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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【2】友達
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61@頼視点

(ヤバかった…)


もしあの時……弥生さんが帰ってこなかったら――――…。


触れそうな距離にまで近付いても、拒否しなかった律花を思い出して胸が熱くなる。


(律花、……可愛すぎ…)


興奮覚めやまぬまま青島家を出た俺は、あの瞬間を何度も思い出していた。

「ただい…「(おせ)ぇよ!!」


自宅に戻ると、玄関先にイラついた表情の羽虎が仁王立ちしていた。


(あ、やべ…。こいつの存在(こと)、すっかり忘れてた…)


「アイス買うのにどんだけ時間かかるんだよ!ちょうど今、帰ろうとしてたところだ!」

「ああ、悪い悪い。ほら、アイス…」


そういえば。羽虎(こいつ)の分のアイス、律花が冷凍庫で保冷してくれてたんだよな…。


羽虎にアイスを手渡しながら、また律花のことを思い出してしまう。


「……なんだよ?」

――――ふと視線に気づいて羽虎を見ると、怪訝な顔をしてこちらを見ている。訳が分からないため俺がそう問い掛けると、羽虎の表情はさらに悪化した。


「なんだよはこっちの台詞だ、その顔はなんなんだよ?」

「顔?え、なんか顔についてる?」

「気色悪いほどニヤついてやがるだろーが!(おま…)、自覚無いのかよ」


俺の部屋に戻って、帰りが遅くなった理由を一通り説明している間に、羽虎はアイスを食べきった。

そして、アイスの棒を口に加えたまま口を開いた。


「――――で?青島律花が彼氏と別れたってのを聞いて、浮かれちゃってるわけか頼は」


(浮かれて…る?)


「いや。…そう、ではないと思う」


確かに田端くんと別れたと聞いて、嬉しくなかったわけじゃない。

だけどそれより俺が嬉しかったのは、律花がそれを俺に話してくれたという事実で。


(それに…――――)


『律花が好き』

思わず口にしてしまった自分の気持ち。

田端くんと別れた理由より、今の正直な律花の気持ちが知りたいと…―――思ってしまったあの時。


『律花は?』

『――――し、知らないっ』


――――あの瞬間、確かに感じたんだ。

律花の横顔が真っ赤になっていて、照れ隠しにああ言ったんだって。



「それにしても一日二日で別れるなんて、彼氏だったやつも気の毒だな。青島律花って、実は悪女じゃね?」

「良いよ、律花なら悪女でも」

羽虎の言葉にムッとしながらそう答えると、羽虎はなぜかため息を吐いた。


「……お前どんだけだよ。つうか、そんな好きならさっさと付き合えば?」

「いや、付き(そ れ)合わない(は な い)。」

「あ¨あっ?!なんでだよ?」


「律花が、それを望まないから」


そう。

好きとも嫌いとも言わなかった…――――それが律花の答え。

それが今の、律花の正直な気持ちだから。


“付き合えない。けど、嫌いじゃない。”


――――そこにまだ、君がいるから。




「なんだそれ。」

羽虎の呆れた声に、顔を上げると珍しく真顔になって羽虎が言った。


「それ、ただの言い訳だろ。自分が傷付かないための」


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