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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【2】友達
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「まずは一個、クリアだな!」


合宿地に着いて、初日である一日目は、グループごとに分かれウォークラリーだ。各グループ、事前に渡されるコース図に従って進み、途中で与えられる課題を解決しながら設定された時間内で歩き、目的地を目指すというものだ。勝敗はタイム得点と課題得点の合計で決まるらしい。まず1問目は、各クラスの担任の名前。あっさり与えられた用紙に書き込んで、次へと進む。


「ええっと、次は…こっちか?」

「よし、行こう。おーい、こっちだぞ」

森林の中を、地図を見て先を歩くのは同じグループの佐藤くんと鈴木くん。そのすぐ後ろに戸塚さんというおとなしい女子と、無口でマイペースな感じの三浦くんが着いていく。そして、その後ろを私と香織が歩いていた。


「香織、大丈夫?…きつい?」


いつになく口数が少なくなっている香織が気になって、声をかけると、香織が顔を上げると笑顔を作って答えた。


「あ、ごめんごめん。大丈夫だよ」

「しんどくなったら、言ってね?休憩するから」

そんなことを言いつつ、“私がもうすでに休憩したいんだけどね”なんて心の中で苦笑していると、香織が声を潜めて言った。


「律花、―――実はね」

「ん?」

「今朝、赤下くんに告ってフラれちゃったんだ」

「えっ」

(こ、(こく)っ、……で、フラれちゃ…っ!?)

まさかあのあと、そんなことになっていたとは思わなかった私は、つい声を上げてしまった。


(告白…、したんだ…)

行動の早さに驚きながらも、私は心のどこかで焦っていた。焦っていながら、頼が告白を断ったことに…ホッとしていた。


(――――私・・・身勝手過ぎる。)

香織に見透かされないように、少し俯いて髪で表情(かお)を隠す。ちょうど坂道だから、足元に気を付けて歩いているように見えてるはずだ。


「そりゃそうだよね、まだ知り合って一ヶ月も経てないのに。だけどさ、やっぱりカッコイイし、誰かに先越される前に早く言わないとって焦っちゃって」

香織も足元に視線を向けながら、明るく笑って言葉を続けた。だけど、その声は…少しだけ声が震えていた。


「――――赤下くんの気持ちも考えずに。そりゃフラれるよね」

「香織…」

慰めるように、私は香織の背中をそっと撫でた。そんな私に、香織は苦笑いを浮かべて言った。


「赤下くん、やっぱり好きな人いたよ。」


その言葉に、背中の手をピタりと止めていた。

ドキンと跳ねた心臓が、香織に伝わらないように背中に回していた手をそっと離す。


(“好きな人”………)


「…里桜ちゃんのこと、好きみたい」


(――――え?)


ガンと頭を殴られたような衝撃で、私は立ち尽くす。香織はそんな私に気付かず、足を進めながら言った。


「あの二人なら、お似合いだよね。みんなが夢見ちゃう前に付き合えばいいのにね」



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