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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
おまけ
139/140

バイトばれました(日常編)

「・・・ごめんね手際悪くて」

「青島さんのせいじゃないよ、今日はいつもより混んでたし仕方ないって」

バイトの上がり時間が一緒で、田端くんと店の外に出た。



簡単に考えていたけど、食器洗いも量が多くて慣れないとすごく大変だ。やってもやっても目の前に積み重なっていく皿に愕然とした。

結局見かねた田端くんが何度助けてくれたけど・・・女子の癖に皿洗いもまともにできなくて情けない。

さらにがっくりと肩を落とす私に優しくフォローしてくれる田端くん・・・いかん、本当に優しくて涙が出そう。


「土曜の夕飯時があんなに大変だと思わなかった」

「今日は近くでライブかイベントでもあったのかも。そうなるといつも以上に混むから」

「そうなんだ」


田端くんとそんな他愛ない話をして帰り道を歩き始めたところで、後ろから声がした。



「律花?・・・何してんの?」


その声に、私は反射的に振り返っていた。

頼だって、振り返らずとも分かっていたけど。


「どっ、どうしてここに・・・・」


そこには、スウェット姿なのに道行く女性(ひと)達が振り返るほど見事にオシャレに見せている、高身長でやたら顔が良い男が立っていた。

私も一瞬カッコイイと思ってしまったのは、彼女としての欲目なんだろうか?


───ってそれどころじゃなかった!


バレた?

え、なんで?どこから?


しかも、・・・ていうかやっぱり────怒ってる。


サーッと血の気の引く音がした気がするほど、私も田端くんも真っ青になる。



「なんで田端くんと?」

「───偶然、バイト先が同じになったんだよ。ね、青島さん?」

「そ、そう!本当に偶然!」

「“偶然”?」

低い声でそう問い詰める頼に、なぜか心臓がドキッと跳ねた。


「本当に偶然だよ、信じて」


何でだろう、必死に言えば言うほど怪しくなってない?


「かえろ」

冷や汗をかきまくりの私の手を取ると、頼が足早に歩き出す。


「あ・・・ごめんね田端くん、また明日!」

それだけ田端くんに伝えて、手を引かれながら必死に早足についていった。



────そして、長くて重い沈黙のあと頼が小さく声を発した。


「なんでバイトなんか・・・・しかも田端くんと」


「だから、偶然一緒になったんだってば」

「それはさっき聞いた」


繋がれていた手がほどかれて、目の前に向き直ると頼の悲しげな瞳が私を覗き込む。


(や、やめて。その捨てられた子犬みたいな顔・・・)


「なぁ、なんで隠し事すんの?」

「だ、だって・・・・言ったら頼、辞めろって言うじゃん」

「当たり前だろ!?」


(“当たり前”、なんだ?)

頼の反応に半分呆れながら、私は口を尖らせる。


「だから言わなかったんだって!てか、言えなかったんだよ」

「そんなに、辞めたくないんだ?」

「・・・暫くは」

あの子犬みたいな顔を直視しきれなくてつい、目を逸らしてしまう。


だってまだバイト代入ってないし。

始めたばかりですぐ辞めますっていうのも非常識だし。

一応最低限決められた期間まではやりとげるつもりだ。


「・・・・・」


無言なままの頼に、私は顔を上げる。

うつ向いていた頼の表情が、外が薄暗いからかよく見えない。

「頼?」

「────ちょっと・・・・ごめん」


頼は小さくそう言うと、私に背を向けてどんどん一人で先に行ってしまった。


「え、ちょっと!?・・・頼?」


(なんでそんな怒るんだよぉ?!)


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