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─────昼休み、頼に購買まで飲み物を買いに付き合えと言われた。私もちょうど飲み物を買いに行こうとしていたところだったから、素直に並んで歩く。
「別荘?!」
頼が驚いて声をあげた。予想より反応が大きくてこっちも驚いた。
頼に夏休みどうするのか聞かれたので今朝の話をしただけなのに、なんでそんな驚く?
「そう。里桜が毎年そこでおばあちゃん孝行してるんだけど、今年は私も誘ってくれて」
「なんだそれ、俺も行きたい!」
「え、頼は部活でしょ?」
「・・・・・・チッ」
今、舌打ちしなかったか?
「あ!そうだ律花、来週の土曜空いてる?」
頼が気を取り直すように一息ついてからそう切り出してきた。
「え、なんで?」
「試合あるんだよね、バスケ部の」
「へぇ、頑張って!────って、え。まさかそれに来いと?」
「いや来るだろ普通は。」
「“普通”ってなによ」
頼が変なこと言うからつい、率直なツッコミを口に出してしまった。
(あ、やば。)
またやってしまった、と反省してもすでに遅かった。拗ねたように頼が私から視線を外す。
「なんだよ・・・・興味ない?」
寂しそうに聞かれて、私は思わず口ごもる。
「な、ないわけじゃないけど・・・」
「じゃあ来て」
「あ、空いてたらね・・・」
「空いてないとか、あんの?」
「失礼な、それどういう意味よ!」
私が口を尖らせてそう食らい付くと、頼は愉しそうに笑った。
(う・・・・不意討ち食らった)
頼の笑顔に胸がきゅうと苦しくなる。甘いのに、苦しい。
興味ないわけ、ないじゃんか。
ただ。
ただ・・・・これ以上好きになったらと思うと怖いんだよ。
私の気持ちばかりが大きくなって。
自分ばかり、欲張りになっていく。
だから。
頼に愛想尽かされたらと、いつか来るであろうその日を考えると────怖いんだ。