉庫に回復系の瑠璃(デバイス)剤がありますが。この病気だと逆に悪化します。」

俺「悪化?」

ルナリス「エストリアは、インファラムって知ってるかしら。」

エストリア「軍にいた時に発生して騒ぎになったやつでしょ。もちろん、知ってるわよ。

 ちょうど、あの頃の魔王軍との戦闘でルナリスのご両親が行方不明になったし。

 確かにあれだと回復系の瑠璃(デバイス)剤は逆効果だけど・・」

俺「なぜ?」

エストリア「少し難しいからヒロタンに理解してもらえるか分からないけど・・。回復系の薬は、命を活性化させて回復を早める薬なの。そしてインファラムは目には見えないけど、小さい命が、体の中に入っておきる。

   だから、回復薬は病気を引き起こす元になってる方にも作用してしまって悪化するわけ。」


 うわヤバイやつじゃん。細菌かウイルスの伝染病だよ! ここに皆で集まって良いのか?


エストリア「でも、ルナ。あれは馬の病気でしょ? 軍で発生した時も馬が倒れただけだわ。」

ルナリス「人間の傷口に病気の馬の血を沢山、かけるのです。それで人間も。」

エストリア「なにそれ!?」

ルナリス「そして人間がかかると、ほぼ確実に死にます。定期的に発熱を繰り返して、その間隔が短くなり。」

エストリア「どういう事? 意図的に病気にしたという事?」

ルナリス「おそらく。」

エストリア「なるほど。つまり。、、、あれも、。」


 エストリアは時々、わけの分からない事を言うな。


俺「人から人には、うつらない・・という事で良いのかな?」

ルナリス「そもそも人間がかかる病気ではありません。かなりの量の、病気の元を体内に入れない限り人間は発病しません。」


 人に対しては、相当量の細菌だかウィルスだかが体内に入らないと感染しないと言う事か。

 AIDSよりさらに移り難いぐらいの理解で良いだろうか。


クラム「熱い!」

ルナリス「大丈夫? 水、飲めます?」

クラム「うん。少し・・」

ルナリス「何か、欲しい物あるしら?」

クラム「・・熱いから、、リンゴ水」

ルナリス「・・。ここにはありませんね。買ってこないと・・。少し待っていてくださいね。」


 皆に向かって、


ルナリス「どちらにしても、食べ物や日用品が必要です。買い物に行かないといけないでしょう。」

エストリア「そうね。そして、このあたりのお店を知っているルナリスが行くべきだわ。」

ルナリス「わかりました。でも、すみません。荷物が多くなるので、誰か、一緒に! それに、最近、治安も悪いですし。」

エストリア「治安ねぇ。護衛なら男ね。ストリュとサミアス・・かしら。」

ストリュ「何故、俺が・・。」

サミアス「ぼくはヒロタンさんと・・。」

エストリア「いいから、行きなさい!」


 まあ、一応、男だしな。それに十分、強いと思う。ストリュも、片腕が動かなくても、それなりに強そう。


ルナリス「クラムには十分に水を与えてください。それぐらいしか出来る事は無いのですけど・・。」

エストリア「了解」

ルナリス「一応、解熱剤も買ってきます。それで治るわけじゃ無いのですが。」


 3人がでかけた。


俺「この病気に効く薬は無いのか?」


 この世界の医療のレベルが良く分からんのだが。

 もし細菌なら抗生物質で。


エストリア「馬の病気の薬?」

俺「いや、馬で無くても、そういう、、、その小さい命が入ってかかる病気が他にあるだろう。」

エストリア「言ってる意味が良く分からないけど。馬のインファラムの治療薬は無いわ。

  かかった馬を他から離しておくだけ。」

俺「だから、馬じゃなくて、風邪というか、人間から人間にうつるようなやつ。」

エストリア「何を言ってるの? 人間に、そんな病気があるわけ無いじゃない。」

俺「へ?」

エストリア「常識で考えなさいよ。もし、そんな病気があったとして、人間なら、うつらないようにすれば良いのよ。それで、その病気は無くなるわ。

   馬のインファラムだって、帝国ではめったに発生しないのよ。野生の馬と接触する事で、発生するだけ。まあ、もし、野生の馬並みに未開の人間世界なら、あるかもしれないけど、この大陸には存在しないわ。」


 と言いながら、俺の表情を見て、。


エストリア「ま、まさか、あんたの元の世界って・・。」

俺「うん。そういう意味だと、その未開の世界だね。」


 元の世界が未開かどうかはともかく、伝染病が無いなら、この世界の方が良いだろうな。


 と、玄関の呼び鈴が鳴った。執事さんが出たようだが・・

執事「エストリア様。お客様です。」

エストリア「え?私に?」


 立派な馬車が来ていた。そして、玄関に向かったエストリアが玄関先で何か言い争ってるような声がしたが。

 戻ってきて、。


エストリア「少しでかけてくるわ。クラムをお願い。」

俺「いや、あの・・」


 行ってしまった。

 おい!どうすんだよ?


クラム「苦しい!」

俺「おわ、わ。大丈夫か?」

クラム「もう、だめかも。」


 お願いだから、しっかりしてくれ!

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