sumo is war
1.
前略、お母さん。
今日は清々しい朝です。初土俵の朝が来ました。
今年のコシヒカリは順調に育っていますか?
お父さんは相変わらず僕の選択を認めていないのかな。お姉ちゃんはまたフラれたんですね。みんなが観に来れないのが残念です。
初土俵の朝だけど、一番の新人の僕はいつも通り、朝稽古も、ちゃんこの準備も、兄弟子の世話も、掃除も洗濯もしなきゃいけないんだよ。
でも、今日は兄弟子たちもいらだたせないで起こせたし(これが一番難しいんだよ)、親方もこころなしか優しいかな。
それに今日もお嬢さん……親方の娘さん……は素敵です。お嬢さんは本当にすごいんです。
僕の一個年下、だから中学三年生だというのに部屋のお母さんがわりにキビキビと働くし、僕みたいな下っ端にだって優しいし、凛々しくて可憐で、ああ、お嬢さんお嬢さん……。……い、いや!あくまで僕はお嬢さんがすごく素敵な方なんだっていいたいだけだからね!なにか勘違いとか、しないでよね!
この部屋は歴史の新しい相撲部屋です。
親方も若いし、まだ力士も少ないんです。
年の近い兄弟子たちが多くて、みんなお兄ちゃんみたいです。
だから、お母さんやお姉ちゃんたちが心配したようなカワイガリは無いんです。だから安心してね。
いま僕は朝稽古が終わって、兄弟子たちの食べたちゃんこの片付けが終わったので、隙を見てこの手紙を書いています。
僕のデビュー戦、っていったらいいかな。前相撲はお昼過ぎから始まるから、もうちょっとしたら準備しなきゃならないかな。
兄弟子たちは、それより出番も遅いからいま昼寝をしているよ。
浴衣に着替えたら、僕ら新弟子たちは国技館に向かうよ。ドキドキするけど、頑張ってくるね!
追伸・みんなが観に来れないのは残念だけど、お父さんが納得するきっかけになったらいいな。