戦いの果てに
大統領官邸で、明日の戦いの作戦会議をしていたのだが・。
ライラ 「 皆さん! 安心してください! ステブリー・ギルドの新兵器が間に合いました! 」
大統領が、あきれ顔で・・
大統領 「あの教団に係わるのは止めろと言ったはずだぞ。 」
ライラ 「お父様。教団じゃなくて、ギルドです! 彼らの教義だけを見て言わないでください。
彼らの持っている技術は、すばらしい物ですよ。」
大統領 「役にたたない奇怪なガラクタばかり・・ 」
ライラ 「とにかく、皆さんに見て欲しいの。
ここに来るように連絡してあるわ。 」
ほどなくして、中庭に現れたのは・・。
装甲馬車? 西の島の戦闘用の馬車は客車を金属で覆ったものだが、これは馬も含めてアルミっぽい金属で覆っている。馬を動力にした装甲車?
皆が見ている前で、横の扉が開き、中から灰色のつなぎのような服を着た人間が4人、降りて来た。
そして、出迎えたライラと挨拶を交わす。知り合いのようだ。
ライラ 「説明してくださる。リサエル技師長・・でしたっけ? 」
リサエル技師長 「はい。お嬢様。
これは以前から戦闘用に開発していたものですが、ライラお嬢様にご連絡頂いて、急いで完成させました。
簡単に言えば、移動する要塞。全体を軽金属で覆っていますから、防御力にすぐれ、それでいて、普通の馬車と同程度の重量しかありません。つまり馬車と同様の速度で走行できます。 」
声からすると女性らしい。要塞は言い過ぎだよな。
ストリュ 「なるほど。馬も含めて装甲されているのは良いかもしれんが・・。
それで何台あるのだ? 」
リサエル技師長 「・・・。この1台を昨日からの徹夜作業で完成させました。
他にはありません。 」
ストリュがため息をついて・・
ストリュ 「相手は2万にもおよぶ大軍だぞ。
これ1台では、敵の馬車や騎馬隊に囲まれたら、それで終わりだ。
少なくとも100台作ってから持ってきてくれ。 」
ライラ 「何をおっしゃってるの?
これだけの軽金属を作るのに、ステブリーが、どれだけ苦労するか!? あなたは知らないのですか?
それを100台なんて・・ 。 」
ストリュ 「俺は戦略上の価値を言ってるだけだ。
悪いが1台、2台では意味が無い。 」
そういえばアルミっぽいが、どうやって作ってるのだろう?
精錬の電気はどうしてるのかな?
俺 「その軽金属?とやらは、どうやって作ってるのですか?
電気がいると思うけど。 」
リサエル技師長 「 何をおっしゃってるか分かりませんが。
超高温によって溶かした原料と、電撃の瑠璃から得られた魔法力で精製します。 」
そりゃ、たいへんだわ!
電撃の瑠璃なんて電圧が高いだけで、電力は乾電池以下だろう。
リサエル技師長 「 そういえば、噂では、西の島の魔王様は、強力な電撃魔法が使えるとか?!
協力して頂ければ助かります。 」
ミシャの事を言ってるのか? ミシャが疲れるから止めて!
俺 「 すまんが、それは無理だ。
だが、他の方法について、提案できるかもしれない。 」
リサエル技師長 「 他に?ですか? そうですね。
西の島は魔法の技にすぐれていると聞きます。
何かあるのであれば、是非、お願いします。 」
俺が言おうとしたのは発電機であって魔法じゃないけど・・
俺 「 この戦いが終わったら・・、 」
って、言いかけて気づいたが死亡フラグっぽい。そうだったらイヤだな・・
ストリュ 「 何の話か分からんが。
どのみち、戦力差から言って攻撃的な戦略は無理だ。
城壁を使った防御に徹するしかない。持ってくるなら防御兵器にしてくれ。 」
皆で、ありそうな敵の攻撃への対応を検討したが、あまり、まともな策は出なかった。大軍を相手にどうすれば良いやら。再び、不安な夜・・。
そして、翌朝、城門の前に現れたのは、沢山の兵士と、その先頭に立つ・・
勇者キヨハルじゃないか! どうして生きてるのだ?
少しホットしたけど。
しかも、なんと、両腕を使えるようだ。昨日、やられたはずの腕が復活している。
それでも、足を引きづっているし、体が少し傾いている。顔色も悪い。時々、胸を抑えて痛みをこらえるような仕草までしているし、どうみても、戦場に出て来れる状態じゃないだろう。
その崩れそうな体で、昨日と同じ大きな剣を持って、重そうな鎧を着た上に、なにやら盾まで背負っている。
足を引きづりながら、城門の前まで来ると大きな声で。
勇者「ヒロタンとの一騎打ちを、お願いします!
僕とヒロタンの一騎打ちで、今日の両軍の勝敗とする許可を得てきました!
ゲホっ」
血吐きそう・・。
なるほど。敵の大軍と戦うよりは、手負いの勇者と戦うだけで良いわけか。俺が負ける気もするが、それもまた、最小限の被害、、
ミシャが俺に小声で「絶対に止めてください!
あの状態でも勇者のパワーは桁違いです。お兄様が勝てるとは思えません。」
ミシャに強く言われると、。負けを覚悟でつっこむのは無しかなぁ。
突然、横から神官長が
神官長 「 おい! あれが勇者か? ありゃ・・ 」
俺 「 あっ。神官長も来ていたのですか? 」
神官長 「 おまえに渡した物が気になってな。 もう少し説明をしようかと、思って・・。」
と、城壁の下の勇者が、再び大きな声で、
勇者「 何をしているのですか!? 」
無視するなって事ね。
しょうがないから、俺が城壁の上から大きな声で
俺「 悪いが断るぞ! 」
勇者「 なんだって!? 」
意外だった?
勇者「 あなたは臆病物ですか? こんな状態の僕に勝てないとでも? 」
挑発にきた?そういうのは嫌いだよ。
俺「 あー。なんとでも言ってくれ。俺は弱いし臆病だから、一騎打ちなんて無理だ! 」
勇者「 くっ。ウ、ウソですね。僕をコケにしたいだけなんでしょう。 」
俺の答えに、勇者は、イラだってるような・・
勇者は勇者で、事情があるのだろうか。
勇者「 しかたありません。
これは使いたく無かったのですが・・ 」
後ろの兵士に向かって・・
勇者「 みなさん! 例の子供たちをこちらに!」
後ろの兵士が、貧しそうな子供たちを連れて来て、勇者の後ろ、兵士の列の前に並べた。剣を突きつけられて、皆、怯えている。
勇者「スラムにいた子供たちです。噂によると、皆さんのお仲間はこの子たちと同じスラムの出身者が多いとか。
あなたや隣の悪魔は気にしないでしょうけど、お仲間の皆さんは、この子たちを見たら、どう思うでしょうね? 」
実際、スラム出身者が多いロリャリムの兵士は、それを見て動揺しているようだ。いや、そうでなくても、これを見捨てたら、何を言われるやら。
俺「いや、ちょっと、待て! おまえは正義の味方じゃなかったのか? なぜ、こんな事をするのだ?」
勇者「卑怯な手を使う悪魔を倒すためには、やむを得ないのです。
この人たちを傷つけたくはありません。
一騎打ちを受ける気になってくれましたか? 」
ミシャが「無謀です!止めてください!」
俺も小声で「うん。ありがとう。でも、これではね。」
まったく、もう。
俺「一騎打ちで俺が勝ったら、その子たちを解放するという事で良いのだな?」
勇者「もちろんです!」
俺「そして、おまえたちは軍を引き上げる。」
勇者「そういう了解を得ています。もし約束が破られたら、その時は彼らが僕の敵になる。」
神官長が横から 「 行かない方が良いぞ。あれを使っても勝てるとは思えん。
ありゃ、既に死んでるみたいなもんだ。あれで、どうして理性を残しているのか・・ 」
ここで、それを言われても・・
勇者「早くしないと、一人づつ・・ 」
俺 「わ、わかった!今、行くから、ちょっと待て! 」
ミシャを振り払うようにして、城壁から縄梯子をつたって降り、勇者の前に立った。
下から見上げると、城壁の上で皆が僕らを見ている。
ルルムやミルレも来ていたのか。回復したみたいだな。良かった。
そして、もしかして、皆の前で俺は死ぬのか? 願わくば、俺が死んだあと、うまくやってくれ。
勇者「やっと正々堂々の戦いが出来ますね。」
俺 「人質を取って脅迫するのが正々堂々?」
勇者「大丈夫です。決闘は二人だけの正統な物にします。
まあ、これだけ、負傷している僕は、ハンディを負った戦いでしょうけど。」
それでも、勇者は十分に強いと思うぞ。
勇者「でも、勇者は最後には勝ちます! ピンチこそチャンスです! 」
そういうと、背中にしょっていた盾を手に取った。向かい合う二匹の亀が描かれている。全体が、強い黒で凹凸が良く分からない。
勇者「普段の戦いであれば、僕に防御は不要なんですが。
これは、エルビナンドの盾と言われる絶対防御の盾。
これを持ちださないといけない状況を作ったあなたは、これまででも最高レベルの強敵です。
かつて僕が倒した大魔王テルオミに匹敵すると言って良いでしょう。」
同じような事を前にも言われたかな?
俺 「え~と、。そんなに強敵なら、ここは戦わずに平和的な解決策を・・」
勇者「・・・。今更、何を言ってるのですか? 」
俺 「地位とお金を約束するので・・」
勇者「悪魔の言葉に耳を傾けるほど愚かではありません!」
それだけ言うと勇者は剣と盾を構えて、足を引きづりながら、迫ってきた。昨日ほどの速度は無いが、それでも意外に速い。
俺が手に構えたのは、昨日の夜、神官長とルナリスに作ってもらった複数の瑠璃を付けた棒。ミシャが気にしていたので、一応、対勇者戦用に用意したものだ。 全自動で、普通はルナリスとかじゃないと使えない魔法が使える。さっき、神官長に否定されてしまってるが、やるしかない!
サングラスを付けてから、振る!
光が周囲を満たす。
当然のように、勇者は、その光を剣で遮るが、この棒は、その状態で、一瞬遅れて光の刃を飛ばす。光を遮っているから俺の方向は見えないはず。見えない所から、光の刃が来れば避けようが無い!
だが、光の刃は勇者が正面に構えている盾にぶちあたった。衝撃で少し後ずさったが、特にダメージは受けていないようだ。盾には傷一つ無い。そして、再び向かって来る。なるほど、対策済みという事か。
ならば!
俺はできるだけすばやく横に動く。今日の勇者は、昨日のように爆速では無い。周りこむように動いて、少し違う角度から再度の光の刃!
だが勇者は、それを予想していたとばかりに盾の向きを変え、正確に光の刃を受けた。それどころか、横に動いた俺に向けて突進してくる。あれ? どういう事? 剣で目の前をふさいでいても、前が見えてるのか? どうやって? 光の魔法も対策済みなの?
だが、考えてる余裕などなかった!
既に俺の目の前に迫った勇者の剣が燃え上がり、振り下ろされる! 俺にふせぐ手段など無い!




