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外伝 ~戦乱の時代~

本編と直接関係ありません。きまぐれに書いただけなので、読まずに飛ばしてください。

 長かった戦争も終わりに近づいていた。魔王軍の拠点は、この魔王神殿のみであり、ここが落ちれば帝国の勝利が確定する。いや、既に確定しているも同じだろう。魔王と呼ばれた、強大な魔力を持つ存在は、既に倒されている。魔王軍はもう一人の魔王を作りだしてはいるが、その力は、かつての魔王の10分の1も無い。

 俺は、俺TUEEEな勇者として召喚され、星の数ほどの魔王軍の兵士を殺してきたが、それも、もうすぐ終わる。

 そして、俺には、この戦いの後、貴族の地位が約束されているのだ。連日、血みどろで戦う俺に、近寄る女もいなかったが、帝国の貴族となればハーレムだって夢じゃない!

 どこまでも続くような死体の山を越えて、魔王神殿の内部に突入する。俺に戦友と呼べる仲間はあまりいない。俺ほどの高レベルの兵は他にいないし、一度(ひとたび)、俺が剣を抜けば、友軍といえども足手まといでしかない。ただ、飛翔族(ひしょうぞく)と呼ばれる傭兵(ようへい)たちは、こうした時に、俺とともに突撃してくれる数少ない仲間だ。彼らは、一般の兵よりもレベルが高く、また、自分の体を飛び道具とする独特の戦闘スタイルを持っていて、最前線で戦っている。

 この世界では、何故か弓矢や銃といった飛び道具が使えない。だが、道具では無く人間自体が、その役割を果たすのであれば、同様の事ができる。飛翔族(ひしょうぞく)は、羽のついたスーツで滑空する事により、離れた敵を葬り去る、言わば人間飛び道具である。

 レベルの高さは身体能力の高さであり、他の兵を置き去りにして俺と10人ほどの飛翔族(ひしょうぞく)が、魔王神殿に突入する。天をつくような尖塔の上層階に、新たに作り出された魔王がいるらしい。それを倒せば、ゲーム終了!

 思ったほど抵抗は無かった。敵を剣で薙ぎ払い、鉄製のらせん階段を駆け上がる。果てしなく続くような螺旋階段を、どれだけ(のぼ)ったのか・・。30階は越えるだろう高さまで上がると・・。展望台・・?、あるいは儀式的な祭場?のような広間に出た。数人の敵兵のうしろにいるのが最後のラスボス・・。


 でも、あれが? ラスボス?

 やっとたっているような女だぞ?


 線の細い、まだ、少女の面影を残している若い女。

 その女が何かの魔法具を取り、それを大きく振り上げ、、。危険を感じた俺は瞬時に飛び下がった。ほぼ同時に女の魔法具の先端の瑠璃(デバイス)が光り、飛翔族の半数が倒れ絶命した。それは、つまり、この女こそが、まさに魔王と言う事。この世界で、こうして魔法で人を殺せるのは魔王以外にいない。

 だが、その攻撃の後、女は苦痛に満ちた表情を浮かべ膝をつき倒れこむ。既に限界だったのだろう。

 残った飛翔族が女に向かって飛び込む。それを、女の周りにいた敵兵が迎え撃って剣による戦闘が始まる。


 俺は、、、。俺は、なぜか、その戦闘を傍観(ぼうかん)していた。倒れた女を見ていると、この戦闘がバカらしく思える。

 俺であれば、あの敵兵と女を瞬時(じゅんじ)に殺せるだろう。そして、それが俺の仕事のはずなのだが・・。

 でも、これがラスボス?これが最後の戦い?

 そもそも、俺が来る必要があったのか?


 俺が加わらなくても戦いの趨勢(すうせい)は明らかだった。飛翔族が最後の敵兵を倒し、女にせまる。

 あきらめたような表情の女に飛翔族の剣が()ろされようとしたとき。


 自分が何をしているか理解できないまま、俺は剣を抜き、飛翔族の剣を女の頭上で受け止めていた。そして、俺自身にも意味の分からない言葉を。

「もう、十分だろ。」

 直前で止められた剣を見て、女は理解できないという顔をしている。

 不思議な事に剣を(はば)まれた飛翔族は、むしろ、納得した表情を浮かべ、。そして、(あわ)れむように俺に向かって、

「さすがに気付いたのか?」


 そこは、裏切るのか?とか、そういう言葉じゃないのか? どういう意味だ?


 俺が気付く事と言えば、、。


 まあ、でも、その可能性を考えないではなかった。

「俺は捨てられた、、のか?」


 そうだな。飛翔族は、数少ない戦友・・だった・・。


「あー。この建物は、まもなく爆破される。それで、この戦争はおわりだ。

 戦争が終われば、おまえは不要。それだけの事。

 いずれにしろ、俺たちには関係無いがな。」


 そう言うと、独特のスーツの羽を広げ、窓に。

「万一、生き残っても、ここでの会話は忘れてくれ!」


 それだけ言い残すと、窓から飛び出し、彼らは夜の空に消えていった。

 塔の上に俺と女だけを残して・・


 万一、って、。

 いやいや、塔が爆破されるなら、生き残れるわけがない。


 だいたい、生き残っても、、。

 暴力装置としての俺は戦争が終われば邪魔な存在と言うわけだ。この世界での俺の役目は終了。

 まったく、くだらん話しだ。

 魔王倒すために召喚され、それが終われば破棄される。


 轟音(ごうおん)がしたので、ついに建物が爆破された・・かと思ったが、。ご丁寧(ていねい)にらせん階段を先に爆破してくれた。

 まさに、はしごを外されたわけだ。


 窓から下の除くと(はる)か下で工兵たちが、ありえない量の爆薬を積んでるのが見える。

 窓に近づいた事で、女にも近づく事になったわけだが・・

「それ以上、近寄らないでください! 近づいたら、殺します!」


 そして、魔法具を構える。

 この()に及んで、こいつは何を言ってるのだ?

「さっきの会話を聞いて無かったのか? この塔は爆破される。俺たちは、どのみち死ぬよ。」


「えっ。そ、そんな!?」


「ほら、下を見てみろ。工兵が爆薬を積んでるだろ。あれだけの量があれば、こんな搭は木っ端みじんというわけだ。」

 十分に覚悟していたのかと思ったが、意外にも恐怖で震え始めた。細いからだが、たわむように。


 だが、それが、俺に目的を与えてくれた。


 可能性はある。飛翔族は窓から飛び出す間際、仲間の死体を一瞥(べつ)していった。それは、つまり。

 俺は自分の鎧を自分の手で引き裂いた。脱いでる時間は無いし、俺のレベルの身体能力なら造作もない。

 血塗られた鎧の下の俺の体は意外に細い。俺の身体能力は魔法回路のレベルによるもので筋力による物では無い。体重はむしろ軽い。

 急いで飛翔族の死体からスーツをはぎ取り、それを装着する。見様見まねだが数々の戦場を共にしてきた事で、ある程度、分かっている。

 そして有無を言わせずに女を抱え上げる。

「何を、。何をする気ですか!? 殺しますよ!」

そう言いながら魔法具を構える。俺はその魔法具の先を自分の手で俺の胸に押し当て、

「地上に降りたら殺されてるやる。それまで待て。どうせ、これが、この世界での俺の最後の仕事だ。」

 そう言うと同時に女を抱えたまま、窓から飛び出した。

 俺も、この女も、飛翔族の兵士に比べれば軽い。蝙蝠(こうもり)のように黒い羽が、この世界の濃厚な空気をはらみ、俺たちは空に浮いた。あと、そう、。この世界は重力が少ないのかもしれない。

 下を見ると積まれた火薬から火の玉が膨れ上がる所だった。一瞬遅れて轟音(ごうおん)が響き渡る。

 巨大な火の玉に足元をすくわれ、搭が倒れていく。そして、黒煙が広がり地上を(おお)い始めた。この世界の原始的な火薬は煙が多い。


 爆発の轟音(ごうおん)がやむと、滑空する俺に聞こえるのは風の音だけ。直下は煙で満たされているが、遠くの街並みは火の手につつまれ、輝いて見える。

 戦禍(せんか)で滅び行く(まち)が、これほど美しいとは思わなかった。それが一瞬の、そして最後の(かがや)きだから、、だろうか。

「とても綺麗ね。」

 俺の言葉かと疑ったが、女の言葉だった。思わず女の顔を見る。

 長い黒髪が風に流され、あらわになった大きな黒いひとみに燃える街並みが映っている。

「確かに綺麗だ。だが、きみはもっと綺麗だな。」

 女が笑った。

「名前を聞いて無かったわね。」

「テルオミ。帝国では勇者テルオミと呼ばれていたが、今は裏切者・・かな。」

後の大魔王テルオミ

エミャルとミシャの祖父

34話の補足、、蛇足?

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