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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【7】その行方
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127

分かってた。

本当は、分かってたんだ─────。



「頼、不安にさせてごめん」


頼に言うべき台詞(ことば)は、もう────・・・。

分かってたのに。


(・・・・泣くな、笑え。笑え、私・・・っ!)


「でも、────私は、大丈夫だから」


この一言が言えなかったのは────・・・・私の我儘だ。

震える声を誤魔化すように明るく振る舞ってみても、頼には全然効果がなかった。むしろ、眉間に皺が寄る。


「“大丈夫”って、何が?」

「・・・・聞いたんだ、舞さんから」

この話はしたくなかった。

頼の口から聞きたくなかった。

怖くて────・・・・知らないふりしていたかった。


(でも、舞さんが困ってたから───頼が反対してるって。)


「────家、売るかもって話?」


頼の言葉にコクンと頷くと、頼が溜め息をついた。


()、その話律花にしてないよな?」

「え?・・・うん」

「何でだと思う?」

「なんでって・・・・」


言葉を詰まらせた私に、頼は真っ直ぐな瞳で私を見る。


「行くつもりなんか、ないからだよ」

「え・・・・?」


「家が無くなっても、一人暮らししてでも俺はこっちに残る」

「だけどそれじゃ舞さんが悲しむじゃん」

「・・・・律花は?」

畳み掛けるように、頼が言った。


「俺は、律花が悲しむ方がずっと嫌だ」


(頼・・・・・)


「正直に言って。────律花の気持ち」


悲しいけど。

行って欲しくなんかないけど。

でも“行かないで”なんて────・・・・。


「・・・・・言えるわけないじゃん」

泣きそうな声でそう呟くと、頼も悲しそうに睫毛を伏せた。


「そっか、だよな。────ごめん」

「だって・・・・っ、」

「いや、律花の気持ちは分かってる。今のは俺が悪かった。卑怯な聞き方して、ほんとごめん」


頼がそっと・・・・壊れ物を扱うみたいにそっと、私の頬を両手で包んだ。そしてゆっくり顔を近付けて言った。


「律花、そんな表情(かお)すんなよ。・・・約束、したろ?」


いつの間にか流れ落ちていた一筋の私の涙を、頼がそっと指でぬぐってくれた。

『律花、ずっと一緒にいような』────あの時の言葉が勝手にリフレインする。



(頼、────私・・・信じても、いいの?)


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