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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【2】友達
48/140

47@頼視点

律花が好きだ。

傍にいたいと思うのも、誰にも渡したくないと思うのも律花のことが好きだからだ。


(だけど、それが全部じゃなかった)


「ごめんね、頼。私……」


そんなふうに謝って欲しかった訳じゃない。

そんな悲しそうな顔をさせたかった訳じゃないんだ。


(ただ、以前(まえ)みたいに…笑っていて欲しいーーーー)


「私、行かなくちゃ…」



「あ、赤下!」

元来た道を戻っていると、息を切らし走ってきた笹野が俺を見つけて立ち止まった。


「あれ?―――律花と一緒じゃなかったの?」

「律花ならキャンプファイアーの会場に向かったよ…」

俺は力なくそう答えた。すると笹野の顔が険しくなる。クラスの男子達(やつら)が見たら、驚くだろうな。普段お嬢様みたいな雰囲気で澄ましてる笹野が、こんだけ怖い顔したら。



「もしかして田端くんのところに……行かせたの?」

不機嫌な声で、笹野が言った。


行かせたくて行かせたわけじゃない。

だけど律花が、自分で決めたことだから…。


(って、引き留めなかったんだから、行かせたってことか……)

自嘲気味に、そんなことを思う。

そんな俺に、笹野が真顔で言った。


「無理矢理にでも、奪えばいいじゃない」

「無理やりってお前…」

「だって、律花も赤下のこと好きなのに……なんで付き合わないの?おかしくない?」


ーー焦れったいなぁ、もぉ!とやきもきする笹野に、俺は不貞腐れ、呟いていた。


「・・・・そんなの、俺が知りてーよ…」


笹野のことが好きだと友達でいられない、そう言ったのは嫉妬からだと思った。だけど律花は、田端くんを選んだ…。


(それは…なぜ?まだ、信用できないと思われてる?)


それとも…ーーーー。

『律花ちゃんとは、付き合えないよ』

西野(あいつ)の言葉が、脳裏をよぎる。


付き合えない。

俺と律花は、ーーーー…付き合えない?


暫くの沈黙を破るように、笹野が口を開いた。

「…私、直接律花と話してくる」

「おい笹野…」

踵を返すとすぐに走り出そうとした笹野を呼び止めると、笹野が振り返って言った。


「だってこんなの、間違ってる!」

「・・・笹野」


走って行ってしまった笹野の背中を見つめながら、俺は立ち尽くしていた。


どうして笹野がそこまでしてくれるのか分からない。

だけど本当に、俺と律花をくっ付けようとしてくれているのはわかる。


(ありがとう…笹野)

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