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「青島さん」
放課後、憂鬱な気持ちで帰り支度をしていると、クラスの女子に話しかけられた。
「出席番号一番だからって、クラス委員押し付けられちゃうなんて大変だよね?」
ニコニコと、愛くるしい笑顔で私にそう話しかけてくれた彼女。
「えーと…」
(名前が…まだ覚えてないから出てこない。)
「あ、私?宮下香織。よろしくね」
「あ。うん、よろしく」
ホッとしてそう返すと、ニコッと微笑んで宮下さんが言った。
「ね!私、クラス委員代わってあげようか?」
「え、本当?」
つい、目が輝いてしまう。私の中で、宮下さんは“良い子”だとすぐに認定した。
「うん!先生には私から言っておくし」
「宮下さん、ありがとう!」
律花ちゃんて呼んでもいい?と宮下さんが言ってくれたので、私たちは名前呼びをする仲になった。
「話してみたら、明るいんだね律花ちゃんて」
「ん?」
唐突な言葉に、首をかしげる。すると香織ちゃんが苦笑しながら言った。
「あーごめんごめん。なんか赤下くんと話してるとき、冷たいイメージだったから」
頼の名前が他の女子から出て心臓が跳ねた。
「―――ああ、うん。…私、男子って苦手で。」
少し反応に遅れた私は、うつ向いてそう答えた。
「そうだったんだぁ」
「だから、代わってくれてありがとう香織ちゃん」
香織ちゃんと話していたその時、席がドアのすぐ目の前のせいで教室に入ってきた頼と目が合ってしまった。
「おい、律花。委員会行くぞ」
「あ、赤下くん!クラス委員ならいま私が代わりに―――」
香織ちゃんが、嬉しそうに頼にそう説明するのを私は席に座って聴いていた。
(そっか…。香織ちゃん、頼のこと…――)
さっきまで喜んでいたはずなのに、急に心にモヤがかかった。
「俺は、律花に言ってるんだけど?」
頼の不機嫌そうな声が、頭上に降ってきた。
「だから、私じゃなくて香織ちゃんが代わりにやってくれることになったんだってば!!」
まるで八つ当たりするみたいに、イライラした態度でそう告げた。
「律花がやらないなら、俺もやめる」
「「え?」」
頼の言葉に、私と香織ちゃんの声が重なる。
「・・・律花、ほら行くぞ」
唖然とする私の腕をガシッと力強く握ると、頼が私の腕を引いて、教室から出ようとする。
「ちょっ…離してよっ!」
そう訴えた私を、振り返った頼が睨んだ。
「離したら逃げるだろ、お前」
違う。
知らない。
私が知ってる幼馴染みじゃない。
私の好きだった“頼”じゃない。
(嫌い。――――嫌い、キライ。)