御前試合
残念ながら陛下の様態は末期的だった。精製の甘い抗生物質に耐えられるとは思えない。
陛下「さあ。もう良いぞ。その薬を飲ませるが良い。」
俺「はい。万に一つの望みはあるかと思います。お気を確かに持って、耐えてください。」
皇帝陛下に抗生物質をのませた。その後、高熱で言葉もままならない状態に。
ミリアと俺は、ずっとつきそっていたが・・
翌朝 陛下の側で眠ってしまっていた二人に。
陛下「おぉ。仲が良いなぁ」
ミリア「違います!」
俺「陛下、ご気分は?」
陛下「あー。なんだか、ずいぶん楽になった。」
どういう事だろう?副作用に個人差があるのか?
俺「昨日頂いた指輪ですが。」
陛下「構わん。おまえにやった物だ。」
なんだか、高そうな指輪だが・・
ミリア「でも、良かったですわ。ほんとうに。 ヒロタン、あなたにはなんとお礼を言って良いか。」
俺「運が良かった・・と思います。後は陛下のお気持ちがまさったのか。
それで、今日の、御前試合は?」
ミリア「そうですね。一緒に参りましょう。」
馬車の中で・・
ミリア「ほんとうにエストリアとは、、、その、」
俺「深い関係ではありませんよ。ミリア姫は誤解されているだけです。」
ミリア「ならば、よろしくてよ。、、、。そうよね、あんな恐ろしい女なんか・・。」
怖いけど、やさしい所もあるよな。
御前試合の会場は、城の前の広場だった。観覧席も作られていて既にかなりの人だかり。ミリア姫と同じ豪華な馬車で俺が登場したため、それだけで歓声があがっている。
とても勇者っぽいぞ! ・・・ほんとは弱いけど・・。
エストリアが魔法剣を持ってきてくれた。そして
エストリア「なんで、ミリアと来るのよ! しかも、あの女と微妙に仲が良さそう・・」
俺「あれだ。人質だったから、ストックホルム症候群?」
エストリア「何を言ってるのか分からないけど、、、。
これが魔法剣よ。ルナリスが構成したの。
ふると眩しい光で、何も見えなくなるわ。それで、あなたのレベルの低さもばれない。
その状態で、トラクさんが、やられたふりをしてくれる手筈よ。
わかった?」
俺「あ~。やってみる。」
エストリア「あとね、右大臣さんがね。ルマリオを飛び入り参加させるのだって」
俺「はぁ?」
エストリア「そして、あなたはルマリオに負けるのよ。」
俺「・・」
エストリア「同じように魔法剣を使って、何も見えなくなった所で、今度はあなたが負ける。」
俺「いや、なんで、そんな事を?」
エストリア「簡単よ。ルマリオは右大臣の息子なの。要するに親ばかね。」
ルマリオって、あの、やたら派手でバカっぽい近衛兵だろ? あれが右大臣のぼっちゃん? あんなのに負けるのは、くやしいが、そういう筋書きならしょうがない。
貴族議員の選挙で俺に投票する条件がそれだったのだろう。親の七光りは偉大だな。
トラクの剣は派手さは無いが、すばらしい物に見えた。俺は、勇者っぽいだけの魔法剣。
トラク「 我こそは、魔王軍 四天王が一人、トラク大将軍! 」
そんな肩書だったの?
俺 「帝国 勇者 ヒロタンなり。いざ! 勝負!」
俺が剣を振りかぶってトラクめがけて打ちかかると、ほんとにもう、何も見えないほどの輝きが周囲を満たした。どうなってるのだ?
剣が光ってるというより、周りの空間が光ってる。ルナリスはすごい物を作るなぁ。
光が消えるとトラクが倒れていた。ご苦労様である。
歓声が上がる!
ミリア姫も正面の一番近い貴賓席で立ちあがって拍手している。そのミリア姫に向かって、深く一礼。
これで、いいのかなぁ?何も見えなかったと思うけど。
そこで、予定通りルマリオ君が登場!
ルマリオ「 帝国近衛師団のルマリオである! 勇者殿に、一手、お相手を願いたい!」
俺「よかろう! かかってこい!」
唐突すぎて違和感あるけど、これで、たぶん、予定通り。
ミリア姫「何? 何をやってるのかしら?」
再び、真っ白な世界。今度は、俺が倒れる。適当に、やられたポーズ!
光が消えると、ルマリオが勝どきを上げている。
要するに右大臣としては、息子のルマリオを目立たせたかったのだろう。いやむしろ、この派手なぼっちゃんだから、自分から目立ちたいと言ったのかもしれない。
目的はミリア姫の気を引く事かな?
ミリア姫「ヒロタンは大丈夫かしら? 見えなかったけど、きっと不意を突いたのでしょうね。
ルマリオは最低だわ。」
ルマリオ「あれ?」
良く分からんが、御前試合は終わったようだ。
トラクも俺も、やられたと言っても、傷ひとつない。適当に試合会場を抜け出し客席の裏で。
トラク「うまく行ったようですね。」
俺 「助かりました。」
トラク「私のこの国での仕事は、これで終わりになります。
明日には魔王国に出発します。いろいろ、お世話になりました。
サミアスさんによろしく、お伝えください。」
俺 「こちらこそ。」
御前試合の後、ミリア姫と療養施設に戻ると、皇帝陛下はだいぶ良くなっていた。どういう事だ?
おかげで人質としての俺は解放してもらえる事に。
あと2日分の薬だけを渡しておく。
ミリア「これで、お父様が公務に復帰して頂ければ・・。」
陛下 「いや、わしはしばらく休むぞ。」
ミリア「なぜです?」
陛下 「今回の件で分かったのは、わしが健在では困る人間がいるという事だ。その相手を見極めないと、同じ事の繰り返しよ。」
ミリア「そんな。」
俺 「陛下、確かに敵を見極めるには、その方がよろしいのかもしれません。
ですが、それだと、ミリア姫が危険かと。」
陛下 「そのための、おまえたちだ!」
俺 「俺たち? ですか?」
陛下 「まずはセクタの領地経営を成功させてみせよ。セクタほどの領地の領主となれば、帝国でも有数の実力者よ!」
俺 「成功?ですか?」
う~ん。いろいろ良く分からん。
作者のハーレム路線のせいか、ミリア姫も敵っぽくないし。これでいいのか?
屋敷に戻ると既にみんなはセクタへの赴任の準備中だった。馬車は一回り大きな4頭立ての物が購入されていたし、さらに帝国側で護衛まで用意してくれていた。
屋敷の庭は既に赴任のための隊列が組み上がりつつある。
執事さん以外の全員で赴任する!
俺 「陛下がセクタの領地経営で『成功』と言ってたが・・。領主ってたいへんなのか?」
エストリア「とにかく、行ってみる事ね!」
俺 「何か知ってるなら、先に言ってくれよ。」
エストリア「仲良さそうだしミリアに聞けば?」
俺 「いや、あの、ごめん。ミリア姫とは、なにも」
いろいろまずいかも。
そういや、魔王国との通信の時、領地経営が上手く行ってないとか言ったような・・。
ルナリス「薬は大丈夫でした?」
俺 「あー。予想以上に良かったよ。」
ルナリス「言い忘れたのですが、この前から薬の精製方法を工夫しています。」
俺 「へ?」
ルナリス「より単一の物質になるようにしてみました。
最後にクラムに飲ませた時には、副作用が少なかったでしょ?
ろ過を工夫したり反対属性の酢で洗い流したり、。」
俺 「もしかして、それでか・・。」
ストリュ「しかし驚いたな。ほんとにセクタに戻れるのか。」
俺 「国王じゃなくて領主だがな。」
ストリュ「かまわん。やはり、おまえは聖者だ。おまえに忠誠を誓おう!」
途中、馬車で一泊する二日の旅だそうだ。感触的に言って500Kmぐらいかなぁ。魔王国とは反対方向への旅なんだが、地図を見ると、、、。この大陸というのが丸くて中央が雪に閉ざされた山になっている。人が住んでいるのはドーナッツ状の部分であり、反対方法からも魔王国へ行ける。要するに帝国、魔王国、セクタは、いずれも隣り合っている。領地的には帝国が一番大きく、魔王国、セクタの順。中央の山は気温が低くて、とても横切る事はできないとの事。
地図を見て一番驚くのは、まともな港がセクタにしか無い事。それ以外の海岸は、切り立った崖になっているらしい。どういう地形だ?
なんにせよ、ここの地形を実際に確認しながらの、初めての旅行!
不安はあるが領主とか偉そうだし、少し楽しいかも!
でも、。
ルナリス「エミャルちゃんが今日の分の、回復薬を飲んでくれなくて。あの子、薬だけで体力を維持してるから、このままだと旅は無理ですよ。」
うわっ。どうすんだよ!
あわてて俺の部屋に行くとエミャルが、、小さくなっていた。また、心が壊れてるのか・・。
俺 「誰かにいじめられた?」
エミャル「昨日、、また置いてかれた・・。」
また? また、は良くわからないが、
いじめたのは俺・・って事かも。昨日、ミリア姫の馬車が来て、そのまま置いていってしまった。
俺「ごめん。昨日は、いろいろあって。出かけてしまって。戻れなくて・・。」
俺「これから出発するんだ。薬を飲んでくれないと、一緒につれていけないよ。」
エミャル「また、置いてくの・・ね。」
う~ん。ちょっと違ったかなぁ。少し舞い上がっていたかもしれない。
俺「そうだね。これは、そういう話じゃないよね。」
優先順位が逆だな。
俺「分かった!エミャルが行けないなら、俺は行かない!
別に領主とか、どうでも良いわ。」
下におりて、皆にそう言うと・・
エストリア「何、ふざけた事を言ってるの?」
ストリュ「殺すぞ!」
いろいろと騒がしいので、俺の部屋に逃げてカギをかける。
エストリアには蹴られそうになったし。
エミャル「みんなが騒いでるみたいだけど・・。良いの?」
俺「かまわん! エミャルが大事だ。」
驚いているような。戸惑っているような。
精神が壊れているようで、意外と分かってるのだよな。
エミャル「私は・・要らない、でしょ。」
俺「逆だよ。エミャルにとって俺が要るだろ。
他のヤツは、生きるのに俺が必要というわけじゃない。
だから、エミャルの側にいる。とても簡単な事だ。」
と言うことで、領主への赴任は中止だ!
ブックマークありがとうございます。これで第一章、終了・・・のはずだったのだけど・・




