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隠し倉庫とルナリス

ブックマーク登録ありがとうございます!

今回、少し、この世界の説明的な文章を入れました。後々、必要になるので。

 ふかふかのベッドで目覚(めざ)めた。それだけで、幸せな感じ。

 おまけに誰かが朝食の準備をしている音がする。

 ここに来てから明日をも知れない感じだけど、今の雰囲気は幸せかもしれない。


 2階の自分の部屋を出て降りていくと、(すで)にみんな起きていた。

 台所で朝食を作っているのは、ルナリスとサミアスらしい。


 エストリアは広間の椅子に座って、何かを読んでいる。俺に気が付くと、


エストリア「おそいわね。」


 広間には執事さんもいた。エストリアにお茶を注いでいる。

 主人が俺じゃ無さげなのには慣れてきた。


俺「おはよう」


 良く見るとエストリアが読んでるのは、手に持った(ステック)の先の宝石(デバイス)が表示する文字。

 もしかして新聞なのか? おまえは親父キャラか?


執事さんが俺に

「ご主人様に、明日の朝第二刻に、お城にお越しいただくようにとのご連絡です。」

俺「誰から?」

執事「それが特にお名前が無くて・・。大広間の入り口まで来てほしい、、とだけ。」


 まあ、たぶん、左大臣あたりだろうな。その次の日から議会とやらだし。


 エストリアが、ひどい顔で俺をにらんでいる。

 怪しいよな。


 洗面所で顔を洗う。

 鏡に映る俺は、、この世界に来る前とだいぶ違う。なんだか、髪の色が薄くなってるし、そもそも若返ってる。

 この世界の人間になってると言う意味だと、召喚というより転生なのだろうか。


 洗面所には、紐を引くと水が出る水道がある。

 文明レベルが分からないのだけど、シャンプーみたいな液体だが泡の立つ石鹸があるし、(こな)だが歯磨き粉も。

 あれ?歯磨き粉だから粉で良いのか?


 こういう異世界転移は中世とばかり思っていたが、ここの文明は元の世界の近世レベルだろう。

 自分で体験して思ったのだが、中世世界に異世界転移したヤツって、普段の生活が相当大変じゃないかな。あまり書かれていないが、どうやってるのだろう?

 ここが近世で良かったよ。


 エストリアが台所に向かって

エストリア「やっとヒロタンが起きてきたわ。朝ご飯にしましょう!」


 そして、窓から庭に少し顔出して

エストリア「あんたたちも上がってきなさい!」


 サミアスが台所から飛んできた。

サミアス「おはようございます。」

 昨日までとぜんぜん違うキャピキャピな感じ。そして、当然のように、おれの側に座る。


 庭にいたらしい、クラムとストリュもやってきた。


 そして、ルナリスが料理を運んでくる。

 昨日の残り物に手を加えたみたいだが、良く出来ている。

ルナリス「今朝のサミアちゃん、どうしちゃったのでしょうね。なんだか、とっても明るくて。」


 料理は、なかなか美味しいぞ。


エストリア「環境が変わったからでしょ。奴隷商とは違うもの。」

ルナリス「昨夜のパーティの時は変わってませんでしたよ?」

エストリア「、、。パーティの後?」


 エストリアの視線の先で、サミアスが俺をチラ見して少し恥ずかしそうに笑っている。


エストリア「サミアスちゃん。あなた、まさか・・。あの後、ヒロタンの部屋に行ってないわよね?」


 サミアスが、恥ずかしそうに小さい声で、

サミアス「い、行きました。」


 おい!顔を赤らめて目を伏せるな! そんな態度だと、


エストリア「うわっ。

    ヒロタンって、そういう人だったのね。」


 ほら、みろ!


俺 「エストリアが考えてるような事はしてないぞ!」


エストリア「隠さなくても、いいのよ。、、。安心して。私は、そういうのを否定したりしないわ。国によっては多いって言うしね。」


 少し小さい声で俺だけに「後で、私にだけ詳しく教えてね。」


 微妙に嬉しそうだぞ。こいつ、(くさ)って無いか?


俺 「だから、違うって!」


ルナリス「あの~。そういうの、、とか。何の話でしょう?」

エストリア「ルナは知らなくて良いの!」


 いやいや、エストリアは何を知ってるんだよ!


エストリア「そういう事なら、昨日のあなたも納得できるわね。なるほど・・。

      最初から、そのつもりだったわけか。」


俺 「いや、だから・・」


 俺に向かって

エストリア「しかし、あんたって、ほんと変わってるわよねぇ。」


エストリア「まさかとは思うけど、異世界から来た勇者・・と言うのは本当なの?」

俺「どう答えて良いか分からんが異世界から来たのは事実だ。」

エストリア「う~ん。信じて良いやら・・。確認する方法は無いし。」


ルナリス「異世界召喚の理論なら読んだ事がありますが、召喚者の魔法回路には(ひずみ)が残るって言われています。通常の洗礼による物とは違うようですから、それを確認すれば・・」

エストリア「なるほどね。でも、魔法回路を確認する水晶が今は無いでしょ。」


ルナリス「あるかもしれません。」

エストリア「何処に?」

ルナリス「うちにです。」

エストリア「へ?」


 食事のあと、ルナリスに付いて、エストリアが使ってる部屋、つまり元の奥方の部屋に3人で上がってきた。

 俺と、ルナリスと、エストリアの3人。


 俺が使っている部屋との直通のドアの前は、、特に何も無いな。

 昨日は机や椅子を積むと言っていたけど・・。


ルナリス「ヒロタンさんは知らないと思いますが、私の母は帝国軍の魔法兵大隊の隊長をしていました。」

エストリア「私もルナリスも、ほんとに良くしてもらっていたのよ。それが、あんな事に・・」


ルナリス「母は、帝都での有事(ゆうじ)を考えて軍の装備の一部を、この部屋に隠していたのです。」


 ルナリスが壁の中央にある柱を確認していく。鴨居(かもい)のあたりに小さいクギが2本出ていた。

ルナリス「エストリア。ここに、護身用の(ステック)で電撃を与えて見て。2本のクギの間。水平に構えてね。」


 エストリアが、言われるままに、瑠璃(デバイス)のついた(ステック)を釘にあてがった。

 護身用の魔法道具はいつも持ち歩いているらしい。

 パシッ、と小さい音。ちょっとした放電だね。人間が触れたら確かに痛そう。ほぼスタンガンだな。


 そして、放電と同時に、壁の中で何かがカチっと()った。

 ルナリスが壁を押すと、奥に向かって壁の一部が開く。隠し倉庫だ!


 もしかして電磁石でロックを解除している?放電してるぐらいの電圧なので静電気力かなぁ。

 下敷きに髪の毛がひっつくやつ。


エストリア「これって帝国の軍事機密の電気錠よね。普通の家で・・。」

俺「すごいね。どういう仕組みかな?」

エストリア「だめ!軍事機密!」

 エストリアが隠すようにしたが、チラッと電磁石のコイルが見えた。電流が少なそうだから相当な巻き数だろうな。そういう技術もあるのか。

 扉の中には、瑠璃(デバイス)のついた(スティック)が何十本もある。それと、例の水晶球、その他、俺には分からない魔法の道具?。あと、普通の軍の備蓄と言った感じの、食料(レーション)とか 水とか薬っぽい物。薬には魔法薬とかもあったりするのかな?後で聞いてみよう。


 銃器や剣の類は見当たらない。そもそも、この世界に銃があるのかどうか。技術レベルからしたら、当然ありそうなもんだが、今のところ見ていない。都市の中にはおかない法律でもあるのかな?


エストリア「うわ~!すごい量ね。軍だと中隊規模の装備品だわ。

      売ったら300万ゴールドにはなりそう・・」


 おまえは何を考えてる!


エストリア「じゃあ、これで!」


 エストリアが、倉庫の中から水晶球を取り出し俺に押し当てる。


エストリア「レベルが70で、職業が剣士と聖者

      職業の項目には確かに(ひずみ)によるズレがあるわね。でもレベルには無さそうだけど。」

俺 「レベルはこっちの世界で後から付けた偽装(ぎそう)だ。実際は7だったかな。」

エストリア「躊躇(ちゅうちょ)無くばらすのね。でも、それで説明できるわ。いいわ。信じる。」


 既に、いろいろ共犯だし隠しても面倒なだけだろう。


エストリア「でも、なんで職業が2つあるの? 聖者って何?」

俺 「知らん!」


エストリア「まあ、いいわ。

      それで、、。異世界から来た、、って、。どういう世界から来たのよ?」


俺 「そうだなぁ。俺の世界と、こことの、最大の違いは、俺の世界には魔法が無いって事だろうか。あと、魔法回路とか言うやつも無い。」


 他にも気になる違いや、科学技術とかいろいろあるけど・・、説明が難しい。


エストリア「原始的で野蛮な世界から来たみたいね。」


 う~ん。ある意味、正しいのか?


俺 「俺も聞きたいのだけど、その瑠璃(デバイス)とやらは何処で手に入れてるのだ?」


エストリア「新しい物は神殿ね。中古は市場で売ってるけど。」

「つまり、あなたの世界には神殿が無い。ここにはある。それが違いね。魔法回路も神殿で洗礼を受けると体の中に作られる物よ。洗礼回路とも言うわ。」

「魔法学で言う広義の魔法媒体は3種類あって、一つは瑠璃(デバイス)、もう一つが体の中の魔法回路、もう一つが神殿にある大瑠璃(ビッグデバイス)よ。いずれも神殿からもたらされる物。」


俺 「洗礼と言うのが良く分からないな」


エストリア「普通の人間は、7才になると神殿で洗礼を受けるわ。その時に体の中に魔法回路が作られ、同時に登録する職業を選ぶ。」


俺 「7才で職業を選ぶのか。たいへんだな。」


エストリア「そういう風に言う人もいるけど、レベルを上げて行くには早い方が良いでしょ。」


俺 「そうか?せめて、12か13才ぐらい・・」


エストリア「はぁ? 私より上って事?!」


俺 「へ?

   すまん。俺の世界だと、エストリアは20才とちょっとぐらいに見えるのだが・・。」


エストリア「なんだか失礼ね。そんな歳じゃないわよ。今は11才よ。」


 この世界の人間は成長が早いのかな? 人間そのものは、ほぼ完全に同じに見えるのだけど。生物学的に、そんな事がありえるのだろうか?


ルナリス 「いったん、この壁は閉じておきたいのだけど良いかしら。」


俺 「すまん、その前に・・。この中に奴隷化だけをやって、魔法を抑制する機能の無い、奴隷化の瑠璃(デバイス)とか無いかな?」


エスアリア「何を言ってるの?」


俺 「奴隷にされたのでルナリスは魔法を使えなくなったって言ってたよな。」


エストリア「正確に言うと魔法回路に登録された職業としての魔法使いが無効化されている状態。魔法使いだけが使える瑠璃(デバイス)は使えないし、魔法使い職の能力(スキル)である瑠璃(デバイス)構成(プログラミング)もできない。」


俺 「奴隷化で埋め込んだ瑠璃(デバイス)に魔法使い職の無効化の機能がある・・で良いのかな。」

エストリア「そういう事ね」


俺 「じゃぁ、その、奴隷化だけを行って、魔法使い職の無効化機能の無い瑠璃(デバイス)は無いかな?

   そしたら、それとルナリスの奴隷化の瑠璃(デバイス)と入れ替える・・。」


エストリア「同じ事が、もっと簡単にできるわ。ルナを奴隷化している瑠璃(デバイス)構成(プログラミング)を変更するのよ。

   そこに、端末用(ターミナル)瑠璃(デバイス)があるでしょ。

   主人である、あなたが認証してくれれば、私が構成(プログラム)を変更できる。」


 なんだか俺の世界で馴染みのある概念が多いぞ!

 ルナリスが複雑な表情で俺たちを見ている。


エストリア「でも、行ったはずよ。奴隷の解放は重罪なの。下手をすると死刑よ。死にたいの?」


俺 「解放とは言って無いぞ。奴隷化はそのままで、魔法使いの無効化だけを解除する。」


エストリア「同じよ。

   魔法使いは自分に埋め込まれた瑠璃(デバイス)に対して最高位の権限を持っているわ。奴隷化の瑠璃(デバイス)に対しても主人以上の権限を持つ事になる。つまり、簡単に奴隷化を無効化できる。実質的には解放と同じよ。」


俺 「昨夜もそんな感じの事を言っていたが。でも、権限を持っていても、それを使わないで、主人の瑠璃(デバイス)の制御に従う事は出来るのじゃないか?」


エストリア「可能ではあるけど・・。」


俺 「つまり、それは奴隷のままであって解放はしていない。法的な問題は無いだろう。」


 ルナリスの目に涙が浮かんでいる。

 ルナリスはほんとに頑張って勉強して、魔法士官学校で一番良い成績だったのだろ。

 それが失われて・・、。


エストリア「そんな詭弁が裁判で通じると思ってるの? それは、縛っていない手を縛っていると同じように合わせていろ、と言ってるのと同じよ。そして、合わせるのを止めた時点で処罰されるのは、あなただわ。」


俺 「ルナリスは約束したら従うよ。なぁ、ルナリス。」


ルナリス「はい。私・・。従います。絶対に・・」


 涙でぐしゃぐしゃだ。エストリアもつられて、少し涙ぐんでる。

 いや、つられてじゃないか。


俺 「その約束で十分だよ。瑠璃(デバイス)は法的な形式で良いと思う。」


エストリア「もう一度、言っておくけど、それでもルナが奴隷化を止めたら、あんたは最悪死刑よ。

   裁判になれば、実質的に、あなたが奴隷化を解除したと言う判決になるわ。」


俺 「分かった。それでOKだ!」


エストリア「・・。ほんとにバカね。」


 うん。そのバカは、ほめ言葉だね。


 端末の瑠璃(デバイス)は思っていた以上に端末だった。

 机に瑠璃(デバイス)を置くと画面(スクリーン)が現れ、エストリアが、その画面(スクリーン)に両手を添えて表示されたボタンを操作している。そういえば、最初に召喚された時に眼鏡の黒い服の女性が操作していたのも、こんな感じの物だった。


俺 「勉強すれば、俺でも出来るかなぁ。」

エストリア 「無理ね。魔法使いの職業じゃないと能力(スキル)が無いから無理。」


エストリア 「そういえば、あなたの職業には聖者があったわね。こういうバカな事をするのは、そのせい?」

俺 「ん?」

エストリア 「もしかして年齢の話しとかも、そうなの? 天界の人はあまり歳を取らないと言う童話を読んだ事があるわ。」

俺 「違うと思うぞ。おれは普通の人間で。おまえが言うようにバカなだけだよ。」



エストリア 「承認要求を送ったわ」


 頭の中のルナリスのイメージに承認要求が表示?、いや、そう感じられる。良くできているな。

 承認!っと。


 ついでに通信で。

俺 < 承認したよ。 もう魔法が使える・・のかな? >

ルナリス < あ、ありがとうございます。まだ、構成(プログラム)を反映する作業があるはずです。 >


 確かに、エストリアが、まだ何かをやっている。

そして、、

エストリア 「完了! 反映! そして切断っと!」


 エストリアの前の端末(ターミナル)画面(スクリーン)の表示が消えた。


 ルナリスが、試しに倉庫にあった(スティック)を一つ取って、その先端の瑠璃(デバイス)に光をともした。

 ただ、じっと、それを見て、それだけで泣いている。


俺「うまく行ったみたいだな。」


ルナリス「ありがとうございます。ほんとに・・」


 眼鏡の中のうるんだ瞳で俺を見て、少し顔を赤らめながら。


ルナリス <ヒロタンさん、ず~っと、あなたの奴隷でいたいです。>


 昨日もそうだったけど、この娘に、見つめられるとドキっとする。

 誰もが認めるような魅力があるわけじゃないのだけど、指向性の強い何かを送ってくるようだ。


 と思って、エストリアを見ると、少し微妙な表情。


エストリア「そろそろ、下に降りない?みんなも待ってそうだわ。」


 下に降りると、サミアスが俺に飛びつくように


サミアス「何をしていたのですか? なかなか降りてきませんでしたが。」


 ルナリスがサミアスと俺の間に入るようにして


ルナリス「いい事をしてたのよ。サミアちゃんには無理な事だけどね。」


 また、変な言い方して・・

 サミアスが、なんか悔しそうだぞ。誤解してないだろうな。


サミアス「ぼ、ぼくだって・・」


 止めろ!

 R18になったらどうすんだ!と作者も言ってるぞ!

すみません。エスタリアとエストリアがごっちゃになっていたのを修正しました。

ご指摘頂いた誤字を修正しています。ご指摘頂きありがとうございました(2021/05/31)

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