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試合は、うちの高校のバスケ部の圧勝だった。
「赤下のヤツ、律花ちゃんが見てるからって張り切り過ぎでしょー?ねぇ?」
里桜はニヤニヤしながら、私を見る。
「来てよかったね、律花。」
「・・・・そう、だね。」
もしかしたらもう見ることも出来ないのかもしれないから。
そう思ったら、切なさだけが募った。
(居なくなったら、どうしよう・・・・)
頼が隣に居なくなったらなんて、考えたこともなかった。
だって頼はいつも、私の傍に居てくれたから。
(当たり前の毎日が、当たり前じゃなかったことに今さら気づくなんて・・・・)
「律花ちゃん?大丈夫?」
「あ、うん・・・」
私の気持ちに勘づいたのか、里桜が心配そうに声をかけてくれた時、不意に後ろから腕を掴まれた。
「どうかしたのか?」
「よ、頼・・・・」
なんでここに?
「もぉ!赤下のせいで律花ちゃんが不安がってるでしょー?何とかしなさいよね!」
「里桜っ!」
里桜の言葉を遮ろうとしたけど、遅かった。
頼の眉間に皺が寄る。
(イヤだ!今は・・・・っ)
「は?」
「違う!頼には全然関係ない話だから!」
頼には気付かれたくなくて、私は咄嗟にそう口走っていた。
───怖かったんだ、頼の口から聞くのが。
(“引っ越す”とか“転校する”とか───そんな言葉を今、聞いてしまったらきっと泣いてしまうから)
だけど私のその咄嗟の一言は、頼をさらに不機嫌にさせてしまった。
「俺に“全然関係ない話”って、何?」