一つの命令
世間でいうブラック企業に勤めていた黒田和也。家に帰り、オンラインゲームを開くと謎のバグ?に巻き込まれる。バグで誰もいない世界に突然、メッセージが届く。メッセージはバトルの申し込みだった。ゲームをやり込んでいる和也はそのバトルに参加したのだが。
カーテンは閉めきってあり、薄暗い部屋にパソコンの画面だけが光っている。キーボードの上で目覚めた朝は最悪であった。
「もう朝か・・・」
時計の針は九時三十分をさしていた。黒田和也は時計を二度見した。
「会社に遅刻した!」
和也は九時に出勤しなければならない。どれだけ急いでもすでに三十分遅刻している。和也は、何も口に入れずに顔をゆすぎ家を飛び出した。急いで電車に乗り込んだ。駅から会社は十分ほどかかる。駅に到着し急いで会社に向かったがもちろん遅刻である。自分の机に鞄を置き、上司のもとに向かうと漫画に描いたような怒った顔をして待っていた。
「遅刻してしまい申し訳ありません」
すぐに頭を下げて謝った。
「君、世間の常識を持っているのか。謝ればいいってもんじゃないんだよ」
上司は長い説教を始めた。和也は遅刻が多い方でこの説教にも飽き始めていた。毎週のようにこの説教を聞かされている。和也の勤めている会社は残業の多い、有休を取らしてくれないいわゆるブラック企業というやつだ。このままじゃ過労死してしまう。しかし、和也はそんな愚痴を一つもこぼさず黙々と仕事をしていた。和也は遅刻は多いが仕事は最後までしっかりやり遂げるため、上司から仕事がまかされることが多かった。そのため仕事が終わっても会社に残り、任された仕事をすることが多かった。
「いつになったら休ましてくれるのだろう。このまま仕事をしながら息をひきとるのだろうか」
たまに愚痴が出てしまう。和也は仕事を終えて家に帰ると、決まってスーパーのお惣菜を食べる。そしてお風呂はシャワーで済ませて出てくると、テレビをつけたら深夜アニメが始まる。そしてパソコンを立ち上げてオンラインゲーム。このような生活を和也は繰り返していた。
「あれ、おかしいな。オンラインの人が一人もいない。世界中でプレイされているはずなのに」
いつものように和也がゲームを開いた。が、誰にもプレイされていない。和也がいつもしているゲームは世界中でプレイされている大人気ファンタジーゲーム。誰にもプレイされていないはずがない。メッセージも自分のユーザ―ネームKazu9826という表記しかない。
「いつもならメッセージが飛び交ってうるさいぐらいなのに。再起動させてみるか」
再起動をしようとメニュー画面を開いたとたん、一つのメッセージが飛んできた。
user803「こんにちは。君はKazu9826でいいかな」
Kazu9826「こんにちは。あなたはいったいどこからメッセージを送っているのですか?」
和也の画面には自分以外のユーザーの姿が見えない。基本メッセージは自分のいるワールド外からや、バグ等を利用した画面外からの送信は不可能となっている。
user803「今は教えられない。君とゲームがしたい。一戦してくれないかい?」
Kazu9826「いいだろう。俺はなかなか強いが構わないか?」
user803「もちろんさ。それを知った上で君にゲームを申し込んだ」
Kazu9826「わかった。さっそくバトルといこうか」
user803「ありがとう。じゃあスタート!」
画面に突然アバターが現れた。現れたアバターは和也に襲いかかってきた。和也はこのゲームをやり込んでおり、レベルはマックス。どんな相手でも勝つ自信はある。襲いかかってきたアバターは見る感じ魔法使いらしい。和也は霊体創造主という職業を選択している。創造主はそのワールドにあるものを使っていろんなものを作ることができる。霊体創造主は創造主の能力に加えてモンスターや悪魔を創造することができる。
user803「神聖烈火!!」
Kazu9826「創造・防壁」
「こいつ最初から俺をアンデッドと判断し陽属性の技を撃ってきたのか!?」
user803「神聖電撃!!」
「うっ。適正でダメージが大きい。この辺で勝負をつけておかないと、」
Kazu9826「創造・暗黒龍」
和也はドラゴンを作りだした。ドラゴンは禍々しいオーラを漂わせている。
Kazu9826「ドラゴンよ。ダークブレス」
ドラゴンはアバターに向かいブレスを吐いた。直撃だ。魔法で作られたドラゴンだが普通のドラゴン並みのダメージを与えることができる。
「勝ちだ。意外とあっさりと倒せてよかった」
そんな時だった。ドラゴンの姿が消えブレスの中から人影が現れた。
user803「君の負けだ。ロスト・神聖烈火!!」
和也の後ろからとても大きな焔が飛んできた。和也はかわすことができなかった。ロストの付く魔法は最上位魔法。レベルマックスの和也でも耐えることができない。和也の完敗だった。
user803「どうだい?僕の作戦。君はドラゴンを召喚した。僕は君のドラゴンダメージをくらったように見せてドラゴンを生贄にして最上位魔法を使用した。てっきり倒したと思い込み去ろうとした君の後ろから打ち込んだのさ」
Kazu9826「完敗だ。負けたよ」
user803「なら僕のいうことを一つ聞いてくれないかい?」
Kazu9826「別にかまわないが、何をすればいい?」
和也は突然の命令を自分が負けたのを理由に飲み込んだ。
user803「簡単だよ。君はこのままゲームをプレイして、キーボードの上で寝落ちすればいい」
Kazu9826「何の意味があるんだ?」
user803「目が覚めたらわかるよ。それじゃあ僕はこの辺で消えさしてもらうよ」
Kazu9826「まて、最後にお前の本当の名は何という?その名は初期状態のものだろう」
user803「ダージェさ。またね」
Kazu9826「じゃあな」
user803がログアウトしました。
「一体何だったんだよ」
和也が画面を見るとuser803の文字が消えたのと同時にいろんなプレイヤーが現れ始めた。和也は安心してそのままキーボードの上で寝てしまった。
読んでいただきありがとうございます。今回、新たに投稿させてもらいました。ジャンルは異世界物です。HJネット小説大賞に向けて十万字目指して投稿していこうと思います。おもしろい異世界小説を書けるように頑張ろうと思います。皆さんが想像できないようなストーリーを書けるように努力しようと思います。次回の投稿もお楽しみに!!