教団の儀式
寝る場所を変なヤツに取られてしまった。こういう場合は!
確か、近くにミシャの小さ目のテントが……。良く見えないけど、星明りで探すと、、。
あった!
俺「すまん。変なのが来て、俺の寝床が無くなってしまったので……」
「あれ? ヒロタン様ですか? 」
って、ルルムじゃないか!? 間違った!
俺「あ、いや。ちょっと。」
ルルム「いかないでください! お願いです!」
うわっ。どうしよう・・
ルルム「ごめんなさい。このテントはスラムや戦場を思い出します。だから、怖くて……。」
不満を言わない子じゃ無かったっけ?
でも、まあ、もうあまり長く無いから……なのか
俺「怖いよね。」
ルルム「ヒロタン様といられれば、大丈夫です。お願いです!」
星明りで、ルルムの青い目に浮かんだ涙が光る。こういうルルムは初めて見たかもしれない。
俺「分かった。いかないよ。」
ルルム「ありがとうございます。」
寝具が涙で少し濡れている。
俺「でも、俺は、そんなに良い者じゃないぞ。もし、洗脳を解いたらショックだと思う。」
ルルム「何を言っているのでしょう?」
俺「うん。いいよ。今は、俺で救われると言うなら……、それで。」
ルルム「救われる……わけでは無いかもしれません。
ただ、最後まで少しでも幸せを感じたい。それだけです。」
良く意味が分からない。洗脳とはそういう物?
それにしても、ルルムの悲しげな瞳は思った以上にミルレに似ている。やっぱり、何か……。
ルルム「生きていても苦しいだけの時間が大半だったのです。
今は、ヒロタン様について来て良かったと思っています。」
でも、泣いてるよね。
俺「辛い?」
ルルム「そ、それ以上は聞かないでください。本当は、もっと……」
ルルムはしばらく泣いていたが、頭をなでていると、いつの間にか静かな寝息に。俺も眠くなって、そのまま……。
翌朝、ルルムのテントから出て来たところをミシャに見られてしまった。何か言われるかと思ったが、、。ミシャのテントと間違えたという言うと、少し不満そうな顔をしただけで特に何も言わなかった。
この町にいると、バルマたちに殺されかねないし、首都に帰ろうかと思っていると、。
バルマとは別の司祭たちが儀式を行うので立ち会ってほしいと言ってきた。信仰を作り出して、それを利用しているバルマたちから見ると俺たちは邪魔な存在で、信仰を受け入れている者にとっては、その信仰の対象という事……だろうか。丁重に対応してくれている。
バルマも他の者たちの手前、表向きは俺たちを敬っている。魔王の力を恐れているだけかもしれないが。
そのバルマがやってきて。
バルマ「解脱の儀式を行います。皆、魔王様に儀式を祝って頂きたいと願っております。
新しい解脱者に祝福を授けてください!」
どうやら、解脱と言ってるのは洗脳の事で神殿で洗脳を行うようだ。ミシャが行きたいと言うので、司祭たちに従う事にした。
神殿の中庭に、一段高くなった客席のような場所があり、そこに司祭たちと並んで座らされる。開け放った扉から奥の大瑠璃の光が漏れくる。
ミシャ「酷いですね。大瑠璃をこんなふうに使うなんて。
止めないと!」
どうやって? こういう時のミシャは何をするか分からない! 無茶は止めて欲しい!
神官長「おや? ヒロタンとミシャ様ではないか!」
なんと、司祭たちに交じって、魔王国の神官長が座っているではないか!おまけにロコナまで!
ここの教団の司祭の服を着て、あまりに自然に座っていたため、声をかけられるまで気が付かなった。
俺「なぜ、神官長がここに? ロコナも?」
神官長「港で、ここの話を聞いてな。
西の島の魔王国から来たと言ったら、入れてくれたよ。
その後、私らの魔法の技術を披露したら司祭に加えてくれたわ。」
ロコナ「面白い物が見れるって言うから、私も来たの。今は私もここの司祭よ。」
俺「いや、でも。」
神官長「こういう大瑠璃の使い方は興味深いと思ってな。」
ミシャ「神官長! 不謹慎ですよ。 明らかにわたしどもの教義に反する行為です!
これが魔王教の教団などと……。」
神官長「ミシャ様……。申しわけありません。
ですが、大丈夫です。今少し、ご欄くだされ。」
神官長の言葉が終わらないうちに、大瑠璃の光が消えた。司祭たちがざわついている。
神官長「ここの大瑠璃を見せてもらった時に、細工をしておいたのじゃ。
こうした使い方をすると、すぐに機能を停止して自閉状態に移行する。」
確かに大瑠璃は停止しているようだ。
神官長「こいつらの魔法技術自体は幼稚でな。
それなのに、何故、こうした高度な構成が出来たのか不思議なんじゃが。」
俺たちが話していると、司祭長がやってきて……。
バルマ「せっかく魔王様がいらしたと言うのに。大瑠璃に不都合が入っているようです。
今、急いで修復しておりますので、少し、お待ちください。」
ミシャが棒を取り出すと、司祭長に向けて一撃を加えた。司祭長が倒れてのたうつ。相変わらず容赦無い。
ミシャ「このような物が魔王教団など、。魔王への冒涜です。」
司祭たちが一斉に立ち上がって騒ぎ始めた「司祭長が!」「何をしている!?」
一部の司祭や教団の兵士がミシャに魔法具や剣を向けて迫ってくる。俺とトラクがミシャを守るように囲んだが……。相手が多すぎるぞ!とてもじゃないが……
するとミシャが別の棒を取り出し、空に向けて振った。ミシャの頭上に大きな星のマークが浮かび、そこから光の粒があたりに降り注ぐ。昼間なのに花火のようだ。
それを見た回りの人々が、地面に座り込んで頭を下げ始め……
「文献にあった……聖紋。」「まさか、この目で見れるとは!」
「まさに魔王様だ!」
そんなのがあるのか? 俺は知らんかったぞ!
ミシャ「このような行為は、魔王である私が許しません。」
それでも、司祭の一人が立ち上がり
「解脱した兵士がいないと、我々は勝てません。
共和国のやつらに蹂躙されます。」
ミシャ「それが何だと言うのですか?」
大半の人たちはミシャの言葉に従順になったようだが……。
やはり、何人かの人間が剣を抜いて迫ってくる。バルマの仲間だろうか?
「解脱は志願者だぞ! 俺たちが生き残るためには、解脱した兵士が必要なんだ!」
「スラムで飢えて死ぬか、ここで戦うか! 俺たちの選択は2つしかない。」
「私たちを惑わす、この魔王はにせものだ!」
ミシャに、もう一回の魔法行使は無理だろう。今は近くにエミャルが来ているから、俺は繰り返し使えるはず!俺が電撃で!
だが、ミシャが彼らの前に立ち、そして、やさしい笑顔で。
ミシャ「大丈夫です。恐れる事はありません。
ここにいる、お兄様が、このような事をしなくても皆が生きていけるようにして下さるでしょう。」
そして俺を指さす。
えっ? 俺が!? どういう丸投げ?
ミシャが笑いかけると、ミシャに向かっていた兵士たちが停まった。
でも、俺にどうしろって言うの? そんな予定は無いのだけど……。
エミャルが小声で、。
エミャル「スラムと市内を分ける城門を開放すれば良いでしょう。
混乱はあると思いますが、それである程度、解決します。」
俺「そんな事を、あの大統領や、この国の支配者が許すと思えないが……。」
エミャル「大丈夫ですよ。」
俺「へ?」
ミシャの演説は続いていた。
ミシャ「既に洗脳、、解脱、されている人は、今ここで、その解脱を解くのです! 魔王の命令です!」
ざわめいていたが、ミシャの言葉に従うようだ。司祭長を除けば、結局、魔王様に従順なのかな。
その司祭長は、まだ、電撃で気絶している。
神官長が、すぐに大瑠璃に解脱……洗脳を解くための構成をやってくれた。
神官長「シーケンスを逆にすれば良いだけだから簡単じゃよ。」
そして、これまでに洗脳された人が集められている。
ルルムも……解かないと。そのために来たのだから。
探すとルルムは馬車の中にいた。
俺「おまえの洗脳も解かないといけない。」
ルルム「どういう事でしょう? 良く分かりません。」
俺「洗脳が解かれると、おまえは俺から離れると思う。
その前に、これを渡しておくよ。洗脳が解かれた後も大事にしてくれ。」
そして、用意しておいた鞄を渡す。少しばかりの……
ルルム「ずいぶん重たい鞄ですが? 何でしょう?」
俺「2節分の回復薬と、おまえが安全に持てる範囲のゴールドだ。
俺から離れても、その薬とゴールドは捨てないでくれ。」
鞄を肩から下げたルルムを、洗脳を解く人々の列に並ばせた。大事そうに鞄を抱えている。
ミシャも気になったのかやってきて、俺に小声で……。
ミシャ「ルルムですが、後で神官長に診てもらってください。」
俺「何故?」
ミシャ「神官長は優秀な医者でもあります。何か方法があるかもしれません。」
俺「そうだな。もし少しでも可能性があるなら……」
順番に人々が神殿の奥の右の扉から入り、洗脳を解いて左から出ていく。それを中庭の席から見ていた。解かれると叫び出す人も多い。洗脳されていた間、何をやっていたかを思いだすと、そうなるのだろう。ルルムのように洗脳状態で自爆攻撃をやっていたりしたら、。そして、その結果、自分の体が……。
もっと近くに行きたかったが、ミシャに止められた。
ミシャ「ルルムの状態によっては、お兄様自身が絶えれないと思いますよ。」
そうかもしれない。
ルルムが神殿の扉の右から入り、そして
すみません。仕事が忙しくて、アップの頻度が落ちてしまって。




