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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【4】偽物彼女
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「夏休み、どうするー?」

「プール行こうよ、プール」

「良いねぇ!」


そんな弾んだ会話が、廊下から聞こえてきた。

放課後、帰っていく人達の中、私は一人で教室に残っていた。窓際に近い席だから、外を眺めながらぼんやりと考える。


(プール・・・・とか、全然行ってないなぁ。)

中学時代の夏休み、イベントらしきものは全部スルーしていた。


町内の夏祭りも、プールも、物心ついた頃から頼と一緒に行っていたから。どこに行っても、頼を思い出してしまうから。


─────それが堪らなくて。



(今年は行きたいかも・・・・花火大会とか───)


そんなことを考えていたら、勝手に浴衣姿の頼が頭に浮かんだ。


(む、ムリムリムリムリ!!)


なに考えてんのよ!

だいたい頼、部活あるし。

夏休みだって、忙しいだろうし。

だから・・・全然会わないだろうし。


─────“彼女”でも、ないし。


自分でツッコんでいて、凹んでしまった。


(バカか、私は───・・・)


「青島さん?」


そんな声が背後からして思わず、軽く肩が揺れた。振り返ると、カバンを手にした田端くんがこちらを向いて立っていた。


「あ・・・・」

ついさっきまで自分の考えていたことが見透かされた気がして、恥ずかしくてつい目をそらしてしまった。そんな挙動不審な私に、田端くんが言った。


「“彼氏”待ってるの?」

「え、や、・・・そ、そうなのかも?」


自分は今、頼のなんなのか分からなくて。

というか、そんな聞き方されると思っていなくて。


私は困ってつい、明らかに不自然な返事をしてしまった。

すると、田端くんが苦々しい笑顔を浮かべ、静かに言った。


「・・・そっか。」


この間田端くんの前で号泣してしまったことも思い出して、ますます気まずくなり、空気が重く感じてきた。


「た、田端くん忘れ物かなにか?」

「そう。今日日直だったんだけど、そういえば窓閉め忘れてたかなとか思って」

「そっか、さすがだね!」


真面目で、責任感強くて────そういうところ、田端くんらしくてなんだか笑ってしまった。


「あそうだ。早くしないとバイトにも遅れるから、じゃあ」

「え、田端くんバイトしてるんだ?」

意外だったからつい、そう聞き返してしまった。私の言葉に、帰ろうとしていた田端くんが振り返る。


「あ、うん。今日初日なんだ」

「そっか、頑張ってね」

「・・・・ありがとう、じゃあ」

「うん、バイバイ」


帰っていく田端くんを見送りながら、私は考えていた。



(────バイト、かぁ。)


そういえば、頼って10月誕生日、だったよな。

私も、夏休みにバイト探しても、いいかもしれない。


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