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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【2】友達
40/140

39

夕方、食堂でグループごとに夕御飯を食べたあと、入浴さえ済ませばあとは就寝時間まで自由時間となっていた。里桜に誘われて女湯へと向かう途中、私は報告することにした。


「私、田端くんと付き合うことになったから。」


まっすぐのびている廊下の先を見つめながら、何の前置きもなくただ一言、私がそう言うと里桜は長くて美しい睫毛をパチパチさせて、目を見開いた。


(驚くよね、そりゃ…)


私自身、いまだ半信半疑なのだ。田端くんに限って冗談とか、からかうとかあり得ない。

だけどまさか本当に田端くんが私を好きでいてくれて、さらに付き合うことになるなんて思ってもみなかった。


(“鈍感”…か。)


「ぷ…っ、」

里桜が堪えきれなくなったかのように、突然笑い出した。私は意味が分からず不愉快な気分になる。


「なんで笑うわけ?」


「ごめんごめん。私ちょっと聞き間違いしちゃったみたいなの。律花に田端くん(● ● ● ●)という彼氏ができたとかって聞こえちゃって」

まさかねぇ、と含み笑いをしながら里桜が“もう一回、言ってくれる?”と可愛らしく首をかしげる。


「聞き違いじゃ、ないけど?」

私の冷静な声色に、里桜の表情がヒタッと凍り付いた。


「・・・・・」

「・・・・・」


女湯までの長い廊下に、暫く、パタパタと二人のスリッパの音だけが響く。



「え!?なんでっ!?」


やっと言葉の意味を理解した里桜が、私の肩に手を置いて揺さぶってくる。


「ちょ、やめてって…」

「ねぇなんで?訳が分からないし!説明して!」

「説明って・・・・」


里桜に説明する言葉がすぐに見つからなくて、私は付き合うことになった理由(いいわけ)を探してた。


「―――嬉しかったから、…かな。私なんかをずっと好きだったと、ちゃんと言葉で伝えてくれたのが。」


違う。

私は逃げただけだ。

本当の理由から目を背けてるだけで―――。


(そう。私は、“鈍感”なんかじゃない。)


そんな私を見透かすように、里桜が哀しい表情で見つめてくる。私は耐えられなくてすぐに目をそらしてしまった。


「じゃあ、赤下に告白されてたら付き合ったってこと?」

「それは、無いよ。」


今度は迷わず即答した。当然だ。

告白されることすら、あり得ないのだから。

なぜなら頼は――――…。


途中で考えることを放棄した。このままこの気持ちを切り取って、捨ててしまいたい。


「無理して付き合っても田端くんに失礼だよ?」

「無理なんかしてない」

ムキになってそう言い返す私に、里桜が真顔になる。


「じゃあ、」


里桜の色気のある唇が、ゆっくりと動いた。


「赤下のことは、いいのね(● ● ● ●)?」


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