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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【2】友達
51/140

50@里桜視点

『お、里桜ちゃん』

私に向けてくれる、あの優しい表情が好きだった。


『里桜ちゃんはかわいいよ』

そう言って頭を撫でてくれた時、私は胸の高鳴りを感じていた。


だけどこれが“恋”だと自覚したときには、ーーーー彼とは会えなくなっていた。

もうずっと会えていないのも、私と彼にはなんの繋がりもないと思い知らされる。


(こんな気持ちなんか、いっそ消えてしまえば楽になれるのにーーーー。)


翌日の昼過ぎに合宿は終わった。学校で解散となった後、名前も知らない男子に呼び止められて告白されてーーー戻ってきたらすでに律花は居なくなっていた。


(・・・・帰ろ。)


律花と帰る時はもっと景色もキラキラして見えていたのに、ーーー今日はただ蒸し暑いだけ。


(仲直り、したいな…)



『里桜には分かんないよ!』

昨日、初めて律花と喧嘩した。あんなふうに本気でぶつかったのは、初めてだった。


(分かるわけないよ・・・。)


私は両想いになんてなったことがない。

だから私は、赤下(好きな人)と両想いな律花が、ただ羨ましかった。


ーーーなのに付き合わない二人が理解できなくて、もどかしくて。


大好きな律花と、私と同じくらい律花を大好きな赤下。二人がうまくいくことを祈っているだけなのに。


(なんでこんな、上手くいかないのかな・・・)


「あ!里桜ちゃん、久しぶり!」

虫の居所の悪い私を、空気を読まない声が呼び止める。

振り返れば…あの女、西野美樹が私の後ろに立っていて、私はいつものように笑顔を向ける。


「あぁ美樹ちゃん、久しぶりだね。クラス別れちゃって残念だったよぉ」

「頼、見なかった?」


(無視(スルー)ですか…そうですか。)

にしても、ケバくなったなぁ。これが俗にいう“高校デビュー”ってやつなのかな?


にこやかに社交辞令を述べた私を華麗にスルーして、美樹ちゃんが畳み掛けるように訊いてくる。


(この子、本当に苦手だわ。)


赤下はこのあと部活だと言っていたけど、残念ながらそれを正直に答えるほど私はお人好しではないのよね。


「あー分かんないや、ごめんねぇ。」

(なぁーんて、心にも思ってないけど。)

心の中で舌を出しほくそ笑みながら、私は彼女に軽い口調で否定してみた。


「ていうか美樹ちゃんさぁ、赤下のことその呼び方(名 前 呼 び)はやめたらどうかなぁ?なんか違和感あるよ?」


赤下のことを“頼”と呼んでいいのは、律花だけ。私はそう思ってる。


「里桜ちゃん、私と頼が付き合ってたの知らないの?」

「ん?知ってたけど?」

なぜにそんな誇らしげなのかな?動揺を誘おうとしたのか、過去の栄光のつもりなのか知らないけど、私にはそれ、なんのダメージにもならないよ?

虎ちゃんから聞いてたしね。

中学入ってすぐ、赤下が西野美樹ちゃんと付き合ったって。


(ーーーだけど、“だから、何?”)

「もう関係無いよねぇ?」

私の言葉に、彼女は少し苛立った表情を見せた。


「私はまだ頼とやり直したいと思ってるの。それに律花ちゃんには彼氏できたんでしょ?」

「・・・・・」

うーん。

まったく諦め悪いなぁ…。

またややこしくなるじゃないの。


「律花と赤下は、絶対付き合うことになるよ?あの二人の間には誰も割り込めない。たとえ少しの間でも、赤下と付き合えた美樹ちゃんなら分かるでしょ?」

「律花ちゃん、頼とは絶対付き合わないよ」


ここまで言っても、引き下がらない。

イタイ子だなぁ、ほんとに。

それ、あなたの願望ですよねぇ?


「すごぉい、なにその自信。どこからくるのぉ?」

わざと苛立たせる口調で、笑って喧嘩を売る私を美樹ちゃんが不敵に笑う。それがまた、私を苛つかせる。


あーんな(● ● ● ●)ひどいこと(● ● ● ● ●)言われたら、なかなか付き合うとか出来ないと思うなぁ私。」


(あぁ…そうか。そういう(● ● ● ●)こと(● ●)…。)


「知ってるんでしょ?」


美樹ちゃんが勝ち誇った顔でそう訊いてくる。

知っていて、そう訊ねてるんだから本当に性格が悪い子だよね。


(目障りだなぁ、本当(ほんと)。)


「まぁとりあえず、美樹ちゃんも頑張ってね。」


私は笑顔で手を振ると、彼女に背を向ける。


「うん、また(● ●)ね。」

そんな声を背中で受けながら、私は歩き出す。


絶対に二人の邪魔はさせない。

ま、美樹ちゃんには赤下の心は絶対動かせないだろうけどね。

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