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混乱の式典

 戴冠式(たいかんしき)をエストリアが仕切り始めた。


エストリア「私の夫は、この勇者のヒロタンに!」


 良くわからんが観衆から、再び歓声があがった。

 喜んでるのか? それで良いのか?


 ところが、いきなり鼓膜が破れそうな大音響が式典会場に響き渡り・・

 「だまりなさい! ニセ皇帝が、何、バカな事を言ってるのですか!」

 ミシャが、(ステック)を掲げて叫んでいる。拡声器なのか?

 いつの間にか、銀色の馬車が戻ってきていた。エミャルが御者をして馬をなだめているようだが、。

 そして、ミシャが馬車を降りて、ひな壇を上がってくる。止めようとした兵士は、電撃に撃たれて転げ落ちた。次に止めようとした兵士は、倒れてのたうちまわっている。死んで無いと思うが、容赦ないなぁ。

 あまりの事に観衆も静まりかえっている。


ミシャ「帝国の皇帝は、魔王国の魔王と対をなす存在!

    その指輪も、また、この魔王である私の指輪と対を成す物です。」


 ミシャは、ひな壇を上がり切り、エストリアの手を取り、先ほどエストリアが司祭から授けられた指輪を示した。

 そして、自身の指輪と合わせたが・・。2つの指輪の文様はうまく合わない。


エストリア「どういう事?」


左大臣

  「確かに伝承だと、その娘の言う通りだ。だが、皇帝はその指輪を持っていなかった!

   帝国に、その指輪は存在しない!

   先ほどの指輪は伝承に似せて作った偽物(レプリカ)だ。

   そもそも、そのような装身具(アクセサリー)で皇帝の地位を言うべきではないだろう!」


ミシャ「そこの神官! 今の発言を、どう(とら)える?」


司祭「左大臣閣下。指輪が、偽物(レプリカ)とは聞き捨てなりません。

   皇帝の指輪は帝国の大瑠璃(ビックデバイス)のマスターキーです。

   われわれ神殿は偽物(レプリカ)の指輪の皇帝を、皇帝と認める事はできません。」


左大臣

  「何を言ってるのだ? 政治が混乱しても良いのか?」


司祭「大瑠璃(ビックデバイス)による、洗礼や多くの儀式が、

   この国を作っていると考えております。」


 司祭は一礼すると、左大臣の制止を振り切ってひな壇をおり始めた。

 その司祭の前にミシャが立ちふさがる。


ミシャ「真の指輪の(あるじ)をもって。儀式を続けて頂けますか?」


左大臣「いいかげん!その小娘を、つまみ出せ!」


観衆も騒ぎ始めた。

 「魔王ですって?」「敵よ!?」「あの子が?」「確かに酷い姿ね。」


 兵士が何人かミシャにせまる。

 ミシャが(スティック)を構えたが、ミシャとしては、そろそろ限界だ。かけよって、俺がフォローに。トラクもミシャの側に。


観衆X「勇者様が魔王の、あんな近くにまで……」


エストリア「止めなさい!その方は、ほんとうに魔王国の魔王様ですよ。

      ミシャ様。真の指輪の(あるじ)とは、誰なのですか?」


 ミシャやエストリアがしている指輪が、似ているので、そうじゃないかと思ったが。

 面倒な事になりそうだ。


俺「ミシャ様。それ以上は止めてください。

  エストリアと一緒に脱出できれば十分です。」


観衆Y「勇者様が魔王を止めたわ。兵士は簡単にやられたのに……。」

観衆Z「さすが勇者だ」


 ミシャが俺の言葉に躊躇(ちゅうちょ)している間に左大臣が目ざとく俺の指輪に気付いたようだ。

 俺に近寄ってきた。


左大臣「その指輪を外せ!」

俺「お断りします! せっかく、ミシャ様とおそろいの……。」

司祭「ん?それは!?

   本物なら本人の同意無しに、外す事はできませんよ。」

左大臣「そ、そうだったな……。」


 急に態度が変わった左大臣が……

左大臣「すまんかったな。

    わかった! おまえはエストリアと結婚して……。」


ミシャ「黙りなさい! ヒロタン様は、エミャルお姉さまと既に!」

エストリア「え? 既になに? 本当にエミャルと何かあったの?」

俺「事情が……。」

エストリア「あなたたちを逃がすために苦労しているのに、なんでエミャルなの!」

ミシャ「お義兄様は、エミャルお姉さまと結婚したも同然なのです。

    ニセ皇帝は下がってなさい!」


 うわ~。むちゃくちゃだ。


俺「と、とにかく、式典の中止を!」

エストリア「そうね。これ以上は混乱するだけだわ。

      今日の式典は中止よ!」


左大臣「分った! 

    諸君! 戴冠式(たいかんしき)は事情により中止だ! 新皇帝と合わせて、別に発表する!」


 グダグダの式典会場を後に屋敷に引き上げた。余計な人たちも付いてきたが……。

 戻ると、待っていたルナリスが……


ルナリス「エストリアを救出できたのね! 良かったわ。

     火薬は準備できてます! すぐに城壁を破壊して、帝都から脱出よ。」

左大臣「おまえらは、何を考えておったのじゃ!」

ルナリス「あら?

     左大臣閣下も、一緒に逃げますの?」

左大臣「私は革命をやってる方だ!

    なんで逃げるんだよ!」

ルマリオ「くそっ。どうなったんだ?」

右大臣「おまえは、もうちょっと考えて行動しろ」


 その後、右大臣はミシャの後ろに居たエミャルを見つけて驚いたような顔を。そして、左大臣に何か小さい声で、。このおっさんたちは何を知っているのだろう。何をしてきたのだろう。


エストリア「つまり! どういう事かというと、ヒロタンの指輪が皇帝の指輪という事?」

ミリア「そうよ。知らなかったの?

    まあ、私も飾りとしか思って無かったけど……。」


右大臣「部下の報告だと、式典の観衆は、ヒロタンを支持しているようです。

    さっぱり分からんが、式典としては失敗でしたな。」


左大臣「どうしたもんか……。」


右大臣「しょうがないでしょう。

    ヒロタンに(にせ)皇帝にでもなってもらって、皇帝代理でエストリアとルマリオあたりですか?」


ミシャ「皇帝に(にせ)はありません。神殿が納得しませんよ。」

左大臣「おまえが魔王なら、そういうのは内政干渉だぞ。戦争をしたいのか?」

ミシャ「事実を言ってるだけです。もともと、この国の皇帝も最高位の聖職者だったのです。」

左大臣「とっくに形骸化しておるわ。」


俺「俺は皇帝なんかやらんぞ!」

エストリア「じゃぁ、指輪を外しなさい。」

俺「イヤだ!」

エストリア「どっちかよ! 指輪を外すか皇帝をやるか!」

俺「う……。」


左大臣「まあ、ヒロタンはエストリアに比べれば扱いやすいヤツだからな。

    それで皆が納得するならヒロタンが皇帝で良いじゃろ。

    それに副皇帝でエストリアとルマリオ……って、あたりでどうじゃ?」


エストリア「条件があるわ!」


 なんで、おまえが条件を言うのだ?


左大臣「なんだ?」

エストリア「貴族議員の席が空くでしょ。」

左大臣「ほおぉ。良く知ってるな。この騒ぎで議長派の議員を15人ほど辞職に追い込んだが……。」

エストリア「へ? 15人も?

      まあ、いいわ。じゃぁ、ミリアと、ルナリスを貴族議員にして!」

左大臣「バカか!

    せっかく作った空きはすべて我々の派閥の人間で……。」


俺「すみません。左大臣と右大臣の派閥だけの候補だと、反発があると思います。

  反革命を抑えるために、ミリアを議員にするのは良いと思いますよ。

  旧皇帝を支持する勢力も残っているでしょうし。

  あと、ルナリスは旧議長の悪事を言って、その不正を正すためと言えば、大衆に受け入れられるのでは?」


左大臣「そうだな。まあ、良かろう。

    それで、おまえは皇帝をやるわけだな。」

エストリア「決まりね!」


 いや、まだ、俺は……


右大臣「では、告知を作りましょう。

    戴冠式は、明日で良いですか?」

左大臣「良いのじゃないか? 会場のひな壇は、そのまま残っておる。1日延期されただけじゃ。

    おまえら、明日、早めにお城に来て、着替えて用意しておけよ。

    今度は絶対に失敗するな!」


 大臣たちとルマリオは帰っていった。


 そして、すぐに、発表があった。


「臨時革命政府より。

  事情により、新皇帝は、ヒロタン・シバタイルに変更された。

  同時に、副皇帝に、エストリアとルマリオに就任する。

  これは体制の若干の変更であり革命政府に問題は無い。


  明日、4刻に、中央広場にて改めて即位の祝賀式典を開催する。

  なお、明日の式典を妨害する者は、いかなる理由においても極刑である!」


 この世界の俺に家名なんかあったのか?


ルナリス「エストリアと、左大臣の家名ですね。養子にでもなりました?」

俺「そんな覚えは無いぞ。」

エストリア「あのジジイのやりそうな事ね。」


 でも、嬉しそうだな。


ミリア「結婚するとは書いてありませんよ。」

ミシャ「もし、そう書いてあったら式典を破壊します。」

俺「ほんとに戦争になるから、止めてください!」


 ほどなくして、なにやら届いたのを執事が持ってきて。


執事「式典の招待状が届いております。

   ミシャ様宛、ミリア様宛、ルナリス様宛、トラク様宛、エミャル様宛の5通」


 来賓席という名前の監獄に閉じ込める作戦だろうな。さすが左大臣!

 あれ?でも、なんで、エミャルの分も?


 まあ、いいや。


俺「エストリアは帰らないの?」

エストリア「どこに帰れって言うの? 」


 既視感(デジャブ)があるな。


エストリア「この屋敷の私の使っていた部屋は空いてるかしら?」

エミャル「えっ。あの・・」

俺「今は、人が多いから空いて無いぞ。」

エストリア「空けてくれる?!」

俺「無理! あの部屋はエミャルとミシャ様の二人が……

  いや、、。

  エストリアがあの部屋だったら、今、あの部屋にある追加のベッドを俺の部屋にもってきてくれ。」

エミャル「その追加のベッドは私のでしょうか? それともミシャ? 二人のうち一人は……」

ミシャ「姉さま。そこは、たずねたりしないで、黙ってうなずくところです。

    私は耳をふさいで布団を被って隣のベッドで寝ますので。姉さまはヒロタン様と。」

エストリア「何を言ってるの?まさか、ヒロタンとエミャルが同じベッド!?」

俺「エミャルには追加のベッドで寝てもらうよ。」

ミシャ「えっ!?」

エミャル「それだとヒロタンさんが、またミシャと!?」

エストリア「ミシャ様と同じベッド? あなたロリコンなの? 『また』、、って言った?」

俺「ミシャ様は妹みたいな物だから大丈夫だ!」

ルナリス「だめですよ!

     せまくなるけど、私の部屋に、もう一つベッドをもってきます。

     エストリアは、私の部屋で寝てください。」

エストリア「分かったわよ! まいったわね。早急に、お城の部屋を準備しないといけないわ。」

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