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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【7】その行方
133/140

126、頼視点

「ちょっ、と・・・・離して」


俺の腕の中から困ったような律花の声がした。


嫌がって、逃げようとする律花に俺はつい意地を張る。


「律花が白状しないと、ずっと離さない」


そう言えば、すぐに白状すると思ったから。

何故なら律花は、俺に触れられるのを嫌がるから。


だから、すぐに白状すると思ったのに───・・・。


次の瞬間、律花が────俺の背中にそっと腕を回した。


「だったら絶対はなさない」



(え?─────“だったら”って・・・・?)


それはずっと離さなくて良いってことなんだろうか?

一瞬そんな都合のいい解釈をしかけた。


(いや、違うよな。“話さない”って言ったんだよな?)


だけど背中に感じる腕の温もりは、間違いなく律花のもので。


(───細せぇ腕、細せぇ身体・・・)

いつの間にか自分より小さくなった彼女に、この細い腰に。

どうしようもなく可愛くて、触れたくて、離しがたくて。


(まいったな・・・・これ、)


本当に離さなくていいんだろうかと戸惑っているところに、自分の腕の中に閉じ込めたままの律花が不意に顔を上げた。


「────頼、」

「ん?」

「試合、頑張ってたね。おめでとう」

「・・・あ、ありがとう」


脳内が「可愛い」で埋め尽くされた。

あの(⚫ ⚫)律花が、甘えたような表情を向けてくるなんて・・・・。


ヤバい、これ以上は本当に、俺がヤバい。

早く、白状させてこの腕を離さないと────。



「───で?話、逸らす気?」

理性と闘いながらも俺がそう返すと、律花は少し照れたように目をそらした。


「・・・・あのさ、」

「うん」

「私は頼のこと、喜ばせたりは出来ないし」

「え?」

「さっきみたいに酷い言い方して、いつも頼のこと傷付けてるよね」


一体何の話が始まったんだろうか。

でも、何も突っ込まずにとりあえず俺は律花の言葉を黙って聞いていた。


「・・・・それなのに、私は頼からたくさん貰ってばっかり」


(───律花はいつも、そうなんだ)


「気づいてないかもしれないけど、“幸せな気持ち”───こうやってたくさん貰ってるんだ、いつも」


(そうやって、一人で─────・・・)


「頼、不安にさせてごめん」


(泣くのを堪えて笑うんだ。)


「でも、────私は、大丈夫だから」


(俺を安心させようと─────・・・・)


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