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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【2】友達
36/140

35、行事

「おはよう、律花」


土曜の朝、玄関を出ると頼が立っていた。

私達はlineを交換した日から他愛ない会話をするようになった。そして頼はまた、毎朝私の家の前まで迎えにくるようになっていた。いまだに照れ臭くもなるが、朝こうして頼が待っているとまるで昔に戻れたようで嬉しかった。

―――だからなのか、自然と口元が緩んでしまう。


「うん、おはよう」


「・・・なんだよその荷物。多すぎだろ」


私のバッグの大きさに、頼が笑った。

今日から一年生は、二泊三日でオリエンテーション合宿。私はタオルや着替えなど万が一に備えて多目に持ち込まないと安心できないタチで、しかも枕が変わると寝られないため、マイ枕も持参している。だからかなりの大荷物になってしまったのだ。


「頼が少なすぎなんじゃないの?」

頼は私の半分ぐらいの大きさの旅行鞄を、軽々と肩にかけていた。逆に忘れ物がないか心配になるぐらいのコンパクトサイズだ。


お互い荷物の大きさを言い合いながら、私達はいつものように学校へと歩いて向かっていた。


「おはよう、お二人さん」

クスクスと笑いながら、途中(ここ)で里桜が合流する。

「里桜」

「笹野、おはよ」

こうして三人で学校へと向かうのが、日課になりつつあった。


「赤下、今日はよろしくね」

「おぉ、よろしくな」

そう言って微笑み合う二人に、きゅっと胸が苦しくなった。

二人は同じグループなのだから、そんな会話くらい普通にするだろう。そう頭では理解できているのに、―――気持ちというのは正直だ。


(その理由が思い当たらないふりをして、いまだに逃げてる私…)


分かってるんだ・・・―――こうして三人でいると私はこうして時折、里桜に嫉妬してしまっていること。


(だけど、…それは言えないから―――)


「律花、どした?」

黙り込んでいた私の顔を、頼が心配そうに覗き込もうとしてきた時だった。


「おーい!」

背後からそんな明るい声がして振り向けば、香織が笑顔で駆け寄ってきた。


「おはよー!」

「あ、香織…。おはよう」

追い付いた香織がニコニコしながら私達に挨拶をしてきてくれたのに、私は穏やかでいられなかった。


『私、赤下くんと仲良くなりたいんだぁ!』

あの時の香織の言葉が、ずっと胸に突っ掛かっていて。

“頼がいたから、来たの?”――――とか…そんなふうに勘繰ってしまう自分に、自己嫌悪になる。


(心、狭いな…―――)

私だけの頼じゃないのに。

友達でいようって言ったのは自分のくせに。


(―――独占したいなんて、どうかしてる…)



「じゃあ私たち先急ぐから。また後でね―――――行こう、律花」

「え、何…?ちょっと里桜っ?」


突然、里桜が香織に笑顔でそう告げたかと思えば、私の背中をぐいっと押した。なぜ先を急がなければならないのか全く理解できていない私は、困惑しながら後ろの里桜を見る。


「ほら、気を利かせなくちゃ!律花、言ってたでしょ?」

里桜がウインクしながら、こそっと耳打ちした。なにがそんなに楽しいのか、満面の笑みだ。


「・・・そう、だけど…」

ハッキリ同意できない私を、里桜はしたり顔で見つめてくる。


そう。

そうだよ。

香織は頼が好きで・・・。


『あ、もしかして・・・律花も?』

『―――え、私?』


――――そう聞かれた時、私は咄嗟に…。


『まさか。ただの幼馴染みだし、ナイナイ』


(―――・・・嘘をつくとバチが当たるって、本当なんだな…)





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