87
朝練のある頼に付き合って今朝も学校に早く着いてしまった私は、教室に着くとスマホで暇潰しにバイト情報の検索をしていた。
────これは夏季短期、これは土日のみかぁ。
なかなか色んな職種やら、条件があるな・・・・。
(自分にできることって、何だろう?)
「あれ、律花バイトするの?」
いま登校してきただろう里桜が、私のスマホを後ろから覗き込んで言った。私はスマホから目を離さず答える。
「や、ただ見てただけ」
「ふうん」
そう答える里桜の顔はなぜか嬉しそうだ。というか、その含み笑いやめてよ、不気味なんだけど。
「・・・なに?」
「いや、そうだよねぇ。夏休みどっか出掛けたりしたらお金かかるもんね!必要だよね、うん」
「?」
里桜がごく当たり前なことを言い出して、私は首をかしげる。
そして“出掛ける”で思い出した。
「里桜は今年も、夏休みは別荘なんだよね?」
「あ、うん。前半はそうなるかな。おばあちゃんも楽しみに待ってるし」
・・・・やっぱり。
・・・・そうだよね。
────里桜は毎年夏休み、おばあちゃんの住んでいる避暑地の別荘に遊びに行ってしまう。
なので、あまり遊べないのが少しだけ寂しい。
「あ、そうだ!」
里桜が、キラキラと目を輝かせて言った。
「律花ちゃんもおいでよ!」
「え、何言ってんのそれはダメでしょ」
「ダメじゃないよー。おばあちゃんも律花に会いたがってたの。」
「え、でも」
「あ!そうだ!バイトもしようよ!」
「ちょっと里桜、」
いくらなんでも、暴走しすぎだから。
ちょっと落ち着いて・・・・と宥める隙すら与えられない。
「海の家でバイト!やろう?!」
「え、」
「だって私も律花と夏休み過ごしたいもん!おばあちゃんにも会えるし一石二鳥でしょ!それにどうせ赤下は部活なんだし!」
「・・・そうだけど」
「じゃあ決まり!あぁ楽しみ!夜は花火やろうよ!」
─────里桜によって数秒で決められてしまったんだけど、大丈夫なんだろうか、私の夏休み・・・・。
だけど、ドキドキ胸が高鳴るのを感じた。