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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【1】律花と頼
25/140

24@頼視点

こんなの、…俺の一方的な八つ当たりだって分かってる。分かってるけど…―――。


(どうして分かんないんだよ…)


たとえそれが正論でも。

律花ちゃんが…俺より彼を選んだみたいで。

俺はそれが、堪らなく悔しいんだってこと。


「誰だって見れば分かるよ、そんなの」


――――気づいて欲しいと思ってるんだ…


「律花が鈍感なだけだ」


――――俺が、君を想ってることを。

「律花も、・・・田端(あいつ)が好きなのかよ?」

「・・・え?」


平静を装うつもりで俺はそう訊ねた。

だけど頬の表情筋は思うように上がってくれない。

結局、不貞腐れた顔をして俺は律花を見ることなく、足元を見ながら歩いていた。



律花は俺の質問の意味が分からなかったのか、暫く考えているようだった。そして、ようやく俺の言葉を理解したかのように表情を変えていく。


「―――わ、私は別に・・・」

そう言い淀む彼女の頬は、赤く染まっていった。


(ああ…やっぱり…)


他の男を想って、そんな表情(かお)するなんて。

本当に律花ちゃんは残酷だよ。


言わないで。

それ以上は、何も。


君の口からは、聞きたくないから。


(いっそ、塞いでしまいたい…)


「頼?」


俺の気持ちを全く分かっていない彼女は、苦々しく顔を歪めた俺を心配そうに覗き込む。


「どうしたの?また熱でも…―――」


無防備に近寄る彼女の腕を引いて、俺はこの腕のなかに閉じ込めた。


(渡したくない・・・――――。)


「や…っ」


反射的な態度で、彼女にドンッと両手で胸を突き返すように押された。

――――それは俺に対する完全な“拒絶”だった。



「何すんの、ばかっ!」

顔を真っ赤にして、すごい剣幕で怒る彼女を…俺は直視できずに視線をそらす。


「ごめん、つい…」

(気持ちが、抑えきれなくて…)


俺がばつの悪い思いと、拒絶されたことへのショックで項垂れていると、律花ちゃんが言い放った。


「頼のそういうとこ、嫌いっ!」


それは俺の心を折るのに、充分な一言(ことば)だった。

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