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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【1】律花と頼
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記憶の奥底に沈めておいたはずの記憶。

なんで今になってそれが夢となって出てきたのか―――私はどこかで気づいていた。


『私、赤下くんと仲良くなりたいんだぁ!』

高校に入って初めて出来た友達が()った、あの言葉が――――あの時と重なったからだ。


『あ、もしかして・・・律花も?』

―――そして香織にそう聞かれた時。


(私はまた(● ●)、ハッキリ言うことができなかった。)




教室までの道のりが、こんなに長いと感じたことがなかった。

ドキドキ心臓の鼓動が激しくて、歩くのも息苦しいくらいだ。


(なんでわざわざ迎えに?っていうか、手!なんでこんなナチュラルに繋いでるわけ?)


「ちょっと…「…体調、そんな悪かったのか?」


“手、離してよ”―――そう言うつもりだったのに、頼が心配そうにじっと見つめてくるから、私は言葉を切った。そして目をそらして、ぶっきらぼうに答える。


「・・・そんなことない、今教室戻ろうとしてたところだったし」

私の態度は、自分でも嫌になるほど可愛いげのないものだった。


「そか…」

それなのに、頼はホッとしたように頬を緩めるから――――。


(…ぅわっ)

不意討ちを喰らったみたいに私の心臓を貫いて、ぎゅっと締め付けられる鼓動に、勝手に赤くなっていく頬。そして―――


『赤下は律花が好きだって言ってるの!』


(ああ…もぉ。)


―――なんて最悪のタイミングで、里桜の言葉が脳裏をよぎるんだろう。


私が赤面を隠すようにそっぽを向くと、繋いでいた手はすぐに離れた。ホッと安堵した筈なのに、どこか手持ち無沙汰に感じたのは気のせいだろうか?いや、気のせいに違いない!


「なぁ…」

頼が低い声で、口を開いた。私は顔を背けたまま答える。


「なに?」

「今日、――――帰り待ってて?」


そのフレーズに、私は思わず頼の方に顔を向けてしまう。


「え・・・・?」

(それって…もしかして…。)


期待してる訳じゃない。

そう思いたいのに…―――「告白」の二文字が頭から離れない。


私が隣を歩く頼を見上げた瞬間、今度は逆に頼が私から顔を背けた。その態度が、もう…告げていた。


「律花に、話したいことがあるから」


(嘘…でしょ?)


―――ここでもまた、里桜の言葉が頭をよぎる。


『赤下は律花が好きだって言ってるの!』


(ああ、…どうしよう…)

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