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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【4】偽物彼女
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私の高校では、テスト前一週間は部活が休みになるらしい。

だから頼の所属するバスケ部も、今日から休みになっていた。


(噂って、一体どこから発生するんだろう。)


放課後、頬杖をつきながらぼんやりそんなことを考えていた。


────私と頼が付き合ってるという噂がその日のうちに知れ渡っていた。

誰かに確認されたわけでもないし、自ら公言したわけでもない。


(まぁ・・・・付き合ってることになってはいるけどさ)


付き合ってるという噂が広まってから、他のクラスや二年生など上級生の女子の“なんであの子が?”という視線を痛いほど感じるようになった。


(頼が、ここまでモテると思わなかった・・・)



「ごめん、待たせて」

声を弾ませて、走って教室に入ってきた張本人を、私は八つ当たりするように睨んだ。だけど頼は私と目が合うなり嬉しそうに目を細める。


(なんでヘラっと笑えるんだか。)


そう毒づきたくても、頼の整った笑顔にやられて、すでに顔が赤くなってしまっている私は、頬を隠すように素っ気なくそっぽを向く。


(カッコいいんだよ、ばか。)


「なに怒ってんの?」

「別に怒ってないし。頼こそ、なにニヤニヤしてんの?」

「え、してねーし」


いやいや、頬が緩みきってるでしょ。

そんな幸せ全開な笑顔、見せてこないでよ。

・・・・まともに見れないから。


そんな私の気持ちを知ってか、頼が鞄を手に顔を覗き込んでくる。


「で?律花、まだ帰らねーの?」

「え、頼が放課後テスト勉強するって言ったんじゃん」

「うん。するよ?家で」

「えっ」


(い!家?!学校じゃないんだ?!)


「俺の家でもいいし、律花の家でもいいよ?」


動揺した私を愉しそうに見つめて、頼が聞いてくる。


「───律花はどっちがいい?」


(なんでいつも、そんな余裕なのよ・・・)


私ばっかり余裕がなくて、緊張してばっかりで。

意識しまくりじゃないか。


(なんか、悔しい・・・)


頼にも、ドキドキして欲しい。

そう考えるのは、私が負けず嫌いだからなのか?


「ど、どっちでもいいけど?」

「じゃあ!今日は俺の家で数学な」

「・・・分かった」


かなり思い切って答えたのに、頼はすごく普通のトーンでそう返してきた。


(頼は、意識とか・・・・しないのか?)

そう思ったら、ガッカリじゃないけどなんだか淋しく感じた。


(って、手!!!)

そんな気持ちは頼に繋がれた手に、全て持っていかれた。

「頼、ちょっと──・・・」

「ん?」

離して、と言おうとした私に、頼は小声で“付き合ってるふりしないとバレるよ”と囁いた。反射的に耳を抑えると、頼が満足気に口角を上げた。


(なっ、なんてやつ!!)


耳元で囁くとか、それ反則技だから!

てか、絶対わざとやってるだろ!!


そう言いたいのをグッと堪えて、少し前を歩く頼の手に引かれながら私は教室を出たのだった。


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