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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【1】律花と頼
24/140

23

「部活…お疲れさま」

「おお」


部活が終わった頼とそれを待っていた私はそれだけ言葉を交わし、それとなく一緒に歩き出す。


(―――か、会話に困る!)


二人で帰るのは久しぶりで、なんか変に緊張してしまう。隣を歩く頼に、私は歩く速度を合わせる。


『律花ちゃん、待ってよー』

―――ランドセルを背負っていた時は、私より背の低かった頼が、私を追いかけていたのに。


(いま、隣りを歩いてるのが“頼”なのに“頼じゃない”みたいで…―――)


いつも、何を話してたんだろう?

お互い会話のない瞬間だってあったはず。

なのに。


(なんでこんな、沈黙がつらいの・・・っ?)


「田端くんも一緒に帰れば良かったよね」


沈黙に耐えられなくなって、私は会話を始めてみようと試みた。共通の話題もなく、考えて考えて、先程の絡みで“田端くん”の名前を出した。


「…なんで?」


少し間をおいてから、頼が低く、小さい声で問い掛けてきた。それがなんだか怒っているように見えて、私はその意図がわからず戸惑う。


(え?なんで?私はただ、さっきみたいに会話できたらと思っただけなのに。)


「なんでって…。せっかく同じクラスだし、家も同じ方向だし…。そもそもあんた、仲良くしたかったんじゃないの?」

「は?そんなわけないだろ」

(え?)


強い口調で。拒絶するみたいに。

頼のそんな口調が、まるで自分が言われたみたいにズキッと胸に突き刺さった。


「田端くんだけは絶対、あり得ない。」


((ひど)…。そこまで言う?)


こないだ田端くんのこと気にしてたじゃん。

仲良くなりたかったんじゃなかったの?


(やっぱり、頼が分からないよ…)


悲しいような、悔しいような。

複雑な気持ちが胸の中に広がる。


(―――イライラしてしまう…)


「田端くんが頼に何したのか知らないけど、そんなふうに言うのはどうかと思う。今日だって、わざわざ残って手伝ってくれたんだよ?それに田端くんは」

「“田端くん田端くん”ってさ、」


きつい口調になっていたのは、私だったはずなのに―――…。頼が声を荒げて、私の言葉を奪う。


私はそんな苛立った声の頼に、ビクッと肩を揺らし立ち止まる。

頼が、こちらを向かずに淡々と続けた。


「あいつのこと優しいとか言ってるけど、あんなの優しさじゃなくてただの下心でしかないんだよ。律花が好きだからそうやって近付いてるだけだって、なんで気付かないんだよ…っ!」


ちょっと待って。

―――“田端くんが”、“私を”、“好き”?

今、そう言ったの?


「何を勝手なこと言ってんの?田端くんに限って、下心とかあるわけない!だいたいあんたは田端くんのこと何も知らないでしょ?」


なんで私は、頼と口喧嘩してるんだろう。

“田端くん”(他の人)のことで。


―――一瞬、頭の片隅にそんな考えがチラついたけれど、私の口は止められなかった。


頼がこちらをゆっくり向き、私を見下ろす。


怒っているような、悲しんでいるような目をして。

見つめられるのがつらくなるような表情で。

一言、言った。


「誰だって見れば分かるよ、そんなの」


そして、吐き捨てるような次の一言が、私の胸にグサリと刺さった。


「律花が鈍感なだけだ」

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