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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【3】友達以上、恋人未満
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「その表情(かお)は、話せたんだね!?」


朝のホームルームが終わると里桜が私の席にやってきて、自分のことのように喜んだ。


「うん、ありがとね。里桜のおかげだよ」

「やだ、律花ちゃんたら大袈裟!そんなことないよ!」

「ううん、里桜が言ってくれなかったら、私また逃げてた」


そして、またずっと辛い気持ちに蓋をしていかなければならなかった。

自分ばかりが、被害者みたいにして。


「律花、」

名前を呼ばれて顔を上げると、頼が私の席にやってきた。

頼は驚くほど機嫌良くて、いまだかつて見たことないくらい明るい表情だ。


「来週から、放課後一緒にテスト勉やらね?」

「うん。あ、でも古典のノートとかは貸さないからね?」

古典は午後イチなこともあって、かなりの確率で居眠りしてたから。

途中ヘビみたいな落書きになってたりしてるんだよね。


焦ってそう先手を打った私に、なぜか頼がニヤリと笑った。


「貸さないんじゃなくて、貸せ(⚫ ⚫)ないんだろ?」

「え」

「寝てたもんなー」

「ちょ、何見てんのよ…っ」

「見たくて見た訳じゃないし。常に視界に入ってたんだよ、律花の後頭部が。」


そ、そうだった!

頼はこないだまでずっと、私の後ろに居たんだ!


今さらそんなことに気がついて、決まりが悪くなる。

そんな私を、生暖かい目で見つめる里桜と、愉しそうな頼。


(何よ、ニヤニヤしないでよ二人とも!)

無言で睨んでみたけど、まるで効果がない。


「貸そうか?古典のノート?」

「・・・・い、要らない。里桜に借りるし」

頼が小馬鹿にしたようにそう言うから、私はつい意地をはってしまった。すると里桜が慌ててストップをかける。

「え、私?やめてよー、付き合いたての二人の邪魔したくないから巻き込まないでー。」


え?“付き合いたて”?


「里桜、あのね私たち別に付き合って────」

「あー、律花っ!」

説明しようとしたら、頼がわざとらしくそれを遮った。

「何よ、」

「ほら、ノート貸してやるから」

古典のノートを目の前に差し出して、頼が言った。私は少し面食らいながらも、ありがたくそれを受け取ろうとした。

「あ、ありがと・・・・」


だけど受け取ろうとしたその瞬間、素早くノートを上に上げ、顔を上げた私の耳元で頼が言った。


「その代わり、一つ貸しな」

「え」


嫌な予感しかしないんだけど・・・。

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