18
日曜の午後。
里桜に暇だから遊ぼうと言われて、お互いの家からちょうど同じ距離にあるショッピングモールで待ち合わせた。
私たちのいつもの場所と言えば、フードコート。
ここなら水だけで心置きなくお喋りできる。
「―――今さらそんな過去の話されても、って感じだよね」
「ふふっ」
座るとすぐに昨日の一連の出来事を里桜に話すと、なぜか笑われた。
「・・・何よ」
「ん?べっつにぃ?」
笑われたことにムッとしていると、里桜が笑いを噛み締めて答える。
「さっきから、赤下の話ばっかりだなぁと思って」
(は!?)
「ちょっと聞いてた?!私は愚痴ってただけなんだけど」
私の言葉に、里桜が呆れ顔になる。
「もー。いつまで意地張ってるの?律花ちゃんは」
「はぁ?」
「赤下のこと、もう許してあげたら?」
…別に、意地なんて張ってない。
私はただ、また傷つくのが怖いだけで。
「…私と一緒に居たくないって言ったのは頼の方だし」
口を尖らせてそう呟くと、里桜が可愛らしく頬杖をついて上目遣いにこちらを見つめる。
「“居たくない”なんて言ってなかったと思うけどなぁ…」
あの時を思い出すような仕草で、首をかしげる。
「・・・・」
「男子にからかわれてた“律花ちゃん”を助けたかったからあんなこと言っちゃっただけだと、私は思うけど」
「・・・・」
(そう、かもしれない…)
―――だけど…もし、違ったら…?
(――――分かんないから…不安なんだよ)
『好きだったよ…――――幼稚園のとき』
頼はそう言った。
(だけどそれは…――――幼稚園の時だけ?)
――――小学校の時は?
手を繋いで小学校まで登校していた時は?
お互いのクラスが終わるのを待って、帰っていたときは?
(隣を歩いていた六年間、本当は嫌々だったんじゃないかって…)
「あー明日からまた、赤下がいるんだろうなぁ律花の家の前」
一人暗くなっている私を無視して、愉しそうに口元を緩めている里桜。
そうだった。
頼んでもないのに待ち伏せするって頼が言った。
『嫌がらせする』って。
「なんの意味があって、“嫌がらせ”なんか…」
「嫌がらせ?律花、ひどっ」
考え込む私に、里桜がまた呆れる。
「いやいやいや…。なんで?酷いのは私じゃないでしょ?」
―――里桜って何気に私の扱い酷くない?
「ねぇ里桜、明日は絶対待っててよ?」
とりあえず明日はしっかり約束してもらおうと念をおす私に、里桜が可愛く微笑んでしれっと答えた。
「うん。でも遅かったら置いてくね?」