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使節団の出港

 合同の使節団の準備をすすめた。

 なんだかんだで購入した船と借りた船で、大型船7隻にもなった。東の大陸への使節としては史上最大規模らしい。帝国の使節と近衛師団が3隻、うち1隻は実質セクタ領の兵士たち。魔王国が2隻。左大臣と右大臣配下の商業部隊が1隻づつ。船員を除いて、総勢で200名を超えている。

 名目は親善使節と商業的な物で、もともとそういう船だったせいもあって全て商船としての体制を取っている。だが、帝国側から近衛師団80名、魔王国もある程度の兵員を載せていて火薬類も積み込んだ。原始的な物だが大砲もある。大砲は内部に隠してあるが・・。船倉には、いくつかの大瑠璃(ビックデバイス)も装備して、超長距離通信による各大陸との交信が可能だ。右大臣と左大臣の船には、なにやら重そうな積み荷も満載している。

 使節の受け入れについて共和国側から、当初、あまり良い応答が来なかった。来てもらっては困るという感じにも思えたのだが。皇帝と魔王自身が行くという話しをすると、急に態度が変わり歓迎の意向を伝えて来た。エストリアは元首を捕らえて脅迫するつもりじゃないか、、と言っていたが、まあ、気にしてもしょうがない。


 季節的に秋に入って帝国の中心は、かなり冷え込んで来たのだが、それは高原と言えるような高度のせいでもある。セクタの港は、まだ十分に暖かい。港に立つと潮風がここちよい。

 以前からのメンバーは、ほぼ全て行く事になったが、船はバラバラだ。エストリアは左大臣の船、ミシャやトラクは魔王国の船だし、エミャルは右大臣の船らしい。俺が乗る旗艦は、以前からのメンバーだと近衛部隊としてルナリスやクラム、サミアスが乗っている。船室を改造する事を条件に、ロコナも乗っている。木造船なので燃やさないで欲しいが・・。

 そういえば、出港前に、そのロコナが


ロコナ「あんた、神官長に、でたらめ言ったでしょ?」

俺「さあ。どうだろう。」

ロコナ「スピルカン共和国に特別な魔法技術なんか無いわよ。」

俺「そうなのか? 伝説では大瑠璃(ビックデバイス)を束ねて・・。」

ロコナ「だから、100年も前の伝説と言ったでしょ。今の共和国の魔法技術は、我々以下よ。」


 そういや、ここの100年は、元の世界の200年だった・・。

 つまり、行っても、そんな魔法技術は廃れて存在しない? 無駄足なのかな?


ロコナ「あんたの言葉に騙されて、神官長配下の魔法部隊が50人ぐらい乗船してるわ。

    騙されたと分かったら、何言われるか・・。私は知らないからね。」

俺「そんなに来てるのか・・。」


 この使節団自体、俺の勝手な都合とも言えるし、後で皆にいろいろと言われそうだなぁ。


 ただ、エストリアや大臣たちはノリノリだった。何をする気だろう?

 御前会議は途中までしか聞いて無かったのだが、エストリアが、皆がいかないなら自分だけでも稼いでくる、と言ったら、ぜひ、加えてくれという感じになっていた。


 出港時は、旗艦の船首近くのオープン・デッキから、港を出る様子を眺めていた。タグボードも無いのに、少しだけ帆を張って、うまく操船している。すごいもんだ。

 木造船・・と言っても意外に鉄が使われていて、相変わらず、この世界のちぐはぐな技術レベルは良く分からない。もちろん、床は木でできているのだがマストは鉄製だし、木材を鉄の骨格に貼り合わせたような感じの船だ。

 港を出ると、帆を一杯に張って速度を上げる。この世界の重い空気のせいか、そこまで強風でも無いのに、かなりの速度で波をかき分けて進む。エンジン音が無くて風と波の音だけなのが気持ち良い。

 港が小さくなってきて、海の景色に飽きてきたので、俺に割り当てれた船室に入って見ると・・。


俺「なぜ、エストリアがここにいるんだ?左大臣の船じゃなかったのか?」

エストリア「ぎりぎりで、こっちに乗船したからに決まってるでしょ。

      あのジジイの船なんか、イヤよ。 

      私の船室はヒロタンの隣で良いかしら?」

俺「いや、そんな予定は・・。」


 エストリアが勝手に隣の船室を開けると、何故かエミャルがいて・・


エミャル「あれ? エストリアさん?」

俺「エミャルは、右大臣の船じゃ無かったのか?

  どうしてここにいるんだ?」

エミャル「こっちにしてもらったのです。

     右大臣の船には、代わりにミューちゃんを置いてきました。」


 代わり? 置いて行けば良い物なの?


エミャル「積み荷の会計処理はミューちゃんがやってます。」


 それが代わり? ちびいけど、彼女も優秀なんだよな。


エストリア「勝手に部屋を決めないで。ヒロタンの隣は私の部屋よ。」


 決まってるのか? おまえも勝手に決めてるだろ!


俺「まあ、まだ、俺の部屋の反対側が空いてるはずだぞ。

  ルナリスとかは近衛部隊の士官室だ。」


 反対の隣の部屋を、、、。一応、ノックしてみると。


ミシャ「はい・・。どなた・・でしょう?」


 よわよわしいミシャの声!? 何、どうしてここにいるの?

 どうなってるの?


俺「ミシャなのか? どうしたんだ?」

ミシャ「大丈夫です。ヒロタンさんなら、どうぞ・・」


 ドアを開けると・・


ミシャ「酔い・・ました。 うえっ。」


 うわっ。困った・・。と言うか、何故、ここにいるんだ?


俺「まいったなぁ。とりあえず、エストリアとエミャルは同じ部屋を使ってくれ。

  そこは、もともと二人部屋だ。」


エストリア「何を言ってるの?」

エミャル「いやですよ!」

俺「予定も無しに乗船して文句言うな。船は狭いのだぞ。」


俺「ミシャは部屋の中にいるより、デッキに出て少し風にあたった方が良いぞ」


 ミシャをオープン・デッキに連れ出して、風にあててみる。


ミシャ「すみません。

    だいぶ、良くなりました。」

俺「大丈夫か?

  しかし、なぜ、この船に? 魔王国の船に乗っているものと・・・。」

ミシャ「出港直前に、この船に挨拶に行くと言って、、。そのまま隠れてました。」


 おまえは密航者か!?


ミシャ「出港してから、連絡していますので大丈夫ですよ。」


 どうりで、魔王国の船が騒がしかったわけだ。


俺「でも、ミシャの船酔は考えて無かったよ。

  すまん。連れて来ない方が良かったかなぁ。」  

ミシャ「船は初めてなので、、。私も考えていませんでした。

    でも、大丈夫ですよ。」

俺「辛かったら、いつでも言ってくれ。」

ミシャ「これぐらい、ぜんぜん(つら)く無いです。

    こんなに、嬉しい旅は初めて、ですし。 連れてきてもらえて嬉しいです!」


 ミシャの船酔いは心配だが、それ以外は俺も楽しい。

 この船には、城の料理人を乗せて来たから食事も悪く無いし、なかなか楽しい旅行気分だ!


 だが、船で二泊した翌日、風が無くなってしまった。(なぎ)というやつか。帆船の弱点だな。海の真ん中で漂流している。

 共和国には到着が遅れる旨を連絡して、ただ風を待つ。

 幸いミシャの船酔いは慣れたというか、治ってきた。エストリアとエミャルも、それなりに仲良くやっている。二人で着いてからのタイムスケジュールを相談しているみたいだが、俺には良く分からない。


 そして、その夜のうちに風が戻ったようで、朝には陸地が見えていた。暗いうちは、座礁の危険もあるので、あまり陸に近づかなかったらしい。明るくなってから港に向かって進みだし、ほどなくして入港した。

 遅れる連絡したせいか、共和国側の準備はできていなかったようで、たいした出迎えも無い。港の事務所で簡単な歓迎式をしてくれたが、首都からの迎えの馬車は2日ほどかかると言われた。

 こちらで勝手に馬車を調達して首都に向かおう・、、、とも思ったが、港の馬車屋に行ってみると、ほぼ、すべて(から)。まったく馬車が無い。


 別の桟橋を見ると、右大臣と、左大臣の大型船から次々に、なにやら重そうな荷物を水揚げして、大量の馬車に積み込み走り去っていく様子が見える。もしかして、彼らが、この付近の馬車を全部、調達した?エミャルや、エストリアも一緒に行ってしまった。 何をやっているのだろう? エストリアにもう少し聞いておけば良かった。


 しょうがないので、首都からの迎えの馬車を待つ事にする。


 名物料理でも無いかと思ってルナリスたちと港の食堂へ行ってみると、昼間から完全に酒に酔った人がいて、、。ぶつぶつ言っている。


「くそー。なんで、私がこんにゃ目に!」


 酒のせいで、古典的なアニメに出てきそうな言葉になっているぞ。

 もちろん、こういうのには絶対に近寄ってはいけない・・。できるだけ離れて座った。

 のだが・・。


「あー。あんた! なぜ、ここにいるにょ!」


 え? 俺?


「あんたのせいで、私はクビになりそうなにょよ! ちょうど、良かったわ! 私と来て!」


 うわっ。ダメな監査官だ!

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