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連れていかれて・・

 共和国の首都から迎えの馬車が到着した。

 俺は、ミシャとトラクと、サリスと、ルナリスで同じ馬車。どうやら、最後尾らしい。


 しばらく走った所で・・。

トラク「やられましたね。」

俺「へ?」

トラク「他の馬車と離れて別の方向へ向かっています。」


 本当だ!いつのまにか、前に他の馬車がいない。

 開けようとしても客室(キャビン)のドアは開かない。

 トラクが剣で壁を削ると


トラク「見てください。鉄の格子が入ってます。」

俺「護送用かよ!」

トラク「破壊は無理そうですね。」


 やけに頑丈そうだと思ったが・・


俺「通信できないか?」

ルナリス「能力的には私とサリスさんで出来るのですが。」


 何かの瑠璃(デバイス)をふりながら。


ルナリス「防御されてるみたいです。周囲に魔法兵がいますね。」


俺「サリスなら、窓からの景色で何処に向かってるか分からないか?」

サリス「山の様子だと、首都へ行く道から南に外れている感じです。

    あんまり行きたく無い方向ですが・・」

俺「なぜ?」

サリス「あっち側で戦争してますから。」


 身代金目当てなら、そういう方向へは行かないだろう。殺す気ならとっくにやってるだろうし。

 何が目的?


 馬にきつそうな速度だと思ったが途中で2回、馬を変えた。


 そして、半日ほど走ったところで、ようやく外から客室(キャビン)の扉が開かれた。

野戦司令部といった砦の中。サリスの言っていた戦場・・かな?

 軍服を来た偉そうな男が・・


「このような所にお連れして、申しわけありません。

 我々は苦戦しております。ぜひ、魔王様のお力添えを。」


俺「あなたは誰ですか?」


パワリ「ここの指揮を取っているパワリという者です。

    あなたが、魔王様ですか?

    魔王様なら、、。」


俺「我々は、あなたがたの戦争に協力する気はありません。」


 兵士が駆け込んで来て「大隊長! もう持ちません。最後の防衛線が突破されます! 撤退命令を!」


パワリ「だめだ! ここを撤退すると、エルカンの街がやられる。

    エルカンがやられれば次は首都だぞ。」


 近くで火薬が爆発する音が響いた。完全に戦場だ!

 俺たちの輸送を急いでいたのは、戦況がやばかったから?


兵士「無理です! 敵の幻影魔法と自爆攻撃で、一方的にやられてます!」

パワリ「なんとしても、我々は、ここを死守する。

    うしろの橋を爆破しろ!」


 おい!。ちょっと待て! 橋は味方が撤退してから爆破するものだろ!


 そして、俺たちに向かって。


パワリ「退路を断ちます。皆さんに協力して頂く以外、活路はありません。」


俺「我々に何ができると言うのです?」


パワリ「魔王様であれば、・。」


 パワリの言葉を遮るように、大きな爆発音がして、目の前の壁が崩れた!

 おかげで、視界が開けたが・・。既にすぐ近くで白兵戦が展開されている。ほんとに最前線じゃないか!


パワリ「崩れたところに戦力を集中しろ! 砦を守るのだ!」


 パワリは防戦の指揮で、俺たちに(かかわ)る余裕を無くしてしまったようだ。砦の中は混乱している。


 パワリたちを無視して、とにかく崩れた壁から離れるように逃げてみたが、すぐに砦の反対側の壁に阻まれた。砦の出口がわからない。


俺「トラクさんは、ミシャを連れて二人で逃げてください! 二人なら逃げきれるでしょう。」

ミシャ「イヤです。ヒロタンさんと一緒で!」

トラク「我々が逃げたら、ヒロタンさんたちはどうするつもりですか?」

俺「エミャルがいないから、俺の魔王攻撃はあまり・・。

  剣は、そこまで強く無いし、。」

ルナリス「私は護身用の魔法道具しか、持ってきてませんよ。こんな事なら、いろいろと持ってきたのですが。」

サリス「・・。あのー。私は何も・・。

    でも魔王様なら・・」


 喊声(かんせい)と共に砦の中に敵兵がなだれ込んできた。共和国の兵士は散り散りになって戦っている。はっきり言って、絶望的な状況。隊長も、どうなっているやら。


 俺たちが戦う義理は無いし、。両手を上げて降伏ポーズ! そして、出来るだけ大声で


俺「俺たちは、共和国とは関係無い! 戦う気は無い! 西の島の住民だ!」


 通じてくれるかどうか・。銃撃戦だったら、何も言えないうちに殺されていただろうけど、剣の戦いで助かった。

 だが、剣を向けて俺たちに近づいてくる敵の一団がいる。


俺「戦う気はない! 降伏する!」


 だめだ!言っても通じない!トラクが剣を抜いた! 彼の剣だと死体の山だぞ。

 止むを得ないので、俺が魔王攻撃の電撃を放った。細い電撃の雨で、向かってきた兵士の一団は倒れる。しかし、やはり、エミャルがいないときつい! 1回の電撃の疲労感で俺はひざをつく。

 見ると、すぐにも次の一団が・・


ミシャが「次は私がやります。」

俺「いや。俺がもう一度・・」

トラク「きれいごとを言ってる場合ではありません。私が・・。」


 とか言ってるうちに、すっかり囲まれてしまった。これではトラクでも・・。

俺「すまない。ミシャを連れてくるのじゃ無かった。」

ミシャ「いいえ。むしろ、私のためにヒロタンさんを・・。」


 サリスが必死な形相で。


サリス「ヒロタンさんの事を言わせてください!

    それで皆が、助かるかもしれません。」

俺「何? 助かるなら、なんでも良いぞ。」

サリス「はい。なんでも、、やらせていただきます!」


 サリスが進み出て、回りの敵兵たちに大声で。


サリス「先ほどの攻撃を見たでしょう!

    この(かた)は西の島から来た魔王様です。

    西の島には魔王様が実在していたのです!」


 良く分からんが、サリスの言葉に周囲の敵の動きが止まった!

 魔王は怖い・・って事? 俺はもう攻撃できそうに無いのだが。


 残っていた共和国軍の兵士が、敵が止まったのを見て、その(すき)に砦から逃げて行く。彼らの動きで、砦の出口の位置が分った、が・・。ここからは結構遠い。(あいだ)に敵兵が沢山・・


 敵の一段の中から一人の偉そうな人が、こちらに進み出て来て


「ほんとうに魔王様ですか? 確認させて頂いてもよろしいでしょうか?」


サリス「魔法の出来る方が水晶のみを持って、こちらへ来てください。

    さきほどの甘い攻撃は魔王様の、ご慈悲によるものです。

    魔王様がその気になれば、ここにいる全員を一瞬で殺す事ができましょう。」


 え? そんな事、出来ないよ! むちゃくちゃなはったりだ。サリスって度胸あるなぁ。

 水晶を持った、魔法兵・・なのかな? 妙な服の人が近づいてきて、水晶球を俺に押し当てた。

 そして叫ぶ

「確かに、魔王様だ! 間違いない!」


 うむ。どうだ! 恐れ入ったか! って、俺にこれ以上の魔法攻撃は無理なんだが・・。

 魔王だと怖いから引いてくれるの・・かな?


 と思ったら、突然、平服して俺を拝みだした。

「魔王様だ!」

「魔王様!」

 訳のわからない事を言っているやつも多い。


サリスが小声で「彼らは最近、増えている魔王教の原理主義者なのです。この大陸に魔王はいないのですけどね。」

俺も小声で「どういう事? 魔王がいないのに原理主義者?」

ルナリス「実在しない事で、なおさら神格化されているのかもしれませんね。」


サリス「魔王であるヒロタンさんの言う事なら聞くと思います。

    なんとか、うまく、誘導してください。」


 どうすりゃ良いのだ?

 とにかく大声で、。

俺「戦いを止めて、俺たちを開放しろ!」


 要望を直球である!


代表らしい人が

「魔王様! なにとぞ、わたしどもの神殿にお越しください!」


サリスに小声で「行っても大丈夫なのか?」

サリス「私は行きませんよ。絶対に。」


 良く分からんが行かない方が良いのかな?


俺「おまえたちの神殿に行くのは次の機会にしよう!

  今日は、このまま帰らせてくれ!」


 身もふたもないが、相変わらず要望を、そのままである。

 俺たちが、敵兵の間を通って砦の出口に向かおうとすると、道を開けてくれた。攻撃はされなかったが、何人かが俺たちに着いてくる。


「私どもを、御導(おみちび)きください。」

「お救いください!」


 砦の出口まで来たところで、


俺「着いてくるな! いずれまた来るので、その時まで待っていろ!」


 適当な事を言って、逃げる!

 それでもう、追ってはこなかった。・・と思ったら、一人だけ、まだ、くっついて来る。


「魔王様! お救いください!」


 いや、俺は神様じゃないし。


俺「帰ってくれ。」

「帰っても私には何も・・。」


 ボロ雑巾のように小さくて汚いけど、これで兵士なのか?

 いくら追っ払ってもついてくる。


 サリスが、この方向が街じゃないかと言うので、歩いていくと、。ほんとに橋が落とされていた!ひどい!

 しょうがないので、川に沿って上流に向かって歩く、、。しばらく歩いて、ようやく別の橋があった。その橋を渡って、川を戻り、街まで歩く。

 隊長が言っていたエルカンの街らしい、。でも、街に入っても、あまり人はいない。戦場が近づいた事で、避難したのだろう。

 それでも、なんとか、馬車を調達できた。かなりボロい捨てられていたような、がたがたの農作業用の馬車。馬もくたびれてる。


トラク「まあ、しかた無いでしょう。歩いて行くのはたいへんですし。

    これで首都まで行って、皆と合流しましょう。」


 トラクが御者をしてくれたので、あまり広く無い荷台に皆で乗る。


俺「それで、おまえは、なんで馬車に乗っている?」

 ボロ雑巾が、まだ、着いてきていた!

「魔王様のおそばに・・。」


サリス「一部の原理主義者は洗脳されてますからね。まともな会話は困難ですよ。

    こんな子が爆弾を抱えて、魔王様万歳を叫びながら敵陣につっこむのです。」

「私もやりました。それを。」

俺「怖い事言うなよ。」


 生きているという事は不発弾だったのかな。


俺「どうせ、この馬車におまえの座る場所は・・・。」


 実際、小さな馬車は定員一杯。


俺「なぜ、俺の膝の上に乗る?」

「魔王様のおそばに・・・。」


 しかし、異様に軽いな。


「お救いください。私は、もう・・。」

ボロボロの薄い服が風にあおられて、細い体にまとわりつく。

膝の上に載られている俺には見えなかったが、ミシャには良く見えたのかもしれない。


ミシャ「その子、。私と同じかもしれません。でも、魔力が無いと・・」


俺「名前は?」

「ルルム。前の戦いで、、。」


 自分の服をめくろうとしたので、押しとどめた。つまり、ミシャの言う、同じとは・・。


俺「傷が深いのか?回復薬だけで、生きてるという事?」

ルルム「はい。でも、長くはありません。」


俺「俺には、何もできないよ。」

ルルム「魔王様のおそばで最後を。それで救われます。」


 軽く無かった。重すぎだよ!


サリス「ルルムさん、その指輪は?」

ルルム「母の形見です。」


 貧相で安そうな指輪だが、形見なら大事なのだろう。間違っても王族のなんたらという感じではない。


 夕方になってようやく、馬車は首都に近づいてきた。首都の郊外は、完全にスラムになっている。バラックが立ち並んで、継ぎの当たった服を着た人たちが沢山。やせた体に目だけが光っている。

ルルム「私は、ここで生まれ育ちました。なつかしいです。」


サリス「ルルムさん、おいくつですか?」

ルルム「8才と4節になります。」 


 それって、もとの世界では16才? 小さくないか?


ミシャ「同じ歳ですね。背も同じぐらい・・でしょうか。」


 え? ミシャもそんな年齢だったの?

 もっと、幼いと勝手に・・。でも魔王をやっていた期間を考えると、、、そうなるかもしれない。


ルルム「私は満足に食べる事が出来なかったので成長が遅れて・・。あなたもでしょうか?」

ミシャ「いいえ。私は十分に食べてはいましたが・・・。」


 ミシャの場合は、その体のせいだろうな。エミャルは普通の背丈だし。

 エミャルは細いけど背丈はエストリアと同じぐらいだ。


サリス「(ひど)い・・です。こんな子が・・。」

ミシャ「ほんとに(ひど)いですね。」


ルルム「でも、今の私は幸せです。魔王様と、こうして。」


 洗脳のせいだろう。

 こういうのは(なつ)かれても良い気分では無い。


俺「サリス。洗脳ってどういう物だ? 何かの瑠璃(デバイス)を埋め込んでるとか?」

サリス「大瑠璃(ビックデバイス)で、洗礼回路に特殊な属性を上書きするのです。」

ルナリス「我々の国には無い技術ですね。」

ミシャ「少し似ているのが、ありましたが・・。最近は行われていないはずです。」


俺「()く事は出来るのか?」

サリス「元に戻すには、洗脳を(ほどこ)した物と同じ構成(プログラム)大瑠璃(ビックデバイス)が必要です。それを逆手順(リバースシーケンス)で実行すれば。」

俺「なかなか、難しそうだな。」


ミシャ「ヒロタンさんは、崇拝されたくない・・ですよね。」

俺「あー。ごめんだね。ミシャなら、良いのか?。」

ミシャ「慣れていると言えば、そうなのでしょうけど。好きというわけではありません。

    それに、その子だと私には無理です。」


サリス「慣れている? どういう意味です?」

俺「言って無かったか? 魔王を本職にしてるのはミシャだぞ。」

ミシャ「本職、ですか? 力の面ではむしろ・・。 まあでも、公式には私なのでしょうね。」

サリス「もしかして、共和国の迎えの人が魔王様と言っていたのは、。」

俺「あー、。俺では無くミシャの事だ。

  俺については、秘密と言っただろ?」

サリス「すみません。勝手に。」

俺「いや、それで、助かったのだから構わないよ。礼を言うのは俺の方だ。」


ルルム「皆さんが何を言ってるのか、良く分かりません。」

ミシャ「あなたにとっての魔王様は、そのヒロタンさんですよ。

    それで、救われるかもしれません。私も・・」


 何をむちゃぶりしてるのだ?

 俺には何もできないよ。


 首都の城門で止められた。スラムは城門の外側だった。

 説明しても入れてくれない。まあ、ボロボロの馬車だし、服には火薬の臭いが染みついていそうだし。完全に難民だよな。日は暮れてきたし、。

 さて、どうしたものか・・。

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