24@頼視点
こんなの、…俺の一方的な八つ当たりだって分かってる。分かってるけど…―――。
(どうして分かんないんだよ…)
たとえそれが正論でも。
律花ちゃんが…俺より彼を選んだみたいで。
俺はそれが、堪らなく悔しいんだってこと。
「誰だって見れば分かるよ、そんなの」
――――気づいて欲しいと思ってるんだ…
「律花が鈍感なだけだ」
――――俺が、君を想ってることを。
「律花も、・・・田端が好きなのかよ?」
「・・・え?」
平静を装うつもりで俺はそう訊ねた。
だけど頬の表情筋は思うように上がってくれない。
結局、不貞腐れた顔をして俺は律花を見ることなく、足元を見ながら歩いていた。
律花は俺の質問の意味が分からなかったのか、暫く考えているようだった。そして、ようやく俺の言葉を理解したかのように表情を変えていく。
「―――わ、私は別に・・・」
そう言い淀む彼女の頬は、赤く染まっていった。
(ああ…やっぱり…)
他の男を想って、そんな表情するなんて。
本当に律花ちゃんは残酷だよ。
言わないで。
それ以上は、何も。
君の口からは、聞きたくないから。
(いっそ、塞いでしまいたい…)
「頼?」
俺の気持ちを全く分かっていない彼女は、苦々しく顔を歪めた俺を心配そうに覗き込む。
「どうしたの?また熱でも…―――」
無防備に近寄る彼女の腕を引いて、俺はこの腕のなかに閉じ込めた。
(渡したくない・・・――――。)
「や…っ」
反射的な態度で、彼女にドンッと両手で胸を突き返すように押された。
――――それは俺に対する完全な“拒絶”だった。
「何すんの、ばかっ!」
顔を真っ赤にして、すごい剣幕で怒る彼女を…俺は直視できずに視線をそらす。
「ごめん、つい…」
(気持ちが、抑えきれなくて…)
俺がばつの悪い思いと、拒絶されたことへのショックで項垂れていると、律花ちゃんが言い放った。
「頼のそういうとこ、嫌いっ!」
それは俺の心を折るのに、充分な一言だった。