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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【1】律花と頼
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呆然としながらも、足は教室へと動き出す。戻らないと、午後の授業が始まってしまう。

―――こんな真面目しか取り柄がない私が、憎い。


(べ、別にあんなの。私のファーストキスとかじゃないし!)

口を手で拭うようにして、そう言い聞かせ平静を装う。


嘘ではない。

私のファーストキスは幼稚園の時。

だから本当に今のが初めてとかではない。


(ああ…私の、バカっ!)

―――そう思い返して、自爆したことに気付いた。


(――――その時の相手も、(あいつ)じゃないか!)


ダメだ、完全に動揺しすぎだ。

唇が触れた瞬間、胸がぎゅうっと苦しくなったのを思い出してまた苦しくなる。



「あ、お帰り律花」

教室に戻ると里桜が笑顔で迎えてくれた。

「うん…」

(なんか、顔…見れない―――。)


ぎこちなく答える私の顔を、里桜が覗き込んできた。


「あれ?律花なんか顔赤いけど大丈…「何でもないよ、大丈夫」

(うわ、思いっきり顔背けちゃった・・・不審に思ったよね…)


「そ?つらいなら無理しないで保健室行きなよ?」

「・・・うん。」


絶対怪しまれたと思ったのに、里桜はそれ以上聞いてこなかった。

予鈴が鳴って席に着くと、ずっと落ち着かない。後ろに頼が座ってると思うと、背筋が伸びる。


(意識…し過ぎだってばー―ー)


不意に思い出してしまった。


『嫌がらせする』


今朝、頼が私にだけ聞こえるように耳元で囁いたことば。


(そっか。さっきのあれ(あのキス)は、“嫌がらせ”…?)


チクンと痛む胸が、過去の自分とシンクロした。


『別に好きじゃない』

“あの日”の頼の言葉がよみがえる。


(―――私…本当に、嫌われてた…?)





「青島さん、赤下くん」

五時間目の授業は、担任の百田(ももた)先生の古典。ガイダンスが一通り終わった後、突然私と頼の名前が呼ばれた。


「そういえばクラス委員決まってないの、うちのクラスだけなのよね。だから前期はとりあえず、二人にお願いしてもいいかしら?」


「え?」

(何それ…)


「だって、皆やりたがらないし。お願い。ね?」

百田先生が、ね?と言って手をあわせてくる。

クラスは静まり返っていて誰も何も言わない。多分ここで私が「嫌です」と言ったら今度は他の誰かが指名されるのだろう…。


(これ、拒否権ないよね…?)


「・・・はい」

観念して頷くと、ホッとしたように百田先生が視線を私の後ろへと向ける。


「ありがとう青島さん。赤下くんは?」

「…分かりました、やります」


後ろから、頼の嫌そうな声が聞こえてきた。


(なんでこんなことに…―――私、高校入ってからついてない。)


「じゃあこれでA組のクラス委員は青島さんと赤下くんで決定ね。ああ良かった。じゃあ早速今日の放課後委員会あるみたいだからよろしくね!」


百田先生がニッコリ笑ってそう告げた。


(ああ…――――本当(ホント)ついてない。)




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