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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【2】友達
43/140

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「あ、寝不足?(クマ)出来てるよ」


朝、グループごとに並んで座ると隣の香織が私の顔を見て笑った。


「さては、彼氏ができて興奮して眠れなかったとか?」

「・・・え」

ドキッとしたのは、香織にはまだ何も言っていなかったからだ。私が唖然としていると、香織が笑った。


「私の失恋(こと)は遠慮しないで惚気けても良いんだから。律花、田端くんに告られたんでしょ?」

「・・・うん」

私が小さく頷くと、香織がやっぱりという表情で続けた。


「彼氏、でしょ?」

「そう、だね…」

一瞬近くに頼がいた気がして、私は俯いて答える。それを照れてると思った香織が抱き着いて私に笑顔を向けてきた。


「律花ったら、可愛い!!」


(寝不足で早朝からこのテンションはきついよ・・・。だ、誰か助けて…。)

―――そう思っていた時だった。


「おはよう、律花」

その声に顔をあげると里桜が立っていた。いつものように、華やかな笑顔で。私にはそれが、作り笑顔(もの)だと分かっていた。


「・・・おはよ」

小さくそう返すのと、香織が里桜に話し掛けるのはほぼ同時だった。

「ねぇ、里桜ちゃんは赤下くんと付き合わないの?両想いでしょ?」


香織に悪気はない。それは分かってる。

ただ、気になってることを訊いているだけ。

それも分かってる。


(だけど―――それ今一番聞きたくないヤツだよ…)


耳を塞ぎたい、この場から逃げ出したい。

だけど、里桜が私の腕に手を絡ませた。

まるで、逃がさないとでも言うように…。


「両想いなのかなー?まぁ…ある意味想いは同じだと思うけど。」

チラチラ私を見ては、里桜が笑顔で応える。


(限界・・・っ)


「えーなになに、それって」「香織っ、」

前のめりでさらに話をしようとする香織の言葉を遮って、私は声をあげた。里桜の手をそっと話しながら二人に笑顔をつくる。


「私・・・先生のとこ行かないと。――後でね」

言いながら背を向けて、私はその場から足早に立ち去った。


(変に思われた?里桜には特に…)


だけどあの場に居続けたら私今日、何も手につかなくなる気がする。


「律花」

聞き慣れない声に振り返ると、田端くんだった。


「――――お、はよぅ」

赤くなりながらそう声をかけてくれる田端くんに、私も照れながらおはようを返した。


「今日のキャンプファイアーなんだけど、良かったら――…」

田端くんが口を開いたその時、クラスの男子達がこちらを見て声をかけてきた。


「そこのリア充!朝から見せ付けんなよー」

「ウゼー」

からかうような言葉に、私は嫌悪感を顕にして男子達を睨んだ。


「ぅわ、(こわ)…」

すぐにばつの悪い表情になって男子達がいなくなると、田端くんが悲しそうに言った。


「ごめん、嫌な思いさせて…」

「なんで?田端くんは悪くないよ。てかごめん、つい睨んじゃった」


私がおちゃらけてそう言うと、田端くんが安堵したように口元を緩める。田端くんといると、穏やかな心音を感じることができて、私も笑顔になれる。


(田端くんといると、安心する…)


――――そう、思ってたところだったのに。


「律花、」


胸が鷲掴みされたみたいに、苦しくなる。この声に、いつも私の心は反応してしまう。

目の前に現れたのは、やっぱり―――…


「先生が呼んでる」


…―――頼だった。

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