表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【2】友達
62/140

59

―――思いがけないことって、あるんだな。


思ったよりも美味しくイチゴのアイスを食べていた私は、そんなことを思っていた。


(このソーダとイチゴ、絶妙にマッチしてて美味しい!)


上機嫌に食べ進めていた私は、次の瞬間――――更なる思いがけないことが起こるなんて……予想できるわけがなかった。



「それで?」


頼の声に、アイスを食べながら私は顔を上げる。

完全にアイスに夢中で、――――油断していた。


「なんで田端くんと付き合えないって言ったんだよ?」


(んなっ!!!!?)

残り半分になったアイスをかじろうと、口を開けていた私は……池にいる鯉みたいに口をパクパクさせてしまった。


「なっ、なんで今それ訊く?」

声が動揺のあまり裏返った。その恥ずかしさからか顔の温度が上がっていき、赤面しているのが分かって、私はそれを隠すようにうつ向いた。


「なんでって…路上で話すことでもなかっただろ?」

「・・・・まぁ、」

冷静にそう返されて、つい納得してしまう私ってどうなんだろう。だけど、・・・さぁ。

こっちにだって、心の準備とか……必要なんだけど?!


「田端くんと仲良かったのに、なんで?」


長い睫毛を若干臥せて、切なそうな表情を向ける頼。

何がそんな、悲しいの?

私、別れない方が良かった?

なんでそんな表情(かお)、すんの?


(――――頼が悲しいと、私も悲しい・・・)



すぐそこにある悲しげな表情の頼に、思わず手を伸ばしそうになった私は、そこで自分の置かれている状況に気がついた。


「―――あのさ、頼、」

「ん?」

「とりあえず、顔・・・近いんだけど。」


なぜソファーに座る私に、覆い被さる必要がある?

というか、絶対おかしいからこの距離感!


「そう?」

「そう!だからちょっと離れ……」

離れてよ、と頼の身体を押し返そうとしたその時だった。


「律花が好き」


頼の言葉が、上から降ってきた。


(だから…――――なんで、今なの?)


軽く目眩がする。

私の心を全部支配する、頼の言葉。


(こんな、急に、そんなこと言う?)


感情が追い付かなくて、感極まって、泣いてしまいそうだ。じわぁっと目頭が熱くなる。


「律花は?」

「――――し、知らないっ」


咄嗟にプイと横を向いてそう答えてしまう、可愛くない私を、頼がクスクスと笑う。


「そういう照れ屋なところも好き」

「も、もぉ!イチイチ口にしなくていいから!」


追い込んで、逃げられなくしようとしてない?

でも追い込まれると……怖くて逃げ出したくなる。


(この雰囲気に、もう堪えられないよ……っ!)

頼の言動に困惑していた私は、ソファーに座ったまま身動きもとれず、ただ頼を見つめた。


「――――口にしておかないと、後悔するから」

「え?」

さっきまで楽しそうに笑っていた頼が、急に真剣な表情になる。


「頼…?」

「もう、後悔するのは嫌なんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ