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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【2】友達
46/140

45@頼視点

(律…花っ!??)


俺が律花を見つけたときーーーー…彼女はポロポロと涙を流していた。

「律花、」

必死に涙を止めようと、堪えている彼女に一歩一歩近づきながらそう声をかければ、彼女はハッと顔をあげた。

俺を映した大きな瞳から、また涙が頬を伝う。


「どうした?」

まばたきするたびに、涙が溢れ落ちる。


(律花が……泣いてる……)


「目、洗いに行こう。」

俺はたまらず、律花の手をとった。

「やめてよ…」


おとなしく手を引かれながら、半歩後ろを歩く律花が苦しそうに小さく呟く。


「もぉ・・・優しくしないで…っ」

「優しくなんて、してない。」


俺は即座にそう答えていた。

(俺は、ちっとも“優しく”なんかない。)


今だって、キャンプファイアーの会場とは真逆方向の手洗い場に向かっている。ーー田端くんに逢わせないように。


(それにーーーー…)


「目の前で律花が泣いてて、なにもしないなんて普通にあり得ないから」


いつも泣かない律花が涙を流すなんて、気にならないわけがない。だから…何がそこまで悲しいのか、つらいのか、知りたいだけ。

だからこれは自己中心的な行動であって、そこに優しさなんてない。




人の居ない手洗い場に着くと、律花は水道の蛇口をひねり、顔を洗う。


「何があった?」

「・・・何でもないってば」

目を合わせることなく律花は不機嫌にそう答えた。ポタポタと滴が地面に落ちる。


(また、そうやって…―ー。)

『そんなの、自分で考えてよ!』


律花に言われて、あれから考えた。

なぜ律花の態度が変わったのか。

友達になりたいと言い出したのは律花の方なのに。

それすら『無理』と言い出したのは何故なのか。


“友達”にすらなれないってなんだよ?

大嫌いになった?だとしたら、なんで急に?

昨日の朝までは、うまくいっていた筈だろ?


「なぁ、律花……」

「もういいから。里桜と・・・付き合ってよ」


ーーーー律花の言葉に耳を疑った。


「・・・・?」


告白しなくても、俺の気持ちは分かってると思ってた。

だから律花が望むのなら“友達”でもいいとーーーー変わらずに傍に居てくれるのならそれでも良いと思ってたのに。

なのに律花は田端くんと付き合いだし、今現在どん底の俺に、さらにとんでもない事を要求してきた。


「・・・は?」

「里桜が好きなんでしょ?私と友達になろうとしたのも、里桜に近付く為だったんでしょ」

「律花、それ」

同じクラスの宮下さんから聞いた?、そう言おうとする俺の言葉を遮って律花が続ける。


「里桜も、頼と同じ気持ちだって言ってた。お似合いだし、良いと思う。」

律花が、また泣きだしそうな表情(かお)を堪え無理矢理笑うから…余計につらくなる。と、同時に苛立ちもする。


(誤解だって、なんで気付かないんだよ…。)


「律花、聞けよ」

「大丈夫、私は…私には田端くんがいるから。だから…もう本当に」

「聞けって!」

律花の言葉に、つい声を荒げてしまう。強がるのは勝手だが、その台詞だけは許せなかった。


「なんだよ…、それ」


(他の男の名前なんか、聞きたくない。そんな理由……聞きたくないんだよ)


手洗い場を背にした律花に、俺は詰め寄る。

ショックやら悲しみやらで頭がおかしくなりそうだ。


「なぁ…俺が笹野を好きだって本気で思ってんの?」

「だってそうなんでしょ?ていうか、そこ退いて」

「そんなこと、いつ言った?」

俺が怒りを押し込め低い声でそう問い掛けると、律花は目を逸らした。そして蚊のなくような声で答えた。


「…聞いた、から」

俺は(● ●)、そんなこと言ってないし、思ってない」

「でも、」

それでも何か言いかけた律花に、俺は言った。


「俺が好きなのは、ずっと律花だけだから。」

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