革命の結果
帝都に戻る前にセクタの城で、研究室を作っているロコナのところに行ってみた。
彼女なら、ミシャをなんとかする方法を知ってるかもしれない。ヒントぐらいは…
俺「すごいな。何処から、こんなに魔法道具を集めてきたのだ?」
ロコナ「ルナの所にあった物と、あと魔王国の神官長さんからもらってきたのよ。」
俺「俺たちが去った後も、魔王国で何かやっていたのか?」
ロコナ「少しね。
ところで、なんの用?」
俺「う~ん。なんというか、。そうだな。勇者の召喚って、人間を再構成する感じかな?」
ロコナ「どうかしら。もともとあるものを、投影すると言われているわ。」
なんじゃ、そりゃ?
俺「召喚するときって、まったく同じ人間では無いし、例えば、欠けた部分のある人間を召喚したら、それを補て完全な人間にできないかな?」
ロコナ「何を言ってるのかわからないけど、大瑠璃の中にある人間を投影して実態化しているのよ。もし、大瑠璃の中の人間が欠けていれば、欠けた人間が召喚されるだけ。」
無理そうだな。
俺「他に、こう、。欠けた部分のある人間を復活させる魔法的な方法って無いかな?」
ロコナ「これだから無知な人間は困るのよ。
あんたには、まず基本課程の質量保存則から習ってもらう必要があるわね。」
定番ファンタジー世界を否定しないでくれ!
俺「召喚で勇者が現れたら、それで質量が・・。」
ロコナ「当然、大瑠璃の質量は、召喚された人間の分、減るわ。」
あー。そうですか。常識が無いのは俺だったか。
いや、だったら、
俺「それなら、力というか、魔法のための動力みたいなのは、どこから来るのだ?」
ロコナ「へー。意外と核心をついて来るわね。
それについては、いろいろと妙な理論を言う人はいるけど。」
ロコナ「はっきり言って、不明ね。」
変な理論の方を言われなくて良かった。
俺「分からない事を分からないと言う学者は、偉いと思うよ。」
ロコナ「勘違いしているみたいだけど、学者や教育者は、そのわけの分からない理論を答えると思うわ。
私は研究者であり、技術者よ。
分からない物を分からないとしないで、どうするの?」
俺「なるほど。俺としては助かるよ。」
俺「じゃぁ、もう一つ、教えてくれ。 魔獣についてなんだが。
あれは、生物としての元の形とは違う物になってるよな」
ロコナ「魔法回路・魔法回路の暴走ね。魔法回路は、魔法と同時に生物学的な物なのよ。
レベルに応じて、生物としての機能・能力に補助的に干渉している。
それが過度に干渉すると、補助という役割を超えて、本来の形をゆがめてしまうの。」
電動自転車が、ペダルをこがなくても暴走するみたいな物か。
俺「その暴走した時の形というのは、何処から来るのだ? それもまた一定の生物に見えたが。」
ロコナ「知らないわ。」
即答かよ!
その形に一定の制御ができれば、何か出来るかもしれない、、と思ったのだが。
俺「ロコナが刻んだ、レベルで暴走を制限できたようなんだが。」
ロコナ「形が変わらない範囲でしょ。形が変わった時に何になるかなんてわからないわ。」
そうだろうか。ヒントはある気もする。
でも、ロコナに聞けるのは、このあたりまでかな?
俺「つまり、方法は無い・・っと。」
ロコナ「私が言う事では無いのだけど、、。曖昧な話、、というか伝説で良ければ、、。」
俺「あー、なんでも良い。知ってる事があれば言ってくれ。」
ロコナ「東の大陸に、スピルカン共和国というのがあるでしょ?」
俺「以前、硝石を買った時に監査官を送ってきた国だな。」
ロコナ「以前は、帝国だったのだけど、そこの皇帝が国中の大瑠璃の共振動作によって、王妃の重い病気を治した・・と言う伝承があるのよ。」
俺「暴君を卑しめるための伝承・・かな?」
ロコナ「そうね。そういった類だと思うけど、スピルカンには、この大陸の2倍以上の大瑠璃があるから、それだけあれば、超越的な自我回路を作れるかもしれない。」
俺「それがあると何か出来るのか?」
ロコナ「魔法回路は自我によって制限されている・・のよ。超越的な自我回路と言ったのは、それを超える事が可能になるかもしれないという事。さっきの魔獣じゃないけど、普通の魔法回路の動作とは違う物が可能になるかもしれないわ。」
俺「その伝説というのは、いつ頃の話し?」
ロコナ「100年ほど前ね。スピルカンは共和制と帝制を数十年毎に繰り返してる。」
俺「ありがとう。とても参考になったよ。」
100年なら神話というほどじゃないよな。単に別の大陸だから曖昧になっているだけかもしれない。
ロコナ「ちょっと待って。何か、お礼を言われるような話しをしたかしら?」
俺「あー、十分だ。」
しかし、共和国かぁ。
リナルを呼んで、
俺「大陸へ渡れるような大型船を買えないか? 貿易用にも使えるだろう。」
リナル「貿易用にも?
お金があれば買えるけど、高いわよ。ここでは作って無いから。」
俺「公社の金を全部使っても構わない。できれば、複数。」
リナル「無茶言うわね。お城になんて言えば良いの?」
俺「俺が悪いと言ってくれ。証文を書いておく。」
そして、気になったエミュルの事。
帝都に戻ってから、すぐに右大臣の家に行って、エミャルの事を聞いてみたが
俺「先日、ルナリスの屋敷にいた、エミャルの事をご存知ですか?」
右大臣「最近、聞きました。いろいろと複雑な家系のようですな。」
俺「彼女が帝国の魔法士官学校に通っていたというのは、ご存知ですか?」
右大臣「それは、驚きましたなぁ。はっはっは。」
なんだか、少しわざとらしいぞ。この野郎! とぼける気か!?
俺「それが、なんというか、後ろ盾を失って、身寄りも無く酷い事になっていたのです。」
むしろ、隠す気も無いぐらいの態度だが・・。
右大臣「私は左大臣と違って、清廉なイメージで売っています。」
どっちもどっちだろ。
右大臣「あまり、詮索しないで頂きたいのですが・・。
何がご希望ですか?」
まあ、今更、言ってもしょうがないだろうし、この人たちには政治的な解決しかないよね。
俺「右大臣閣下なら、エミャルが血筋的に影響力があるのはご理解いただいていると思います。
そのエミャルが、ある方について、その罪を認識しております。
これは問題でしょう?」
右大臣「そうですね。
エミャルさんと魔王国の関係から言っても、将来的に問題になるかもしれません。」
うん。さすがに良く知っている。
俺「そこで、です。もし、その問題の方からエミャルに、過去の遺恨を忘れるほどの利益供与があればと思うわけです。
そうすれば、その問題は解消しましょう。」
右大臣「なるほど。良い解決策ですな。」
なんだか考えてるが、ダメなのか?
右大臣「ひとつだけ、エミャルさんについて聞いても良いですか?」
この人は左大臣より情報に敏感だ。既にいろいろと調べていると思うが。
俺「なんでしょう?」
右大臣「エミャルさんと、あなたの関係です。
お城に部屋を用意されたと聞いておりますが・・。」
あれは、エストリアが用意したのだよな。あの時点では、ミシャ様もいたから、単にルナの屋敷の部屋の不足が理由じゃないかと思うけど。
でも、良く分からない魔王の能力もあるから近くにいてくれた方が良いとは思う。
俺「そうですね。近くにいて欲しい……とは思っています。」
右大臣「分かりました。」
俺「あと、もうひとつ、ご相談があるのですが。」
用意していた議案を・・。
右大臣「何を考えてます? 東の大陸?」
俺「右大臣閣下が経営されている商業組合にとって、発展のチャンスですよ。」
右大臣「なるほど・・。」
また、少し考えてる。
右大臣「わかりました。協力させて頂きます。
実を言うと、あなたの皇帝職について左大臣閣下ほど納得していなかったのですが、。
もしかすると、指輪の件が無くても、ふさわしい・・のかもしれませんね。」
俺「ありがとうございます。」
社会人は取りあえず礼を言う。もちろん、俺の目的は・・
そして、翌日には戒厳令が解除され、2日後から、延期されていた議会が開かれた。
俺が挨拶しても良いと言われたので、この大陸の平和を維持しつつ、東の大陸に目を向ける演説をしておいた。
旧議長派の多数の議員が辞職となり、会議場に張り出された新議員の候補には、
予定通り、
ミリア・ワナシエスカ
ルナリス・マリネラン
そして、、。
エミャル・シバタイル
あれ? エミャル・シバタイル って誰? まあ、右大臣の策略でエミャルが貴族議員なんだろうし、しどろもどろに挨拶したのは確かにエミャルだったけど。セクタ国の王族の家名はセクタなんとかって国名が入っていたはずだ。
新議長の候補は、なぜか、タジャラン校長。
新議員候補は不足している定数とぴったりで、新議長も他に候補がおらず、まとめて新任投票という形。完全に大臣たちの思惑通りの展開だ。議長を追い出した事で、議会を二人の大臣が掌握しているらしい。
だが、その後、左大臣から出されたセクタから帝国への税金の免除の法律は、簡単に終わらなかった。右大臣の会派から復興支援のためならセクタ国への融資の利率を制限すべきという対抗案が出されて、それで紛糾している。融資とは左大臣からの借金であり、明らかにその利益を削ろうという意図だ。
もしかすると、革命後の政治は、右大臣 対 左大臣の構図……かな。
あと、もう一つ、俺が作った議案。東の大陸への親善使節の派遣についての特別立法、。右大臣と左大臣に根回ししておいたので、これはすんなり通った。国力を大陸の外に向ける機会なのは、誰の目にも明らかだからな。
議会の後、エミャルが、俺のところに来て。
エミャル「勝手にごめんなさい。
右大臣さんから、ヒロタンさんのためになるから貴族議員になれと言われて。」
俺「あー確かに、エミャルが貴族議員だと、俺にとって有利だと思う。
それにエミャルにとっても良い事だと思うが・・。
名前はどうして?」
エミャル「セクタ国の王族名だと帝国貴族としては問題なので、名前だけの養女になるようにと。それで右大臣さんの養女に・・。」
そう来たか!
いつの間にか、エストリアが後ろからやってきて・・
エストリア「どういう事? どうしてエミャルが?」
俺「俺もここへ来て初めて見た。貴族議員とはね。」
エストリア「議員はどうでも良いでしょ!」
いやいや、議員がどうでも良いとか……
俺「既に政府関係者だから、議会に喧嘩売る発言は止めて!」
エストリア「分かってる?これでエミャルは有力な帝国貴族の家系になるのよ。」
名前だけじゃ?
エストリア「つまり、エミャルがヒロタンの正妻になっても問題無い!」
もしかして右大臣の意図もそこ? 左大臣の娘であるエストリアへの牽制?
右大臣、恐るべし!
俺「落ち着けよ。エミャルはそういうつもりじゃ無かったと思うぞ。」
右大臣はそういうつもりかもしれないが・・。
エミャル「はい。私は、そんなつもりは・・。
あ、でも、それがイヤという意味ではありませんよ。」
控えめな美少女のエミャルは何処へ行ったのだ!
エストリア「言うわね。
いずれヒロタンには、はっきりしてもらいましょう。」
政治抗争が家庭に持ち込まれた気分だ。皇帝とはそういう物なのか?
俺「じゃあ。そのエストリア様に一つ相談があるのだが・・。
東の大陸のスピルカン共和国を占領するには、どうしたら良いだろう?」




