戴冠式
さて、翌日!
戴冠式への突撃は、例の高速の馬車で、俺とエミャルとミシャ魔王様とトラクで行く事になった。ここへ来た時のミリア救出のメンバーでもあるし、この馬車での突撃には慣れているかもしれない。
俺「すみません。変な事を手伝わせてしまって。」
ミシャ「かまいません。ヒロタン様のお手伝いができれば。」
トラク「ミシャ様もご一緒であれば!」
エミャル「ヒロタンさんと一緒なら、どこへでも。」
この高速の馬車なら、式典会場から逃げ切れるはず。
エストリアを助けたあと、城壁を爆破、屋敷にいるメンバーと共に皆で脱出という手順。
戴冠式は城の前の広場で、国民に披露する事になっている。設営された会場は、御前試合の時に似ている。時刻も公表されていたから、その時刻に突撃!
近くまで来てみると、幸いパレードをやるとかで、中央通りに向けて道が開けてあった。そこから、いっきに会場の中央につっこむ。簡単な柵があっただけなので、ぶち切って直進。銀色の車体が、いやでも目立つ馬車なんだが。警備の兵士は、あまりの事にあっけに取られて、特に何もしてこなかった。或は、ど派手すぎて何か式典の関係と勘違いしていたのか。
会場に飛び込むと、ひな壇の最上段にエストリア、左大臣、ルマリオ、右大臣、そして儀式の司祭がいる。司祭がエストリアに何かの指輪をはめている所。
左大臣と右大臣は、半分、顔を隠してる。相変わらず怪しいやつらだ。確かにこいつらに皇帝は無理か。
どういう儀式の途中か知らないが、ルナリスが作った御前試合の時と同じ光の瑠璃を使う。周囲が光で満たされて、まぶしくて何も見えなくなるやつ。これを使えば、何が起きてるか誰もわからなくなる。今回、御前試合の時と違うのは、俺たちだけはルナリスが作った特製のサングラスを付けていて、視界を確保している事。これで俺たちだけは行動できる。全てルナリスが考えた作戦だ。
光の瑠璃を使った後、トラクと俺は馬車を飛び降り、ひな壇を駆け上がる。エストリアに近づき、
俺「助けに来た!」
エストリア「え? 何? ヒロタン?」
そして、有無を言わせずにエストリアを抱え上げる。皇帝の衣装や装身具が邪魔で・・
俺「重いじゃないか!」
エストリア「なんですって!?」
後は、馬車に戻って脱出するだけ!
そして、馬車に戻ろうと振り返ると・・
降りた所に馬車がいない!?
光に驚いて馬が光と反対方向、つまり元来た道の方へ駆け出した!? 既に、かなり遠くに行ってしまっている。御者をしていたトラクが降りてしまったから!?
どうすんだよ!
そうこうしているうちに、光が消えてしまった。
ひな壇の上で、エストリアをお姫様だっこしている俺に、周囲の視線が集まる。これは、まいった。
会場がざわついてる。
観衆A「この前の御前試合の勇者様じゃない?」
観衆B「まあ、だいたんに花嫁を強奪!?」
観衆C「ちょっと待った、きたーーー!」
どういう解釈だ?
エストリア「もしかしたらと思ったけど・・。
やっぱり来てくれたのね。
家同士が決めた結婚から私を・・。」
なぜ、俺に抱きつく? 胸があたるじゃないか!
観衆D「エストリア様も、まんざらで無いご様子よ!」
エストリア「でも、他にしょうがなかったのよ。
ごめんなさい。
こうでもしないと、あなたたちを帝都から脱出させられなくて・・。
あーなんて悲劇なの!?」
俺「エストリアって、そんな少女趣味のキャラだっけ?」
エストリア「どういう意味?」
一方、ルマリオは隣で・・
ルマリオ「かまわんぞ! そんな可愛くもないクソ女なぞ要らんわ!
おまえがいなくなれば、俺様が皇帝だ!
ぐわははは。」
観衆E「最悪ね!」
観衆F「ひでぇヤツだ!」「ルマリオ、氏ね!」
観衆G「ルマリオ様はダメだわ!」
右大臣が小声でルマリオに「バカ!おまえは、助けに行くんだ!」
ルマリオ「なぜ? だいたい、相手は勇者だし。」
右大臣「あいつはニセ勇者だ! 兵士と一緒に行けばおまえでも簡単に倒せる!」
兵士たちが襲ってくる。
ルマリオも一緒に。なんかイヤそうだけど・・。
トラクが剣を抜いた。この人数を相手にトラクの剣だと地獄絵図になるぞ!
やむを得ない! 俺が棒で、一つ覚えの魔王攻撃である!
たくさんの細い稲妻がルマリオと兵士のいち団を襲う。これが、観衆には、かなり派手な演出になったようだ。歓声を上げて喜んでいるが……。良いのか?
右大臣「な、なんと!」
エストリア「何? これ?」
俺「大丈夫だ。死んではいない、。……たぶん。」
左大臣「やむを得まい。ものども! 兵士全員でかかれ! あやつを捕らえろ!」
左大臣が言うと、いかにも悪役っぽいセリフだ。
何処にいたのか、100人以上の兵士が湧き出てきた。こりゃ、無理だわ!
エストリアが「おろして。」
俺「ん?」
ひな壇の最上段に立ったエストリアが
エストリア「止めなさい!」
エストリアの強い言葉で兵士が停まった。
エストリア「既に指輪は受け取りました! 私が皇帝です!
兵は下がりなさい!」
ミリアより、よほど皇帝らしいわ。
左大臣「しかし、おまえ。」
エストリア「だまれ! クソジジイ! 皇帝の私に逆らう気?」
左大臣「はぁ? 誰が皇帝にしたと……」
エストリア「うるさいわね。成ってしまえば、こっちの物よ。」
右大臣が、ルマリオをつついて生きているのを確認しながら、。やれやれと言う表情で。
右大臣「まいりましたな。さすが、左大臣の娘さん……ですか。」
エストリア「なんですって?!」
左大臣「なんじゃと!?」
うん。右大臣の言う通りかも。
エストリア「こうなった以上、式典の内容を変更します!
そこに転がってるバカに私の夫は無理でしょう。
私の夫は、この勇者ヒロタンに!」
良くわからんが観衆から、再び歓声があがった。
喜んでるのか? それで良いのか?
ところが、いきなり鼓膜が破れそうな大音響が式典会場に響き渡り・・
「だまりなさい! ニセ皇帝が! 何、バカな事を言ってるのですか!」




