閲兵式と、リナル再び
魔王国からセクタへの旅は順調だった。途中、暇だったので、ロコナに。
俺「瑠璃の通信って、傍受みたいのは無理かな?勝手に他人の通信の内容を受信するとか。」
ロコナ「軍で使ってる逆探があるでしょ。あれを改良すれば受信自体は可能よ。ただし、内容を読み取るのは難しいと思うわ。相手に合わせて調整しないとね。」
俺「調整?」
ロコナ「通信の相手に応じて、構成を変える必要があるのよ。だから、それが出来る人じゃないと無理ね。」
俺「ルナリスなら出来る?」
ロコナ「あー。ルナなら可能かもしれない。」
俺「分かった。すまんが、セクタに着いたら作ってくれ。後で、ルナリスに送って試してもらうわ。」
ロコナ「まあ、そのぐらいなら、作っても良いけど・・。
その代わり、セクタに私専用の研究室を作って。」
俺「城には空き部屋があると思うから大丈夫だと思うが。城を燃やすなよ。」
ロコナ「失敗しなければ大丈夫よ。」
・・・失敗しそう・・な気がする。不安だ。
途中の宿場で1泊して2日目の夜には、出発した時とは反対側からセクタに到着。
俺が旅をしている間に、兵士の募集・部隊の新設、そして、復興のための組織等、着々と進んでいた。エストリアとストリュ、以前からのスタッフが頑張ってくれている。復興資金を持って来た事で、港の復興も軌道にのるだろう。
戻った日の翌日は、久しぶり・・というか、ここに来て初めて何も無い、ゆったりした日を過ごせた。皆は忙しそうなので、むしろ、邪魔しないように。
そして、夜、晴れていたので、やっておこうと思っていた星空の観測? 肉眼で見ても北斗七星があるし、意外と地球的。北極星も見つけたが・・、時間がたつと動く・・。まあ、それはそうだろう。星座が地球的なら、銀河系レベルでは地球に近いという事だ。別の宇宙というわけでは無いらしい。衛星や惑星を見つけようとベランダでゴソゴソやっていると、隣の部屋からエストリアが出てきた。ベランダは繋がっているからな。
エストリア「何、してるの?」
俺「天体観測!」
エストリア「暦なら帝国の技官が作るでしょ。」
俺「へ? そっか。その技官に教わりたいな。」
もしかして、北極星の代わりの星とかを、知ってるかも。
俺「それにしても、ここには月が無いよね。」
エストリア「月? 神話に出てくる夜の神様?」
そういう言語上のすり替えがおきるわけか。
俺「俺の世界では、星よりはるかに大きな夜の天体として実在している。
見かけ上の大きさなら太陽と同じぐらい。」
エストリア「面白いわね。神話では昼の神は太陽の女神。夜の神様は月の男神なの。
実際に太陽と対になる天体がある・・なんて不思議だわ。
でも、天体軌道上、夜だけというのはありえない。
そんなのは神話だけだと思うけど、、あなたは神話の世界の人?」
俺「正確に言うと昼間はあまり良く見えないだけで、。
まあ、いいや、面倒くさいから神話で良いよ。」
エストリア「そんなに大きな天体自体、ありえないと思うけど。ほんとに不思議な世界ね。」
そう言われると、月のように大きな衛星というのは異常だよな。
俺「そういや、俺の留守中、エミャルは大丈夫だった?」
エストリア「いきなりエミャルになるのね。」
俺「いや、聞いて無かったから。」
エストリア「・・。まじめに仕事をしてるわよ。もともと、そういう性格だったみたい。
学校では優秀だったみたいだし、見た目はともかく、とても良い子だわ。」
そうなのかな?無理してないと良いけど。
俺「見た目も含めて良い子だよ。」
エストリア「・・。本当にエミャルが可愛く見えてるわけ?」
俺「そう言ってるが?」
なんだか、エストリアに見つめられてしまった。ちょっと焦る・・。
そして、ふっとため息をもらしてから、
エストリア「今後、エミャルとのキスは禁止ね。」
俺「へ?」
エストリア「元気になったから、必要無いでしょ。」
俺「わ、わかった。」
いや、分かる必要は無いだろ、俺! なにが分かるんだ!
う~ん。エストリアに何か魔法的な脳操作をされているかもしれない。恐ろしいヤツだ。
翌日、ストリュが閲兵式をやるというので呼ばれた。一応、俺は、ここでの最高位だからな。
城の中庭に、200人あまりの新兵?が集められ、一段高い所に俺を挟んでストリュとミナス。
ストリュ「分かってると思うがヒロタン様は魔獣討伐の勇者であり、ここの領主だ。
貴様らが命を預けるに値する人間である事は、おれが保証する。」
で、俺に何を言えと・・。
俺 「良く集まってくれた。皆に戦ってもらう事になるかもしれないが、俺は国のためとか皇帝のためと言うつもりは無い。領民のためという事で、」
俺が話し始めた時、5名のほど兵士が叫び出した。
兵士 「帝国の犬に鉄槌を! 国王陛下の敵! 死ね!!」
そしてこちらに向かってつっこんで来る。ちょっとやばくないか?
ミナスとストリュが俺の前に立ちふさがった。
だが、途中まで来たところで、周りにいた兵士に抑え込まれた。
ストリュが小さい声で「すまんな。ヒロタンに来てもらったのは、あーいうのを炙り出すためだったのだ。」
ミナスも小さい声で「思ったりより少数で良かったよ。」
俺はおとりだったのか!?
酷いな。ちょっと、切れるぞ!
俺 「おかしなヤツがいるみたいだが、言っておくが俺は国のためとか、王のためとかいう軍隊が嫌いだ!
もし、そういうつもりで集まってるヤツがいるなら、今すぐ、ここから出て行ってくれ。
旧王国でも、帝国でも、全てだ!
さきほど、言いかけたのだが、領民のために戦うというつもりのヤツだけ残ってくれ。
俺はそういう命令を出すし、もし、そういう命令を出さなければ、ストリュが俺を切るだろう。
だから、それに命をかけるつもりのヤツだけ残るように。」
兵士がざわついている。ここの価値観じゃないのは、分かっている。
せっかく集めた兵士が減ったところで、俺をおとりにした罰である!
ストリュは少し笑っているが、ミナスはあっけにとられていた。
ついでに閲兵式の後、この前の旅で気になっていた事を聞いてみた。
俺「この前の旅の途中で猟師が弓矢を持ってるのを見たのだが。軍では使わないのか?」
ストリュ「使うぞ。戦車戦で馬を止めるのに使う。
ここは、まだ戦車戦の訓練をして無いから使って無いが、そのうち・・」
俺「馬? 人は?」
ストリュ「人? 何を言ってるのだ?」
俺「弓矢で人を攻撃しないのか?」
ストリュ「やるわけ無いだろ。」
なんかの国際条約とか?
俺「そういう、きまりって事?」
ストリュ「洗礼を受けた人間を弓矢で攻撃しても、当たるわけないだろ。
子供だけ狙う気か?」
俺「へ?」
どういう世界だ?
もしかして銃が無いのも、それでか?
いろいろと疲れたので、城主の部屋に戻ってぐったり。
と、ドアがノックさえた。
俺 「だれ?」
「新しく、エストリア様に雇って頂きました。今日から領主様の、身の回りのお世話をさせて頂きます。」
ふ~ん。メイド的な感じ?エストリアが雇ったのなら、大丈夫かな?
扉を開けると・・
リナル「来ましたよ!」
俺 「おまえ・・かよ!」
以前、魔獣討伐から戻った時に宿屋にいた娘だ!
リナル「ここに来るのに苦労したんですよ!?」
俺 「しかし、どうやったんだ?!エストリアがおまえなんか・・」
リナル「こう、お化粧をやり直してですね。」
部屋の隅で、なにかごそごそやっている。向き直ると・・まったく違う顔?
別人? 清楚な感じだが。
リナル「エストリア様も、私の、この優雅でおしとやかな立ち居振る舞いに、ご満足頂けたのかと。」
俺 「どういう魔法だ?」
リナル「ん~・・・。営業かしら?」
なんだよそれ!
いやいや、どっちにしろ無しだ!
俺 「分かった。エストリアに、おまえの真実の姿を言ってクビにしてもらう!」
リナル「そんな・・。せっかく、ここまで来たのに。」
俺 「来なくて良い。」
リナル「じゃ、じゃぁ。営業モードで、しばらく行きますから!?」
俺 「素を知ってると、そっちもキモイ!」
リナル「ん~・・。じゃぁ、じゃぁ、。」
どうするつもりだ?
リナル「私を雇ってくれたら、。エミャルの知られざる過去!? を、お話しますよ!
興味無いですか?」
俺 「何か知ってるのか?」
リナル「え~と。噂では、驚くべき事に旧王室の・・。」
爺さんから聞いた話だろうな。
俺 「要らん!」
リナル「じゃ、、じゃぁ、・・
エミャルの妹の事は!?」
ん? それは知らんが・・?
まあ、爺さんに聞けば良いだけだろ。
リナル「お城から逃げた後、少し一緒だったんですよ。彼女、体が弱かったから、たいへんで・・。」
俺 「逃げた? 帝国軍に殺されたわけじゃないのか?」
リナルがにっこり笑って・・
リナル「はーい。そこから先は、私を置いてくれる約束が先ですよ!!!」
俺 「まいったなぁ。」
リナル「どうします???」
俺 「そもそも、なんで、そんなに俺にこだわってるのだ?
仕事・・で近づいても、何も無いぞ。」
リナル「ん~。まあ、取りあえずは、その仕事が必要かな。
ちょっと、家庭の事情がありまして。」
俺 「良く分からんが幼い頃はエミャルと同じ学校に行ってたのだろ?
それって多少は裕福な家だとおもうが。」
リナル「なかなかの推理ですねぇ。まあ、そうなんですが・・。
前の戦争で、うちだけじゃなく、お城の周りは焼き払われてしまって。」
俺 「もしかして、あれか? 家を焼いた帝国に復讐を誓っていて、帝国から派遣された領主である俺に何かこう・・」
さっき、襲ってきた兵士がいたしな。
リナル「ぜんぜん、まったく、そんな事は考えてませんよ。町を焼き払ったのは王国の兵士ですし。」
俺 「どういう事?」
リナル「城の防衛のために、攻めて来た帝国軍を町ごと焼き払ったのです。帝国軍の被害は、あまり無かったみたいですけど、町は壊滅しました。」
俺 「酷いな。」
そう言われると、ここの城下町は、空き地が多い。
リナル「今は、弟と二人で、ぎりぎりの生活なんです。」
俺 「う~ん。それはたいへんだな。
分かった。ここで他の仕事についてもらうって事でどうだ?」
リナル「他の仕事?」
俺 「君は教養があって、、その営業?が上手い。
これから港の復興をやらないといけないのだが、多くの商人が既に逃げ出してしまっている。」
リナル「ん?」
俺 「エストリアと相談しているのだが、貿易の一部を公社とか、専売とかで、城側で経営しようと思っているのだ。
たぶん、働き口があると思うぞ」
リナル「それはありがたいですね。
え~と、でも、あの。」
俺 「なんだ? 仕事があって収入があれば良いのだろ?」
リナル「取りあえずは、仕事なんですが。将来はヒロタンさんの嫁・・。」
俺 「それは止めろ!」
また、ごそごそやってる。化粧し直してるのか?
リナル「あ、た、し、じゃ、ダメですか? キス・・して良いですよ。」
俺 「ダメだ!完全にダメだ!」
この子の考えてる魅力の基準が、まったく分からない。営業モードのが、まだマシだ。
そもそも、この前、見た目以外でって言って無かったか?
リナル「しかたないですね。とりあえず、その仕事をやりながら、、。」
俺 「やりながら、なんだ?」
リナル「いえ、こちらの事です。」
大丈夫かなぁ。




