魔王国動乱
ルナリスに帝都内の通信の傍受をお願いしていたのだが、定期的に行っている帝都との長距離通信による打ち合わせで。
ルナリス「軍の通信で聞いたのですが、シサム将軍配下の4000人規模の部隊が、大規模演習といって帝都を出発したようです。
これって、報告した方が良いですよね?」
エストリア「通常の演習と違うの?」
ルナリス「さあ。分かりませんけど、食料とかの兵站10日分を持って出ています。」
シサム将軍って議長と繋がっているのだよな。まさか、独断で、ここセクタまで攻めてくる?
俺「ストリュ。もし、その規模の軍隊が、ここに来たら?」
ストリュ「2日と持たないだろうな。」
俺「ルナリス。どっち方面か分る?」
ルナリス「魔王国方面みたいです。」
じゃあ、ここに来るとかは無いよね。
エストリア「魔王国だと、その規模で攻めても攻略は難しいと思うわ。普通の演習じゃない?」
俺「一応、宰相さんに連絡しておこう。 何時、出発した?」
ルナリス「昨日ですね。魔王国の国境に向かったとすると、そろそろ到達しているでしょうか。」
俺「他には?」
ルナリス「ノカナ将軍配下の部隊が帝都内で移動していますが、通常の配置換えでしょう。」
エストリア「いずれにしろ、動きが多いわけね。」
魔王国の宰相さんに連絡したが、国境付近に異常は無いとの事だった。
その時は・・。
ところが3日後、魔王国の宰相さんから緊急の長距離通信で、。
宰相「たいへんな事になった。」
俺「どうされたのですか?」
宰相「ネクトン派の神殿が我々を裏切り、帝国軍を城内に招き入れた。」
エストリア「おそらく、この前、ルナリスが報告していたシサム将軍配下の部隊・・ね。」
宰相「ネクトン派の神殿と共謀して、国境から城門まで素通りしたらしい。
途中の警備兵は全てネクトン派に抑えられていたようだ。我々には、何の報告も無かった。」
俺「わかりました。帝国には、シサム将軍の暴走について報告しておきます。
完全に和平協定違反ですよね。」
宰相「それはありがたいが。だが、事態は、それ以上になっている。
既にネクトン派と侵入した帝国兵が王都内を制圧しつつある。
このままでは、魔王国全体が彼らの支配下となるだろう。」
俺「そ、それは・・。」
宰相「それで、お願いがあるのだが、大至急、エミャル様を連れて、こちらに来て欲しい。」
俺「エミャル??」
エストリア「意味が分からないのですが・・。」
エストリアが小声で俺に「何かのワナじゃない?」
宰相「たのむ。大至急、魔王神殿まで、。」バチ
そのまま通信が切れた。長距離通信を行う余裕も無くなったのか、或は、なんらかの妨害か。
エストリア「危険そうね。しばらく様子を見て・・」
俺「俺は急いで向かうべきだと思う。宰相さんがワナのために通信を送ってくるとは思えない。」
エストリア「じゃぁ、なんで、エミャルなのよ?」
俺「知らん。」
エミャル「私にも理由は分かりません。
でも、ヒロタンさんが行くならいきます。置いてかれるのはイヤです。」
俺「ありがとう。エミャルに危険の無い範囲で行ってみるよ。
あと、長距離通信できる魔法要員が、もう一人、一緒に行ってくれると・・」
ロコナ「私ね。」
俺「良いのか?」
ロコナ「面白そうだわ。
少し、待って! 用意して来る。」
俺「あとは、サミアスかなぁ。」
サミアス「はい。ヒロタンさんが行くのであれば!」
ストリュ「あー、。4人までにしてくれ。急ぐのであれば、あれしかない。」
エストリア「ほんとに行く気なの? 危険すぎると思うわ。」
俺「悪いが行くよ。」
用意されたのは、羽のついた馬車だ。いや、むしろ、馬でひっぱるグライダーと言うべきか。
ストリュ「これは1台しかない特殊な馬車だ。フレームに使っている軽い金属がこの大陸には無い。
ヒロタンは御者が出来るようになったのだよな。」
どうでも良いけど、アルミじゃないか?どこで作ってるのだ?
俺「でも、この操縦は・・。」
ストリュ「こっちの棒で羽を動かす。他は同じ。」
操縦桿?
ストリュ「馬を宿場毎に換える事。それで、1日で魔王国まで行ける。
4人とも、この眼鏡をかけろ。」
ゴーグル?
ロコナ「用意できたわよ。」
俺「よし、すぐに出発する!」
4人で飛び出す!ほんとに飛んで・・。
エミャル「あ、、あわわわ。」
ロコナ「し、死ぬ、死ぬ!!」
上下左右に振られて、ほぼ、ジェットコースター! ある程度、操縦を覚えると、そこそこ安定して飛ぶようになったが・・。それでも、かなり不安定だ。
暗くなってからも、ロコナが瑠璃で周囲を照らして飛び続ける。
その日の夜遅くに魔王国の城門まできた。おそろしい速度だ。
城門には、トラクさんが陣取っていた。宰相さんに言われて待っていたらしい。
トラク「皆さんを魔王神殿まで、お連するようにとの宰相閣下の命令です。」
見渡すと、魔王国の市街からは、行く筋もの火の手が上がり、明らかに混乱状態だ。ここに突っ込むというのか?
俺「すまんが、危険なので、ここまでで。」
トラク「皆さんの安全は、私たち保障します。」
帰ろうとしたのだが、無理やり軍用と思われる鉄の装甲を施した馬車に押し込まれた。拉致に近いのじゃないか? トラクさん配下の部隊だと思うが、5台以上の馬車が先導して俺たちの乗った馬車が続く。横や後ろにも馬車が並走している。
小さい窓から見える魔王神殿が大きくなってきた時、突然、先頭を走っていた馬車が大きな爆発音と共に横転した。
トラク「帝国軍の使う火薬です。
ですが、もうあまり量は無いと思いますので、大丈夫かと、、。」
ちょっと、待て! 火薬はあるのかよ!
いや、無いとは聞いてなかったが・・。ヤバ過ぎるだろ!
俺「すまん。エストリアの言うように来るべきでは無かった。」
エミャル「私はヒロタンさんと一緒なら。それで、どうなっても、、。
連れて来て頂いて嬉しいですよ。」
ロコナ「い、いやよ。私は死にたく無いわ! おろして!! 帰して!!」
サミアス「困りましたね。ぼくひとりなら、なんとかなりますが・・。」
トラク「ご安心ください。この馬車の前に4台います。
火薬を使われたとしても、吹き飛ぶのは、そちらが先です。」
爆発はそれだけで、なんとか、魔王神殿の近くまで来たが・・。しかし、魔王神殿の周りは帝国軍がバリケードを築いていた。多くの帝国兵が魔王神殿を包囲している。
まだ、戦闘中という事は陥落している・・わけでは無いようだが。
馬車は、バリケードの少し手前で止まり、
トラク「すみません。ここからは剣の戦いです。
私の側を離れないでください。」
包囲されている魔王神殿自体も、あちこちが破壊され、そこを何かでふさいでいる状態だ。ここに突っ込んで意味があるのか?
トラク「みなさんの安全は、命にかえても私たちが守ります。どうか、魔王神殿まで、お越しください。」
トラクさんの指示で鉄の塊のような馬車が1台、猛スピードで帝国兵が作るバリケードに突っ込む。馬車はバリケードにぶつかり、大きくはねて横転したがバリケードに隙間が出来た。トラクさんたちが剣を抜いて、その隙間に突撃する。後ろから俺たちも続く。
馬車の突撃にひるんでいた帝国兵たちも、トラクさんたちの突撃を見て剣を抜き、白兵戦となった。
先頭に立って突っ込んで行くトラクさんの本気の剣は明らかに異常だ。普段の印象とは全く違う鬼神のような姿で、近づく敵を切り裂いていく。トラクさんの剣の一振りで敵兵の血肉が花びらのように舞い散る。敵兵の鎧が紙にしか見えない。ある意味ではキレイだが、、、それが人間であった物だと思うと、、吐きそう。
同時に、トラクさんの部下たちが回りを固めて、俺たちを有無を言わせずに魔王神殿に導く。これはもう、悪魔に連れ去れているのと同じだろう。地獄行きだ。
ようやく、たどりついた魔王神殿の傷んだ鉄の扉を叩いてトラクさんが叫ぶと、それが、わずかに開いた。その隙間から、いっきに中に入り、俺たちが入ると同時に扉が閉じられる。
魔王神殿の中も悲惨な状況だった。破られそうになる扉をかろうじて防いでいるが、既に死傷した兵士ばかりで元気な兵は少ない。この状態では陥落まで、それほど時間はかからないだろう。
こんな所に俺たちが来て、なんの意味があるのだ?
魔王神殿の奥は、それでも静かで、そこに魔王様が・・倒れていた。傍らに宰相さんが・・
宰相「無理だったのです。ミシャ様の体で魔王は。
どちらにしろ無理だったのです。
もともと、体の弱い方でしたから。2回の魔力行使で・・。」
それまで、俺に引っ張られて、かろうじて付いて来ていたエミャルが駆け出した。
エミャル「ミシャ、ミシャなの!?」
エミャルが魔王のミシャ様に駆け寄って、抱き着くようにしながら、
俺「どういう事だ?」
宰相「お二人は姉妹です。」
エミャル「生きてたの! しっかりして、ミシャ!」
ミシャ「エミャル姉ちゃん・・。エミャル姉ちゃんこそ、生きて・・。」
宰相「申しわけありません。本当に申しわけありません。
ミシャ様の代わりの魔王様が居ないと我々は全滅します。
エミャル様に、。お願いですから・・。」
魔王って、魔法で人を殺せるとか言う・・。
俺「つまり、エミャルに魔王になれと・・。」
宰相「はい。」
俺「・・・。残念だがエミャルも、そんなに強く無い。
そもそも、心が弱いエミャルに、どうして、そんな事が出来るのだ?」
宰相「ネクトン派の陰謀で、この国の魔王様の血筋は根絶やしになっています。
お二人以外に、残っていません。
このままでは魔王国は滅亡します。」
俺「そんな事は知らん! エミャルが大事だ!
引き返すぞ! 」
宰相「・・。」
宰相「分かりました。 やむを得ません。
でも、ひとつだけ、お願いを。
ミシャ様を一緒に連れていって下さい」
宰相さんが、トラクに向かって。
宰相「トラク、最後の命令です。
皆さんとミシャ様を魔王国から脱失させてください。」
トラク「しかし、それでは、この国は・・。」
宰相「命令と言いました。」
トラク「・・。了解です!」
ミシャ「私は、、。私は残ります。まだ、もう一回ぐらい・・は。」
宰相「無理です。止めてください。
トラク、何をしているのですか!時間がありません。
ミシャ様を連れて、行ってください。」
エミャル「ミシャ! 逃げましょう! こんな所にいなくても、、。」
ミシャ「ありがとう。エミャル姉さん。でも私は、ここで。」
トラクは了解したと言いながら、ミシャ様に近寄らない。
何をやってるのだ? 無理にでも!
俺「あー、もういいから、行くぞ。」
めんどくさいから、俺がミシャ様を抱えて連れて行こうとすると、何処にそんな力が残っていたのか突き飛ばされた。そして、同時に俺の体に電撃が走る。
ミシャ様が瑠璃を付けた棒を構えて
ミシャ「私に触れないでください。魔王である私の意思に逆らう事は許しません。
私は残ります。」
一瞬で、回りの空気が氷りつく。この子が圧倒的な暴力装置を持っていると言う事の意味を初めて感じた。おまけに強い心を持っている。それが魔王の条件なのだろうか。
どうすれば良いのだ?
エミャルを抱えて、逃げるぐらいしか・・。でも、エミャルが泣いている。そして
「ミシャは・・、ミシャは、そんなに強い子じゃないでしょ! おかしいよ! こんなの!」
ミシャ「いいえ、わたしは、。」
エミャル「分かった。私が魔王になれば良いのね。」
俺「いや、だから、無理・・。」
エミャル「どうしてなの? ミシャだって弱かったのよ? 」
宰相「申しわけありません。確かにミシャ様も無理・・だったと思います。でも・・」
ミシャ「違います! 私は!」
宰相「神官長!
神官長は、どこに?」
神官長「わしなら、ここじゃ。
ふむ。ミシャ様の姉ぎみとな。 ささ、こちらへ。」
俺「だから、無理!」
捕まえようとする俺の手をすり抜けて、エミャルは神官長に従い、さらに奥へ。
神殿の一番奥に、大瑠璃があった。しかも、ほんとに特大だ。
帝国や、セクタでは見た事が無い大瑠璃。色も違う。これは何なんだ?
そして、エミャルが祭壇のような所に座らされる。
いつの間にか、やって来たロコナが・・
ロコナ「すごい! こんな大瑠璃は見た事が無いわ。
出力も大きいのかしら?」
いや、おまえは来なくて良いだろう。さっきまで死にたくないと騒いでたじゃないか!?
なんで、こんな所まで来てるのだ?
神官長「まあ、そのあたりの神殿の大瑠璃の2倍はあるな。」
この爺さんは、なに自慢してるの?
神官長「それでは魔王洗礼の儀式を開始するぞ。」
エミャルの全身が光に包まれる。
そして、、。いきなり苦しみだした!
俺「おい! あれで大丈夫なのか?」
神官長「ミシャ様の時もそうだったが、きついじゃろう。
成人でも心が耐えられずに死ぬ事がある。」
相当きびしい表情だ。ヤバイなんてものじゃない。
俺「冗談じゃない。エミャルにできるわけが無い!すぐに中止しろよ!」
神官長「無理じゃ。この儀式は止める事はできない。加速しかできない。」
思わずエミャルに駆け寄ったが、光の壁に阻まれてエミャルに届かない。何も無いようでいて、宝石のように固い壁がある。
俺が駆け寄ったのを見て、エミャルも内側から手をのばすが・・。
ロコナ「そうね。これは加速しかないわ。
そして、もっと加速すれば、領域が広がって,あそこにいるヒロタンを取り込めるのじゃなくて?
その方が面白いわよ。」
神官長「何を言っておる。現状で、定格出力一杯だぞ。」
ロコナ「大瑠璃は短時間なら定格の4倍出力ぐらい平気よ。」
神官長「なんだと! そんな事をして、大瑠璃が壊れたら破門されるぞ!」
ロコナ「勇者召喚では大瑠璃を定格の10倍出力まで使ったわ。」
へ? あれ、研究所で借りたって言ってたよね? 借り物で、それをやったのか?
神官長「そ、そうなのか? どうやるんだ?」
ロコナ「ここに補助回路があるでしょ。これをこっちに繋げば倍になるわ。ほら!」
神官長「おぉ。凄いな。じゃぁ、こっちでも行けるのか?」
ロコナ「分かってるじゃない! そうよ、ここを繋ぐでしょ。」
おまえら何をやってるのだ?
光がぐわっと広がり、俺を飲みこんだ。
おかげで、エミャルを抱き上げる事ができた。が、俺も苦しい。
これはむちゃくちゃだ。頭が沸騰しそう。俺も死ぬ!?
神官長「もしかして、この出力なら、この大瑠璃の自我回路を稼働できるのじゃないか?」
ロコナ「何それ! そんな物があるなら動かすべきよ!自立動作で出力が安定するはずよ。」
神官長「この出力を、こっちに引っ張れば行けるじゃろ。」
ロコナ「良いわね。稼働させましょう!」
何をやってるんだ。こっちは死にそうなんだぞ!ってか死ぬぞ!
エミャルが、苦痛に歪んだ顔で俺の唇を指して・・。
あー、そういうのあったね。前に、、。それで、笑ってくれたのだっけ。
エストリアに禁止されてるけど、今回も、しょうがないよな。死にそうだし。
エミャルを抱きかかえてキスをした。エミャルも手を背中に回してくれる。
かろうじて、エミャルの顔に笑みが・・。
うん、それで、十分に嬉しいかも。
頭の中で声がした「この子じゃ耐えられない。」
だれ?
俺「じゃぁ、止めろよ!」
声「大丈夫だ。結婚相手も含む事にしてある。」
俺「え?」
声「この子が、おまえを認める限り・・」
最後に死にそうな激痛が走って・・。
光が消えた。何がおきたのだ?
エミャルも俺も無事なようだが・・。
神官長「成功だ!第二の魔王様を作る事に成功したぞ。」
何かの声が、エミャルは耐えれない・・と言っていたが、成功したの?
ロコナが傍らにあった水晶球を俺にあてている。何故、俺?
ロコナのこの動作って、思い出したくもない過去を思させるぞ・・
ロコナ「成功ね! 剣士で、聖者で、、、魔王よ!」
え!?
ロコナ「職業って、いくらでも足せるのね。興味深いわ。」
エミャル「ごめんなさい。声が聞こえて。ヒロタンさんを・・。」
最後、なんて言ったの?
魔王のミシャ様が宰相に支えられて、傍らにやってきた。
なんとか祭壇から立ち上がったエミャルが、ミシャに寄り添い何か言っている。
ミシャが魔法具を俺に差し出して・・
ミシャ「これを、」
棒の先に瑠璃のついた魔法具だよね。俺にどうしろと?
ミシャ「2階の窓から表の敵に・・。構成されているので、振るだけです。
お義兄様なら出来ます! 急いでください!」
誰がお義兄様?
訳が分からないが、2階に上がって窓から、包囲しているシサム将軍配下の帝国兵に向けて軽く振ってみた。何も無い空から無数の細い雷が降り注ぎ、それに打たれた帝国兵が転げまわる。そのまま、大半が動かなくなった。死んだの?俺が殺したの?
宰相さんがミシャを抱きかかえて上がってきた。
ミシャ「大丈夫です。気を失うだけです。」
そりゃ、良かった! じゃぁ、どんどん行こう!振るたびに、ぐわっと疲れるけど、なんとかなる。
って事で、5分で魔王神殿を包囲していた帝国兵を全滅させた。俺つえーじゃん!疲労感で倒れそうだけど・・。
俺「敵の司令部は何処でしょう?」
トラク「ネクトン派の中央神殿だと思います。」
ライナさんたちが、倒れた帝国兵を捕えている。
トラク「私の部隊が神殿までの道を確保します。第二魔王様は、付いて来てください。」
魔王神殿を落とすために大半の兵力をつぎ込んでいたようだ。途中にはそれほど敵はいなかった。ネクトン派の神殿に着いたところで、魔法の棒を一振りするだけの簡単なお仕事である! でもその一振りで死ぬほど疲れた・・。エミャルと離れると、なおさら疲れるのか?トラクさんが支えてくれなかったら、その場で倒れてる。もうダメ。
見た限り、ここにシサム将軍はいないようだった。そもそも、ここに来ているかどうかも分からない。
司令部が壊滅した事で、残っていた帝国兵は撤退を始めた。そういう指示だったのだろう。
残されたのはネクトン派の僧侶たちで、彼らだけでは、あまり戦えない。次々と投降していく。
俺自身は疲れて死にそうなので、以前の迎賓館風の屋敷を借りて、その2階の寝室に、ばったりと倒れこむ。すでに明け方に近いだろう。
翌日、起きて顔を洗って下に降りて行くと、既に広間に宰相さんたちが来ていて
宰相「ありがとうございます。第二魔王様。ほんとうに助かりました。」
俺「ミシャ様は大丈夫ですか?」
宰相「はい。おかげさまで、昨日よりはだいぶ元気になっています。」
ミシャ「大丈夫です。ありがとうございました。」
俺「いらしたのですね。良かったです。」
ミシャ「エミュル姉さまと、ヒロタンお義兄様に救われました。」
お義兄様は止めて。
宰相「ミシャ様だと、あの魔法具を2回使うと倒れてしまいます。」
うん。無理無いよ。あれは、結構、厳しい。俺でも5回ぐらいかな。
メイドさんたちが出してくれた朝食・・時間的には昼食かな? それを食べていると、皆も集まって来た。
神官長「ヒロタン殿。あいや、第二魔王様。
一応、言っておくが、血筋で無い者の魔王洗礼は不安定に思える。
たぶん、エミャル様の代理という意味合いが強いじゃろう。
お主の魔王職は、エミャル様次第じゃ。」
そういえば、良く分からん声もそんな事を言っていた。
離婚したら終わりって事か? 結婚して無いけど・・
ロコナ「今朝からヒロタンに通信の依頼が入ってるよ。急ぎみたい・・」
俺「分かった。たぶん、俺たちの安否を気にしているのだろう。ここで出来るか?」
エミュル「私とロコナ先輩で・・、出来ます。」
俺「じゃあ、ここで、すぐに。」
エストリア「やっと、繋がった?」
俺「おぉ! いろいろあったが、皆、無事だぞ!
ここの動乱も収まりつつある!」
エストリア「良かったわ。
でも、帝国がたいへんよ!
ルナリスからの通信だと、ノカナ将軍配下の部隊が帝国の要衝の周囲に戦闘装備で展開してるの。
反乱の可能性があるわ。」




