命果てる?
二人はどちら側の親にも怒られた。
とくに女の実家へ行った時、親父に……、男はマジ殴りされた。
鼻血と口からも血を流しながら土下座する男。真っ赤な顔をしてブチ切れたままの親父。止められない女と、それを止めようともしない母親。
『――ずみまぜんでじだ』
『謝って済むかボケ! お前なんかブッ殺してやる!』
あー。俺の父さん、俺よりも先に天国に行くかも。鈍い殴られる音が何度も聞こえてくる。グギって音も聞こえた。延髄を蹴られたのだろうか。
「フルボッコ」って「とりかえっこ」みたいに可愛く聞こえるけれど、リアル半殺しは……本当に怖いものなんだ。
『あなた、それくらいでいいわ。血圧上がり過ぎると、また倒れるかもしれないでしょ』
ハアハアと肩で息をしながら、親父は座敷のテーブル越しにドンと座り、煙草に火を点ける。
『それで、どうするつもり?』
首を蹴られてうずくまる男の隣で、ずっと正座させられていた女は、どうやら一人娘のようだ。
『……堕ろすわ』
言葉の直後、パーンと大きな音を立てて叩かれる女。つうか、俺の母ちゃん。
『あなたの子供はもう一人の人間なのよ! そんな無責任なことは許しません!』
『お、お、お母様……』
『それに、もう、あなたのお腹は……、
――臨月!
いつ破水したっておかしくない状態じゃないの!』
――!
――そりゃ無理だ!
放ったらかし過ぎだ! ――いや、逆になぜ、そんなになるまで放っとけたんだ? ――先延ばしもほどほどにしろと言いたい!
『イテテ』
――!
羊水が! 俺の周りを温かく包んでくれている羊水が――。
少しずつ……流れ抜けていく?
『ほらみなさい! すぐに産婦人科へ行くのよ!』
『――い、嫌よ』
『駄目よ。あなたの命だって私達にとってどれだけ大切か、考えたことはあるの?』
……。
『それより、よく今まで隠せてたなあ』
『あなたは黙ってて』
『急に太ったって言ってたら、友達とかぜんぜん気づかなかったわ、イテテ』
『あなたも黙りなさい』
『あの……ティッシュか絆創膏もらっていいっスか?』
『――お黙りっ!』
つづく
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