なぜ、嘘をつくのですか?
本作は実験的作品です。
自分に内在する世界を表現する上で、小説という媒体がどのように機能するかを実験的に活用してみたものとなります。
また本作は心象風景によるものが大きいです。見る人によっては精神的に苦しい部分もあるかと思われます。
個人的なイメージでは、語り部は女性で考えています。
ご了承の上、お読みください。
「なぜ、嘘をつくのですか?」
『ねぇねぇ、これ見て!』
『やだー、可愛い!』
「なぜ、嘘をつくのですか?
本当は、『可愛い』と言っている自分の事が可愛いと思っているのに」
『何か欲しいものはある?』
『ううん、要らない』
「なぜ、嘘をつくのですか?
本当は、あのカッコイイおもちゃが欲しいと思っているのに」
『今日は君の誕生日だろう? はい、プレゼント』
『わぁ、嬉しい! ありがとうございます』
「なぜ、嘘をつくのですか?
本当は、他のものが欲しかったのに」
『この日は会社に来れるかい?』
『申し訳ありません。その日は所用がありまして・・・』
「なぜ、嘘をつくのですか?
本当は、その上司と会いたくないだけなのに」
『お前なんか大嫌いだ!』
「なぜ、嘘をつくのですか?
本当は、その子のことが大好きなのに」
『他の人の前では誤魔化してもいいけど、私には本当の事を言ってよ?』
「なぜ、嘘をつくのですか?
貴女だって、大好きな彼に隠していることがあるのに」
『僕は噓つきが嫌いだ』
「なぜ、嘘をつくのですか?
貴方だって、一度は嘘をついたことがあるのに」
「なぜ、嘘をつくのですか?」「なんで嘘をつくの?」「なぜ、嘘をつくのじゃ」「なんで嘘をつくんだ!」「なんで嘘なんかつくのよ!」「本当のことを言ってよ!」「嘘をつくなんて最低だな」「噓つきは泥棒の始まり、って言葉。知ってる?」「君のせいで会社に大きな損失が出た。分かっているのか!」「謝りなさい、今すぐに!」「隣の子が人を殺したそうよ?」「まぁ、あんな優しい子がねぇ・・・」「人って見かけによらないものね」「それは盗んできたものだろ!」「違うよ! なんで信じてくれないんだよ!」「いい加減、本当のことを言いなさい。怒らないから」「ここに証拠がある。言い逃れはできないぞ!」「なんで嘘をつくんだ! もうそんなものに意味は無いんだ!」
「なんで」「なんで」「なんで」「ねぇ、どうして?」「どうして?」
「どうして人は嘘をつくの?」
「どうして信じてくれないの?」
「ねぇ、なんで?」
「なんで?」
「誰か答えてよ!」
「なぜ、人は嘘をつくのですか?」
<終>
※問いの答えは、ご自分でお考えください。
筆者はその答えの一つを導きだしてはいますが、答え自体は単一ではなく、個々人によって異なるものだと理解しているつもりです。
ゆえに、この場では答えを記しません。
読者それぞれの感性に委ねます。