司祭長の思惑
バルマ「大瑠璃の間は、私が閉じてロックしたぞ。
開ける方法は秘密だ! おまえたちに勝手に使われるぐらいなら、この神殿は閉鎖する!」
ミシャ「もう一度、電撃を浴びたいみたいですね。」
バルマ「死んでも教えないぞ。」
神官長「う~む。他の大瑠璃を探す時間は無いかもしれない。」
うわっ。どうするんだ?
っと。近くに停めてあった俺たちの馬車の一つから、誰かが首だけ出して大きな声で!
「祭壇を右に動かせば開きますよ。」
バルマ「なんじゃと! なぜ、それを! ・・、その声は?」
バルマが馬車に駆け寄って、中を覗き込み
バルマ「サリスでは無いか! 戻らんと思ったら・・。」
サリス「人違いです!」
バルマ「いいから、帰るのだ!」
サリス「いやですよ! お酒が飲めないところへは行きません!」
えっ? まさか、こいつが、サリスの父親とか?
神官長「良く分からんが、大瑠璃の間の開け方が分かるなら行けそうだな。
すぐに始めるぞ。
優秀な助手が欲しいところだが・・」
ロコナ「やるわよ。医療系の操作は初めてだけど。」
神官長「あー。おまえなら、大丈夫だろう。やるぞ!」
大丈夫なのか? ルルムに変な改造とかしないでくれよ。
医務室のベッドが大瑠璃の部屋に運ばれて、ルルムとミルレが大瑠璃の下に寝かされた。移植は大瑠璃経由で、部位を移動するらしい。
麻酔も何も無いため、大丈夫かと思ったが果たして。
神官長「ひどく痛むと思うが絶えてくれ。特に取られる方は死ぬほど痛いと思う。」
そうなるわけか!
ミルレ「かまいません。それでルルムが助かるなら、やってください。」
神官長「良い覚悟だ。知識があると良いのだが・・。魔法の経験は?」
ミルレ「洗礼は魔法職ですが、魔法の勉強は親に止められていたので・・。」
神官長「そうか。わしのところに来れば、教えてやるぞ。」
ミルレ「そうですね。そういう機会があれば、ぜひ。」
大瑠璃の光が強くなっている。
ロコナ「神官長!大瑠璃の出力、安定してるわ。いつでも行けるわよ。」
神官長「構成も完了。制御を開始する。
提供者の縫合と摘出、移植と移植者の縫合まで。
位置確認後、ずれないように瞬時に行うぞ!」
一瞬の閃光の後、ミルレが悲鳴をあげた。痛みで、おなかを抑えて、もだえる。思わず駆け寄ったが、涙を流しながら笑っている。うん、最高だね。可愛くて魅力的だ。最近、そう思うよ。
ルルムも痛そうに顔をゆがめているが、そこまででは無いかな。泣いているのは、うれしいからだろう。
神官長「終わった。おそらくは成功しているじゃろう。」
ルルム「あ、ありがとうございます!」
神官長「だが、この大瑠璃の反応は妙だな・・。
お前たちは、ここの神官・・では無いのだよな?」
ルルム「私が神官様など、。ありえません。」
ミルレ「なんの事?」
ミルレは、まだ痛そうだ。しばらくは、寝ているべきだろうな。
神官長「ふむ。遠隔認証のサービスが起動されたが・・。
この国の大瑠璃の機能じゃろうか。」
ロコナ「なかなか面白い機能ね。
大瑠璃そのものは、私たちの国の物と同じに見えるけど。」
神官長「ふむ。起動シーケンスを確認しておいてくれないか。」
ロコナ「了解。記録を保存したから、あとで解析しておくわ。」
俺「ついでと言っては何だが、ここにいる魔法使いさんたちで、首都のルナリスと通信できないか?
状況を伝えないと・・。」
ロコナ「いいわよ。エミャルが手伝ってくれるなら。」
エミャル「はい。そういう仕事は久しぶりですね。」
で、通信がつながると、慌てた様子のルナリスが、
ルナリス『首都の通信を傍受していたのですが。
国防長官のトスレイが、軍を率いてクーデターを起こすみたいです!
どうしましょう?!』
なんだか、こういうパターン多く無いか?
俺「この国でクーデターだと、狙うのは大統領かな?」
ルナリス『そうですね。おそらくは。』
ベッドから、
ミルレ「な、何の話し?」
俺「成功するだろうか?」
ルナリス『急襲すれば大統領の殺害は十分に可能でしょう。この前の私たちの作戦から見ても大統領官邸の警備は貧弱です。或いは、意図的に警備が貧弱な状態になっていたのか・・。』
俺「なるほど。現在の政権の破壊は簡単・・と言う事か。」
ルナリス『その後、混乱と、ある程度の内乱は避けられないでしょうけど、最終的にトスレイが国を掌握する可能性はあります。』
ベッドで、おなかを抑えながら起き上がったミルレが、
ミルレ「待ってよ! それって・・。」
神官長「おまえは、しばらく安静にしておれ。」
俺「どれくらいの兵力だと思う?」
ルナリス『軍の兵力は首都郊外の基地に5万人ぐらい、。首都城内の国防総省付近だと1万程度。
トスレイが、その内、どれだけを動かして官邸を攻略するかは分かりません。』
一部と言っても千人単位かな。西の大陸から来た百人単位の俺たちの兵力とは桁が違う。
俺「ミルレは、大統領の殺害を阻止したい?」
ミルレ「あたり前でしょ! なんとかしてよ! お願い!」
いや、俺に言われても・・ねぇ。
ルルム「私からも、、お願いします。」
俺「ん?ルルムにとっては敵じゃないのか? おまえたちが戦っていた共和国の大統領だよ?」
ルルム「それで皆が救われると信じていたのですけど。でも、今は、。」
エミャル「首都が内乱状態になるのは避けたいですね。商会としても。」
俺「分かった。」
なんで、俺がって気はするが・・
ルナリス『待ってください。トスレイが動かせる兵力が軍の一部だとしても、我々が、まとも戦える規模ではありません。
我々に出来るのは逃げるか、自衛しながらの静観か、。』
俺「とりあえず、静観してくれ。
また、連絡する。」
策があるとすると・・。
大瑠璃の部屋の外では、バルマとサリスの親子喧嘩が続いていた。
俺「司祭長。相談したい事があるのだが・・。」
バルマ「断る!」
うわぁ。即答かよ。
サリス「この人は魔王信仰を利用して、スラムの住民を扇動しただけよ。
本当の魔王様の言葉だからって従ったりしないわ。」
まあ、そんなところか。
バルマ「私は必要な事をやっただけだ。宗教とは、人々を導くための指針だぞ。
それによって、より良い社会を作る事が神官の務めよ。」
洗脳しての自爆攻撃が正しいのか?
とりあえず、司祭長に聞きたいのは・・。
俺「いきなり攻撃して申し訳なかったが、敵対する意図は無いのだ。
できれば平和的に。」
バルマ「今更、何を・・。」
俺「とりあえず、教えて欲しい事があるのだが・・」
バルマ「ごめんだね!」
俺「・・・。
我々と一緒にいた、ミルレという娘の事なんだが・・。
実は大統領の義理の娘で・・。」
サリス「ミルレさんの事なら、さきほど私が聞いてみたのですけど父にも分からないそうです。
すみません。」
バルマ「大統領が大事にする義理の娘というだけじゃ、皆目、分からんよ。
それこそ、何かいわくのある指輪でも付けていれば別だが・・。」
サリス「ミルレさんは、特に何も付けてませんね。」
バルマ「おまえたちの指輪は、全員、チェックしている。特殊な力があると困るからな。
ヒロタンとミシャの指輪以外に、いわくのありそうな指輪は見とらん。」
俺「そうか。」
ミルレについては大統領に聞くのが早いだろうな。それかトスレイ。
俺「実は首都で軍事クーデターが起きそうなんだ。」
バルマ「トスレイのヤツか? 」
俺「・・。知っていたのか?」
バルマ「いや、まあ、ありそうな事だからな。」
俺「なるほど。
で、協力して欲しい事が。」
バルマ「断る!」
俺「残念だ。
悪いが、あんたは閉じ込めておくよ。教団を勝手に使わせてもらうぞ。」
と言いながら、電撃の棒を取り出した・・が。
バルマ「ま、まて・・。
おまえは本当に魔王なのか? さっきの少女も魔王と言っていたらしいが?」
俺「二人とも、魔王だよ。」
バルマ「そう、、なのか? 二人とも?
ふ~む。
伝承によると魔王は選ばれた心を持っているらしいが。どういう意味なんだ?」
俺「分からない。だが、あんたよりはマシだと思うぞ。俺はともかく、ミシャは絶対にね。」
サリス「そうね。
確かに、このヒロタンさんは伝承の魔王に近い感じがするわ。」
神官長「ヒロタンは、かつての大魔王テルオミ様に匹敵するかもしれんぞ。」
えらく持ち上げてくれたな。バルマへの牽制だろうけど。
そのせいか、バルマが考え込んでいる。
バルマ「う~む。
うちは古い魔王教団から続く神官の家でな。サリスは誤解しているようだが、。」
神官長「言っておくが、これらの魔王は、あんたが作り出したニセ宗教の魔王とは違う物だぞ。」
バルマが笑った。
バルマ「分かっているよ。」
神官長「ほぉ~。分かっていて、やっていたのか。
ミシャ様、こいつは殺しておくべきですぞ。」
ミシャ「それは、今後次第ね。」
バルマ「わ、分かった。魔王様に従おう。それが私の家の本来の務めでもある。」
サリス「調子良いこと。」
バルマ「いや、だから、本来の務めだと言ってるだろうが。」
大丈夫かなぁ? まあ、いいか。 この際だし。
俺「協力してもらえると助かる。クーデターの阻止には、軍事力が必要だ。」
バルマ「阻止か・・。 今の、ここの軍に、そんな力は無いぞ。
解脱・・洗脳を使わないつもりなら、ほとんどなんの役にも立たん。」
俺「兵士の数はいるようだが・・。」
バルマ「もともと、資金も資材も無いスラムの住人の寄せ集めだ。練度も装備も最低。
すでに、食料もつきかけている。」
エミャル「首都まで来て頂ければ、食料はなんとかできると思います。
大商会のお金で。」
バルマ「大商会? バカな事を言うな。 それこそが、我々の最大の敵だぞ!?
スラムは大商会によって作られたと言っても良い。」
エミャル「エルラン商会は経営が変わったのです。」
バルマ「我々の情報網をなめてもらっては困る。
もちろん、経営が変わったのは知っている。だが、新たな経営者は地獄の鬼のような女だそうだ。」
エミャルが倒れそうに・・




