27、告白
「はい、しおりは行き渡りましたねー?では各自班長の席に集まって自己紹介してください!」
朝から元気な百田先生の声が教室によく響く。
今朝のホームルームは、今週末に行われるオリエンテーションについて。グループメンバーは担任の百田先生の独断で事前に決めてあったらしく、昨日作ったしおりにはすでに決められたグループが記載されていた。それを全員に配布して、メンバー発表となった。
(マジか…)
自分の名前の横に“班長”の文字。うんざりしながらも私の目は無意識に、里桜と…―――頼の名前探していた。
(二人・・・一緒なんだ――――――…)
胸の中に暗雲が立ちこめる…。
…モヤモヤする。
「律花ー!」
香織に呼ばれてハッと我に返り、顔を上げる。
「私達同じグループだね!嬉しい!」
「あ、うん。よろしくね」
満面の笑みで私の席までやって来た香織に、取り繕った笑顔で答えていると、教壇から先生が言った。
「あ、赤下くんのグループはこっちに集まってくれる?」
「あ、はい。」
私を挟んで前後からそんな会話をされて、私は前に出てくる頼の背中を自然と目で追ってしまう。
百田先生に言われ、教壇の近くに集まる頼のグループ。
恐らく、“班長”である頼の席に集まるのは私と彼の席が前後で近すぎて狭かったからだろう。
そんなことを頭で考えながら・・・教壇に集まって頼と話している里桜の姿から目が離せないでいる。
(―――分かってるはずなのに・・・・)
頼は、私の幼馴染み。
里桜も、私の小学校からの幼馴染み。
二人とも、小学校が同じ。
ただ、私と頼の家が近いだけで。
頼と里桜も、幼馴染みに変わりない。
――――私だけが“幼馴染み”じゃないって。
(あぁ…もうっ!なんで…っ)
昨日のことを思い出して、ズキンと痛む。
『私達、健全なお友達になろ?』
『・・・は?』
――――私が振り絞った渾身の提案。
それを伝えた途端、頼は分かりやすいほど不機嫌になった。
『なんだそれ』
冷たい眼で見下ろされて、思いきり否定された。
(せっかくこっちが歩み寄ろうと努力してやったってのに、頼のやつ!!)
――――思い出したら、イライラが増してきた。
「いいよねぇ、里桜ちゃんは赤下くんと同じグループで!」
頼の方を睨んでいると、香織が私の視線を辿りながら言った。
「ねぇ律花。…里桜ちゃんって、可愛いよね」
「え?うん、そうだね」
香織の唐突な発言に驚きつつも、私は素直に相槌を打った。すると香織が苦笑いを浮かべて言った。
「赤下くんと仲良いし。もしかして二人、付き合ってるのかなぁ?」
「それは無い!それは!」
私は即、全力で否定する。あまりに力が入ってしまい香織が一瞬少し目を見開いた。そして、ホッとしたように微笑んで頬をピンクに染めながら嬉しそうに言った。
「そっか。じゃあ私、頑張ろうかな!」
「え。」
香織の言葉が、私の心に不協和音となって響く。
暗く…―――どこまでも低い音。
(この感じ…――――覚えてる。)
「私、赤下くんと仲良くなりたいんだぁ!」
「そ…っか。」
明るくそう宣言する香織に笑って素っ気なく答えたつもりだったけれど、香織が何か感じ取ったように私の顔を覗き込む。
「あ、もしかして・・・律花も?」
「―――え、私?」
(私は…―――――)