危険な教団
橋を渡ろうとすると、魔王教団の兵士が剣を構えて近づいてくる。
俺「近づくな! それ以上、近づくと魔王の攻撃を、その身で味わう事になるぞ!」
ウソじゃないけど何回できる事やら。魔王の攻撃を一発、お見舞いしたら、ルルムを抱えて逃げるしか無いだろうな。まったく、何しに来たやら。
あきらめかけた時、別の僧侶のような服を着た男が、兵士の後ろから、こちらに向かって来た。
ブレムン「司祭のブレムンです。魔王様と、、ルルムでしょうか。」
良かった!分かってくれる人が来てくれたようだ。
俺「そうだ! ルルムと魔王ヒロタンだ!」
ブレムン「ルルムは、なんだか綺麗になってしまって。」
俺「話しがしたい。橋を通してくれ。
あと、他の者も橋を渡らせたいのだが・・。」
そういって、橋のたもとで待機している仲間を指さす。
ブレムン「魔王様は歓迎させて頂きます。
ですが、、あの皆さん、全部ですか? 」
俺「安心してくれ。戦いに来たのではない。」
ブレムン「いやでも、そんなに沢山の皆さんだと、。戦闘中で警戒している事をご理解ください。
魔王様のお付きという事でも、、10名ぐらいになりませんか?。」
やむを得ないので、馬車2台、10名に絞った。残りは橋で待ってもらう。
俺とミシャとエミャルとトラク。ルルム、サリス、ミルレは一緒に行かないと・。あとは兵士や御者。
ブレムン「魔王様を歓迎させて頂きます。ぜひ、私どもの中央神殿にお越しください。
司祭長様がお待ちですので。」
ブレムンに案内されるまま、馬車で山に向かって5刻、、つまり5時間あまり進む。すでに平野が終わり山間と、といったあたりで町に着いた。すっかり日は落ちて夜になっている。
そこに中央神殿という大きな神社みたいな建物があった。
ブレムン「司祭長様が中央神殿の来客の間でお待ちです。」
俺とエミャル、ミシャ、そしてトラクの4人でブレムンに案内されて神殿に入る。そして、神殿の中の、飾りの多い大きな部屋に通された。部屋には大きな円卓があり、そこに座らされる。すでに、司祭らしい人が6人ほど座っていて、俺は良さげな椅子の席に。俺の右隣は若い女性だが、彼女も司祭だろうか。
俺の左にエミャル、ミシャ、そしてトラク。
各々の前に、杯に入れた飲み物が配られ、正面の一番偉そうな司祭が、
「司祭長のバルマ・トリサムです。ようこそ、異国の魔王様。」
異国を強調したい? 言いながら、バルマは杯を手にする。
バルマ「良き出会いに祝杯を!」
俺も杯を手にしたが、、一つ離れたミシャが小声で、俺の隣のエミャルに何か言っている。そしてエミャルが俺に、小声で
エミャル「薬が入っているようです。飲まないでください。」
いきなりかよ! どういう薬? ミシャはトラクにも耳打ちしている。
バルマが杯を飲み干して、こちらにも飲むように視線を送っていたが、。俺は杯を持ち上げただけでテーブルに置いた。俺たちは4人とも飲んでいない。
隣の女性は飲み干しているので、俺たちだけに盛った……のか?
試しに隣の女性の前に、俺の杯を差し出して。
俺「残念ですが、お酒は飲みません。よろしければ、こちらも、。」
女性は特に躊躇なく杯を手にして、口に持っていこうとした!怖いので、あわてて俺が止めたが、。司祭長もあわてて身を乗り出して制止しようとしているし、、。給仕をしていた女性が飛んできて、その杯を奪う。
司祭長と給仕の女性は知っているな。
隣の女性があっけに取られていたので。
俺「すみません。良く見ると杯を汚してしまったようです。」
要するに司祭長というのは俺たちを邪魔だと思っている?!
バルマ「べ、別の飲み物でも・・。」
俺「いいえ、結構です。
ところで、さきほど異国の魔王と言われましたが、国によって魔王に差があるとお考えですか?」
バルマ「……。この国の魔王は、すでに断絶しております。ですので区別を、させていただきました。」
俺「それは、かまいませんが、。魔王としての能力は同じとお考えください。」
俺については違うと思うけど、ここははったりである。
バルマ「もちろんです! 異国の……。魔王様を侮るような事はありません。」
どうだかなぁ。
俺「そうしてください。」
もう逃げたい……
俺「ここまでの旅で疲れております。よろしければ、今日は、このあたりで。」
バルマ「でしたら、ご寝所を……。」
こいつが用意した部屋だと夜中に刺されそうだよな。
俺「仮設の宿泊施設を持参しております。お気遣い無く。」
ほぼテントなんだが、持ってきているのは本当。ベッドで寝たいよね。安全なら……。
危なそうなので、周りに警戒用の瑠璃を並べて寝たら、案の定、夜中にひっかかった。いいかげんにしてほしい。飛び起きて、瑠璃と剣を構えると、入り口から堂々と入ってきたのは、、。さきほど、円卓で隣にいた若い女性だ。薄いが派手な色の衣装をまとい、妙なにおいの香水をつけている。衣装は大きな胸を強調していて、明らかにそういう誘惑のためだろう。ハニートラップの暗殺者かな?
女性「私が、魔王様への生贄に選ばれました。」
俺「どういうつもりか分からないが、出て行ってくれ。さもないと、命の保証はできないぞ。」
殺す気は無いけど脅しとしては、そのぐらい言わないと。
女性「先ほど、お会いして、すでに覚悟を決めております。魔王様のお望みのままに。
それが、お望みであれば私を殺してください。」
この人も洗脳されているのかな?
俺「俺の望みは君が、いますぐ、ここから出ていく事だよ。」
女性「生贄は朝まで魔王様の寝所を離れる事ができません。」
俺「なるほど。
それなら、、、。俺が他で寝る。君は、ここを離れるな。絶対に!」
女性「へ? いや。そういう意味では、、。」
すばやくテントを出て夜の闇に紛れて逃げる。追ってこないところを見ると、プロの暗殺者では無いらしい。
確か、近くにミシャの小さ目のテントが……。良く見えないけど、星明りで探すと、、。
あった!
俺「すまん。変なのが来て、俺の寝床が無くなってしまったので……」
「あれ? ヒロタン様ですか? 」
って、ルルムじゃないか!? 間違った!




