新卒と中途採用
金策のために帝都へ出発した。俺とルナリスとクラムとサミアス、あと護衛の兵士10名ほどで。
セクタから帝都までの1泊二日の旅は、平穏無事に終わった。道中、する事も無いので、御者をしている兵士の隣に座って、御者のやり方を教わる。なかなか、面白い。仮免許ぐらいに・・は無理かな。
御者をしてみて、改めて気づいたのだが、この世界の物理的な特性が昔の世界と違う気がする。人間が軽く飛び跳ねているのは、魔法回路のせいだと思っていたのだが、馬車に魔法回路は無いだろう。でも、恐ろしく飛び跳ねるのだ。それでいて、着地も軽くこなす。一応、簡単なサスペンションが付いてるのと、ゴムっぽいタイヤのクッションもあるが・・。それ以上に、ちょっとした段差で5メートル以上、空中に留まっているのはおかしい。そう思ってみると鳥が、やけに太っている。あんなものが飛ぶのか?というぐらい、太った鳥が飛んでいる。
街道は気のせいか帝都からセクタに向かう馬車が多い。我々がセクタに向かった時とは逆だ。
帝都での拠点は、以前と同じ屋敷。
俺の肩書は、セクタ領主であると共に、貴族議員でもあるから屋敷は残っている。執事さんも。
まずは、長距離通信のための魔法兵・魔法使いを探さないといけない。そうしないとセクタと連絡が取り難い。
実は、郵便局というか電報局みたいな所から通信を送る事はできるのだけど、面倒だし秘密が保てない。
一応、当てはある。魔法士官学校のタジャラン学校長さん。エミャルを引き取った時に協力してくれると言っていたし、学校の卒業生を紹介してもらえれば良い、、のだが・・。
連絡を取ると、すぐに会ってくれるそうなので、タジャランさんのお屋敷に俺とルナリスで向かった。
馬車の御者は、俺、、では、まだ無理なので、。なんと執事さんがやってくれた。そういう事もできるのね。地味に役に立つ人だわ。これで戦闘までやる、とか・・、は無いか。
そして、タジャラン学校長がルナリスを見て。
タジャラン「おや、ルナリス君では無いか!?」
ルナリス「お久しぶりです。」
タジャラン「君は確か・・。」
ルナリス「いろいろあったのですが。今は、ヒロタンさんの所におります。」
タジャラン「いや、無事なようで何よりだ。
ヒロタン殿。彼女を大切にしてくれたまえ。彼女は学園でもきっての秀才だったのだよ。」
俺「はい。そのつもりです。
・・・。それで、卒業生を、ご紹介頂く件ですが・・」
タジャラン「うむ。ヒロタン殿には世話になった故、できれば優秀な卒業生を紹介したい所だが・・。」
俺「ぜひ、お願いします。」
タジャラン「私どもの学校は基本的に軍の付属みたいな物でな。卒業生は、卒業後、ほぼ全員、軍に所属する。そして、その軍から優秀な卒業生を引き抜くような事はできかねるのだ。あくまで軍に協力すると言う趣旨の学校でな。」
俺「と、言うことは難しい・・・のですか?」
タジャラン「いや、実は軍に採用を拒否された生徒がいてな。」
俺「はぁ」
タジャラン「毎度、押し付けるようで悪いが、引き取ってもらえると助かる。」
また、わけのわからん生徒?
俺「どんな生徒ですか?」
タジャラン「知っての通り、帝国の人間は7才で洗礼を受け、その時に職業を選ぶ。
ところが、彼女は親御さんが英才教育とか言って3才で洗礼を受けさせ、早くから魔法学の勉強をさせていたのだ。
今、6才と1節だが、うちの学校で、これ以上教える事は無いと言って良い。
まだ、卒業には早いのだが全教科を終えている。」
つまり、ここでの1年は元の世界の2年ぐらいだから、元の世界だと12才?!
子供じゃないか!
タジャラン「行軍に耐えられないからといって、軍は採用を断ってきた。」
あたりまえだ!
ルナリス「それって、ミューちゃんの事・・ですか?」
タジャラン「あー。その通り。ミューリラル君だよ。そうだな、君の在学中に入学した子だ。
ヒロタン殿の所でしばらく預かってもらって、相応の年齢になれば軍の方で採用してもらえると思うのだが。」
俺「ルナリスは知ってるのか?」
ルナリス「良く知りませんが入学時に話題になっていました。入学年はエミャルと同じだと思います。」
タジャラン「あの頃の学校長は、妙な子でも生徒を入学させてしまってな。
おかげで、私が苦労している。
まあ、いずれも成績は良いし、悪い子では無いのだけどね。」
こっちは、今日にも長距離通信をしたいのだから、多少、おかしな子でもしょうがない・・かな。
俺「他にいないのでしたら・・。 今は、どちらに? 寮・・ですか?」
タジャラン「いや、実は懇意にしてもらってる研究所の方に面接に言ってる。
たぶん、ダメだと思うのだが、一応・・。」
俺「ん? そっちで採用されたら、それで良いのでは?」
タジャラン「そうなんだが、、無理だと思うぞ。どっちにしろ、迎えに行こうと思っていた所だ。
一緒に行ってみようではないか。」
俺「かまいませんが、、。研究所って、もしかして・・。」
タジャラン校長に案内されて来たのは・・やっぱりここだった! 俺が、この世界に召喚された所だ!
この建物は微妙に近代的なビルっぽい。そして、ふと見ると、外壁に以前は無かった焦げ跡がある。何かあったのかな?
以前も、一度お邪魔した研究所の応接室。左大臣と初めて会ったのがここだった。
タジャラン「沢山でおしかけて悪いね。」
ギスコナン「なんと、ヒロタンでは無いか!久しぶりじゃな。」
タジャラン「知り合いだったのか?」
俺「あの時は、、世話になったというか。」
ギスコナン「なんだか、エラくなったと聞いたぞ。おまえが領主様か!?」
何処から情報?
タジャラン「それで、ミューリラル君はどうかね?
もし、キミの所で採用してもらえないようなら、このヒロタン殿の所で働いてもらうかと思ってな。」
ギスコナン「それなんだが・・。
そもそも、なんで、最初に年齢を言ってくれなかったのだ?」
タジャラン「おまえの所の仕事に年齢は関係無いだろう!?彼女は十分な魔法技術を持っておるぞ。」
ギスコナン「あのなぁ! あんなチビじゃ、その辺の棚にも手が届かんぞ!
本人は6才と1節と言ってるが、ほんとは5才にもなってないだろ?」
タジャラン「その年齢は真実なんだが・・。あれだ! すぐに伸びるさ!」
ギスコナン「とにかく、うちは幼稚園じゃない!」
以前の世界で12才相当だから幼稚園は言い過ぎだろ。
タジャラン「やむを得ないか。まあ、そのためにヒロタン殿に来てもらったのだしな。」
ギスコナン「ヒロタンは領主になったので魔法を使える人間を募集している、、という事かな?」
俺「まあ、そんなところです。」
ギスコナン「なるほど。それも何かの縁であろう。」
俺「そうですね。ですので、ミューリラル君を・・。」
ギスコナン「うちのロコナを引き取ってくれ!」
俺「はい??」
ロコナって、あの怪しい眼鏡っ子?
ルナリス「まさか、あのロコナ先輩?!」
ギスコナン「おぉ。そちらのお嬢さんもご存知か。であれば、話しは早い。
実は、ちょっとした問題があって、今、彼女を停職処分にしている。
だが、それでも反省する様子が無くてなぁ。」
俺「いやでも・・。」
ギスコナン「ちょっとまて。今日は、来てると思うので、探して来る。」
ギスコナン所長が、行ってしまった。
俺「どういう話・・でしょうね。」
タジャラン「どういう話でも、ミューリラル君は引き取ってもらうよ。それは決定だからな。
しかし、ロコナ君かぁ・・。」
まだ、会ってもいないけど決定?
ギスコナン所長が戻ってきて、
ギスコナン「ミューリラル君には、ヒロタンの馬車へ行くように言っておいたぞ。」
タジャラン「あー。それでOKだ。」
俺 「あのー。そのミューリラル君も一応、面接とか・・。」
ほどなく、ロコナが来た。
ギスコナン「お。来たか。」
ロコナ「呼びました?」
ギスコナン「呼んだ呼んだ!」
ロコナ「停職処分を解除して頂けるのですか?」
ギスコナン「しないよ! おまえのおかげで、研究所がまるごと焼ける所だったのだぞ!」
ロコナ「ですから、失敗を恐れて実験なんかできませんって!」
ギスコナン「・・。」
ギスコナン「このヒロタンは知ってるな?」
ロコナ「ん? あっ。改造した人! また、なにか改造すれば良いのですか?」
ギスコナン「するなよ!
おまえには、この研究所を辞めてもらう! そして、このヒロタンの所で働いてもらう!」
ロコナ「いやですよ。実験設備も無いところで・・。」
ギスコナン「ここの実験設備を燃やしたのは、おまえだろ!」
なんだか目まいがする。
ルナリス「ロコナ先輩、お久しぶりです。」
ロコナ「お!ルナでは無いか。何故、ここに?」
ルナリス「ヒロタンさんの所でお世話になってます。
今のヒロタンさんは、セクタの領主でもあるのですよ。」
ロコナ「ふ~ん。領主ねぇ。それって、魔法器具もそろってるのか?」
ルナリス「え~と、セクタに戻れば、そろってますが・・。」
ロコナ「端末は?ASR33型はあるか?」
ルナリス「ありますね。」
ロコナ「魔法分解用の翡翠は? 洗礼干渉装置は?」
ルナリス「ありますけど・・。」
ルナリスの聞かれると正直に答えてしまうくせは相変わらずだな。
ロコナ「行く!」
ルナリス「来なくて良いですよ。」
ロコナ「いや、行く!」
ギスコナン「よし、行け!」
俺「あの~。」
ギスコナン「きみは、ロコナを勧誘に来たのだろう?」
俺「えっ?そんな話は少しもしてませんが!?」
ギスコナン「そんな事では、ミリア姫に復讐できないぞ!」
俺「それ、最近、やってませんし。」
ギスコナン「おまえは、タイトルを忘れたのか!?読者を裏切るのか?」
俺「今、それ、関係ありませんよね? だいたい悪いのはバカな作者でしょ!」
[安心しろ。バカ作者は、そろそろタイトルを変えてしまおうかと思っているところだ。]
ギスコナン「いいから、連れて行け! 必ず役に立つはずだ!」
俺「・・・。」
この人は、どうして、こんなに押しが強いのだろう・・。
馬車に戻ると、すでにチッコイのが座っていた。座ると足がとどかない・・ぐらい。
・・・ほんとに幼稚園だった!!!
ミューリラル「ついにドナドナされるのね。不幸だわ。」
俺「しないよ!」
ロコナ「何? このチビっ子?」
ミューリラル「チビ? だれがチビですって!?」
いや、おまえは十分にチビだぞ。
ミューリラル「眼鏡おばさんが、何を言ってるのかしら。」
ロコナ「おば・・!」
ルナリス「あの~。お二人とも、仲良くしてもらえないかしら・・。
でも、あの。ロコナ先輩、結局、来るのですか?」
ロコナ「研究所は停職処分中なのよ。あそこにいてもしょうがないわ。」
どうすんだよ。この二人!?




