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残念な子

 議会で、タジャラン学校長に会って、魔法士官学校の寮にお邪魔する約束をしておいた。

 お城から、そのまま、エストリアと学校の寮へ。問題の子は、寮の一室で保護している・・とか。


 既に学校を終えて戻っている生徒たちがいて、馬車から降りたった俺たちをいぶかしげに見ている。女生徒が多い・・かな?

 入口にいた寮母さんみたいな人に案内されて、事務所の応接セットみたいな所に。

 そこで学校長さんが待っていた。


エストリア「この前も来たのだけど、懐かしいわ。」

タジャラン「ここは変わってないからね。」

俺「時間もありませんので、問題の子・・」

エストリア「エミャルね。」

俺「エミャルの、今の事情を詳しく教えて頂けますか?」

タジャラン「私の知っている範囲の事はお話しさせて頂くが、実は、彼女については、そもそも不明な部分が多いのだよ。」

エストリア「そういえば、外国とは聞いていましたが、何処の国から?」

タジャラン「それなんだが、私は勝手に魔王国と考えていたのだ。外見にそういう印象があったし、敵国なので素性を隠していると思っていた。だが、最近、国交が回復して確認したのだが、、、そんな記録は見つからない。ほんとうに外国から来たのかも、怪しくなった。」

俺「そんな人間が、帝国の士官学校に入れるのですか?」

タジャラン「私の前任者の時なんだが、有力な人から是非と言われたらしい。そして多額の寄付もされたとかで・・。その時は、帝都内に彼女の身元を保証するという人もいたとか。それで、まあ、入学したらしいのだが。

  先日、突然、一人の理事から、彼女を名指しで問題視する意見が出て、、。ある意味では当然なんだが退学になっている。

  その後、入学時に記載されていた保証人を探したのだが、、見つからないのだ。このままだと彼女の行先は保護施設ぐらいしか・。」

俺「本人に素性を聞くと言うのは?」

タジャラン「答えてくれないのだよ。まあ、いずれにしろ、本人に会ってみてくれ。」


 最初に案内してくれた人が寮長・・さんらしい。

 その寮長さんも加わり、エミャルの部屋に向かった。


寮長「ここのところ、食事もほとんど食べてくれなくて。このままだと、命も・・。」

エストリア「、、、そこまでになっていて、それで私にどうしろと・・。」

俺「まあ、落ち着けよ。エストリアが悪いと言ってるわけじゃない。」


寮長「あまり刺激を与えないでくださいね。」


 ドアを開けると2段ベッドの下の部分で、女の子が小さくなっていた。

 本来は二人部屋だと思うが、、。今は、一人にしているのかな?


 エストリアが小声で「相変わらず、汚い髪の色ね。」

 ん?何を言ってるのだ?


 本来は前髪を切りそろえていたようだが、それが伸びてしまって目が隠れている。

 それでも、その黒髪は、汚いようには見えない。綺麗なストレートだ。

 そういえば、この世界に来てから、魔王陛下以外、こういう綺麗な黒髪を見た事が無いな。俺の髪も色が薄れていたし。


 エストリアが近づくと、後ずさるように下がった。

「大丈夫?」


 応答が無い。


エストリア「答えてくれない?!」

エミャル「う。」


 おい!刺激を与えるなと言われて無かったか!?


エストリア「この前来た時より(ひど)く、なってるわね。」


 学校長もそう言っていたが、。既に心が壊れてるようだ。

 エストリアが髪を持ち上げた。ほとんど人形を扱うように・・


エストリア「(ひど)い顔ね。目も真っ黒で汚いわ。」


 俺からも顔が見えた・・が!!!!


 おい! 冗談じゃないぞ。エストリアは何を言ってるのだ? 

 小さい顔に大きな黒い瞳で、小さい口。白い肌。

 恐ろしく痩せていて、やつれてるけど、それでも十分にかわいく見える。

 痩せているのと片方の目のあざで痛々しくて、、、この子をほっておくとかありえないだろ。


 思わず近づいて、触れるか触れないかまで手を伸ばし

俺「かわいいじゃないか! うん。君はかわいいし、綺麗だ!」


 その子が少しだけ顔を上げて、俺を見た。初めて視線が定まったようだ。


タジャラン「なんと! こういう子の扱いを心得ていらっしゃる。」


俺「目の(まわ)りあざは・・、どうしたのでしょう?」


タジャラン「もうしわけない。先日、引き取ると言って来られた方が、いきなり、しつけ・・と言って。

  もちろん、帰ってもらったのだが・・・。」


 なんだよそれ!良く分からんが、酷すぎるだろ。

 痩せているのは食事を食べなかったせいだろうし。この状態が続いたら確かに危ない。


俺「何も答えなくて良いよ。君に元気になって欲しい。」


 言葉に反応して、わずかだが表情が動く。それだけが唯一の答え。

 それでも、俺の言葉に喜びを感じている事を確信できた。ならば、可能性はある。


 エストリアが小さい声で「まさか、本気じゃないでしょうね?」

俺「本気だよ。」


 相変わらず小さい声で

エストリア「・・・だとしても、こんな壊れた娘の世話を、どうやってやるつもりなの?

  クラムだって、まだ完全に治って無いのに、冷静になって考えなさいね。

  それに、、、この様子だと、、はっきり言って生きられるかも怪しい。」


 俺と話していたら、彼女の視線がエストリアに向いた。そして、

「か、かいちょ?」


 エストリアがビクっと反応した。もう一度、女性の顔を見てから俺に。


エストリア「あなたの責任で引き取るのよ。私は知らないからね。」

俺「あー。それで良い。」


タジャラン「引き取って頂けるのか?

  ありがたい。 そうしてもらえると、ほんとに助かる。

  今の状態だと保護施設に耐えられるようには見えなくてな・・」


俺「やれるだけの事は、やってみます。」


タジャラン「お礼と言っては何だが、何かあれば協力させて頂くので、ぜひ、連絡してくれ。」


 ほとんど歩けないので、俺がかかえて馬車の載せた。

 御者をしていたストリュが、いぶかしげにのぞいて、、。ストリュの表情が微妙におかしい気もする。


 まあ、なかなかの美少女だからな。しょうがない。

 いや、美少女と思ってるのは俺だけなのか? 

 どうやら帝国には黒髪差別みたいのがあるみたいだが・・。

 ストリュは出身国が違うし、どんな印象なんだろう?


 屋敷に戻って、俺が使ってる部屋のベッドに寝かせる。客間はまだクラムが寝てるし、俺の部屋の ベッドが一番良いから。

 相変わらず目の焦点が定まらず、言葉もほとんど発しない。


ルナリス「また、たいへんな娘を連れてきましたね。ヒロタンさんらしいでしょうか。」

俺「同じ学校だったらしいが、ルナリスは知らないのか?」

ルナリス「そういえば、見た・・かもしれません。なんかこう有名な残念な見た目の・・。」


 いいかげん、おまえら怒るぞ!


ルナリス「でも、成績は良かったらしいですよ。」


 2階の倉庫から回復薬を出した。クラムにも飲ませたが微小な瑠璃(デバイス)をアメで包んだ物だ。

 買うと、ひとつ1000ゴールドと高価な物らしいが、しょうがない。


 でも、それを飲んでくれない。用意したスープもだ。


ルナリス「どうしましょう・・。これでは、長くもちませんよ。」

エストリア「だから、ダメって言ったのよ。どうするの?」

サミアス「ぼくが(くち)うつしで、食べさせようか?」


 サミアスは、ちょうどトラクの所から戻ってきた所だが。

 そういう事を、男のサミアスがやるのはどうなんだろう?

 と言うか、・・、サミアスがやって良いなら、俺がやっても良いのか?

 いやいや、それはともかく・・


ルナリス「無理に口に流し込んだら吐いてしまいました。たぶん、口うつしでも無理だと思います。」


 うわ~。どうしたら良いのだろう。

 寮では、多少、反応していたと思ったのだが・・。

 このままだと、死んでしまう・・のか?

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