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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【1】律花と頼
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25

「何すんの、ばかっ!」

抱き締められたのが堪らなく恥ずかしくて、私は顔を真っ赤にして怒鳴った。


するとばつが悪そうに視線を逸らした頼が譫言のように呟く。


「ごめん、つい…」


その言葉を聞いた瞬間、私の中でプチンと何かが切れた。


はぁぁぁぁ!?

“つい”だとぉぉぉ?!


「頼のそういうとこ、嫌いっ!」


立ち止まったままの頼を置いて私は一人、怒りに任せてズンズン早足で歩く。


(“つい”ってなんなの!?誰でも良かったわけ?)


そもそも急に押し黙って、なんか苦しそうに顔歪めたりなんかするから。


(もぉ!――――心配して損したっ!)


家の前まで着いて、玄関のドアに手をかける。


(“つい”って、なによ――――・・・)

先程の頼の言葉を思い出すだけで、心臓の辺りがギュッと詰まる。


あんな言われ方をしたからショックだったのか?

―――それとも…?

考えたくもない可能性の一つを、つい思い浮かべてしまう。


(好きじゃない、あんなやつ!)


そう心の中で何度も唱えるのに、頼の腕の中にすっぽりと入ったときの温もりが・・・驚くほど心地好くて。その瞬間、ドクンと胸が甘く高鳴って。

まるで中毒みたいに…私の身体に染み付いた気がした。


(ダメダメ!あり得ないから!)



『嫌がらせする』


――――あの言葉を、忘れたわけじゃない。


『別に好きじゃない』


――――あんな思いはもう、したくない。


(そうだよ…。頼は私のこと、嫌いなんだよ。期待するな!)


もう傷付きたくないからそう制御(コントロール)しようとして。

だけど、どんなに頭の中で指令をかけても、胸は勝手にドキドキと鼓動を止めない。


(苦しいのは、私だ・・・)



ガチャリと玄関の扉を引き開けると、ちょうど母が出掛けるところだったのか玄関先にいて驚いた。


「あ、おかえり律花!ちょうど良かったわこれ、頼くんに持っていって」


(なんでいつもこう…タイミングが!!)

私は制靴を脱ぎながら素っ気なく答えた。


「・・・・無理、お母さんが行けば?」

「もー何よ、また喧嘩?だったらなおのこと、これ持っていって仲直りしてきなさい」

「え、ちょっと!」


ガサッと料理が入った紙袋を押し付けられて、玄関先から上がることができない。


「あんたの晩御飯も、バッチリ入れといたから!」


(はぁぁっ?)

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