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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【1】律花と頼
30/140

29

一時間目の授業は、体育。

更衣室で着替え終えるのと、私が昨日の出来事を話し終えるのはほぼ同時だった。


「・・・・律花、」

パタン、とロッカーの扉を閉めると、里桜が憂いのある大きな瞳を、長い睫毛でふせて隠す。

ついでに派手なため息付きという、なんとも悩ましい表情。


「里桜?どうした?」

「“どうした”、じゃないよ…っ」


心配しただけなのに、噛みつかれそうな勢いで里桜が私に言う。


(里桜、なんか情緒不安定じゃない?)


「“田端くんのこと”なんて、今更すぎるし!」

「今更って・・・」

怒りに任せて里桜が、吐き捨てるように言うから私はあきれてしまう。


(ん?)


なんかー―――今、さらっと…言わなかった?

(“今更すぎる”…って、――――え?)


それって…。

田端くんが…私を好きとかいう…それ?


変に意識して、顔が赤くなる。


―――待て、待て、まさか。

田端くんに言われた訳じゃないんだから、まだそうと決まったわけじゃないんだから。


必死に平常心を保とうとしても、顔の赤みが引いてくれない。むしろ、どんどん赤く、熱を帯びていく。



「ああ…もう。私が期待してたのはそっちじゃないのになぁ…」

頬を隠すように手で覆う私に、里桜が残念そうに呟く。


「そっちじゃない、って何よ」

私が聞き返すと、里桜がもどかしそうに私を見つめる。

そして、ゆっくり口を開く。


「赤下だよ・・・」

「へ?」

脳内が田端くんで一杯だったところに、里桜が突然頼の名前を出してくるから、もはや処理しきれず。私は何とも間抜けな反応をしてしまった。


――――それが、里桜のイライラを募らせてしまうとも知らずに。


「赤下は律花が好きだって言ってるの!」


「なっ…!」

(突然、何を言い出すんだこの子は!)


心臓が飛び出しかけて、思わず胸を押さえる。


(冗談にしても、破壊力ありすぎるから!)



「なんで気付かないかなぁ・・・逆に。」

里桜が不思議そうに呟く言葉が、私の左耳から右耳へと通り抜けていった。




いやいや。


それこそ、あり得ない。


あり得ないよ、それは。



「だって私、“好きじゃない”って言われたんだよ?」

自嘲気味に笑いながらそう言う私に、隣を歩く里桜は真顔になると、言った。


「一体いつ(何年前)の話よ、それ。っていうか、それ本当に赤下の本心だと思ってた?」



ふと、この間言われた頼の言葉が…脳裏をよぎる――――。

『“あの日”、なんで俺があんなこと言ったのか…とか、律花は一度も聞かなかった。』



(もう、虐めないで――――・・・)


耳を塞いで、その場にうずくまりたい。

ここから…逃げ出したい。


そんな私に里桜は一言、追い討ちをかける。


「・・・思ってないよね?」


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