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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【4】偽物彼女
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89@頼視点

辺りを見渡して、周りに人が居ないところを見計らって俺は声をかけた。


「おい、」

「ん?」

振り返った笹野が、俺を見て笑顔を咲かせた。まぁ反射的なものだろうが、そんなの俺は要らないんだけど。


「あ、なんだ赤下じゃん。どうかしたの?」

「“どうかした”、じゃねぇよ」

このとぼけた反応が俺をより、苛立たせる。この女のことだから、わざとかもしれないが。


「勝手に律花の予定埋めるなよ」

「いいじゃない赤下は部活なんだし。それに律花がバイト始めたら会える日本当に減っちゃうし。私だって律花と夏休み会いたいんだから」

「・・・・・」


ちょっと待て。

今、なんか─────言ったか?“バイト”?


「夏祭りくらい譲ってあげるから文句言わないでよね」

「“バイト”ってなんだよ?律花バイトすんの?」


そう訊ねながら、そういえば以前(まえ)に律花がバイトしたいとか言っていたのを思い出した。


夏休みに始めるってことか?

ていうか、バイトって。

知らない男とかもいるよな、バイトって。

そこに俺は居ないのに、知らない奴と律花が同じ空間に・・・?


(うっわ、想像しただけで胸糞悪い。勘弁してくれ)


「やめさせないと・・・・・」

思わず口から気持ちが(こぼ)れた。


「え、なんで?」

「バイトなんてやらなくていいんだよ、律花は」

「なんで赤下がそんなこと決めれるの?」

俺の言葉に、笹野が真顔でそう返してきた。


“なんで”って・・・・嫌だからだよ、と言えなかったのは自分でも気付いていたからだ─────これは、ただの嫉妬だと。


「律花が決めたことを否定するの?彼氏のくせに?」


だけど笹野は、容赦なくそこを突いてくる。本当に、泣きそうになるくらい容赦なく。


「応援するとか出来ないわけ?それ、律花ちゃん悲しむだけじゃない?」

「・・・・・」

もう、何も言い返せなかった。俺はただ、黙りこんでひたすら頭で考えていた。


(悲しむ・・・のか?)

俺が反対したら、律花はどんな反応するんだろう。

律花のことは、俺が一番分かってるはずなのに。


(────なのに、分からないことばかりだ。)




「あ、ちょっと苛めすぎたかなぁ?──ね、赤下?」




好きだと言ってくれたのに、“付き合えない”だとか。

試合を観に来るのも、嫌そうだったりとか。

照れているのかと思えば、俺に言わずにバイトしようとしたり─────まるで距離を取られているようにも感じてしまう。




「ちょっと、赤下大丈夫?おーい」




(律花ちゃんは、優しいから──────・・・)


どうしても、弱気な発想ばかりが付きまとって離れなくなる。


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