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もつれた糸の行方  作者: 夢呂
【6】恋人
123/140

117、里桜視点

「はぁ、」

軽く溜め息をつきながら、ゆっくりと人混みを抜ける。


(私ってば、結局気をきかせて──)


一体自分は・・・・何がしたいんだろう。

赤下はもちろんだけど律花だって・・・この夏祭りを二人で行きたいと思ってたことなんて───分かってたのに。


(でも、・・・・寂しかったんだもん)


だって・・・・律花は私と一番仲良かったのに。

なんだか赤下に、取られるみたいで。

私より赤下の方が大事になっていくのが悔しくて。


(二人を応援してたくせに、うまくいくと邪魔したくなる・・・なんて) 


「ほんと最悪だわ・・・」

自己嫌悪のあまりつい、そんな独り言が漏れる。


「ねぇ、もしかしてひとり?」

人混みを抜けて少し人通りの少ない道に出たところで、知らない男達が立ちはだかるように声をかけてきた。

「彼氏待ち?よかったら一緒に花火みない?」


ああナンパだ、と思ったけど正直もうどうでも良かった。

もう、いいやどうでもって思った。

────その時。


「何してんの、里桜。」

突然そう声をかけられたと思ったら私の腕を引いて歩き出す。

私は驚きながら、その手を振り払うこともせずについていった。


「ほらみろ、だから彼氏待ちだって言ったじゃん」

「次行くかー」

背後からそんな落胆する会話が一瞬聴こえてきたけれど、それもすぐに聴こえなくなるくらい早足でその場から離れた。




「危ないなぁ。あの二人に遠慮したのは賢明だったけど」


───知哉さんが、暫く歩いたところで私の腕を離して言った。


「悠さんのところ、行かないんですか?」

「行くよ連絡ついたし。───行く?一緒に」


(───この人、わかってて聞いてるよね?)

意地悪な笑顔でそう訊ねる知哉さんからフイと視線を外す。


「行かない」

「どうして?」

「嫌な顔をさせたくないので」

私の言葉に知哉さんが少し声をあげて笑った。


「じゃあ、家まで送ろうか」

「要りません」

「さっきみたいな(ヤツ)、たくさん出歩いてるよ?危ないって、里桜ちゃんかわいいんだから」


抵抗するだけムダみたいだと悟って私はおとなしく隣を歩く。

そして、私はずっと気になっていたことを訊ねる。


「───どうして私たちの地元に来たの?」

「ん?面白そうだなと思って」

前を向いたまま、いつもの笑顔で知哉さんが答える。


「それって悠さんのこと?それとも律花?」

「両方かな。あ、あと───」

知哉さんが言葉を切ると立ち止まる。そして私の顔をじっと見つめて言った。

「────里桜ちゃんも含めて、ね。」

「清々しいほど最低ですね」

「そう?」

嫌味を言ってやったのにたいして気にしてない調子で笑う知哉さんが憎らしい。だけど、意外にも少し真面目なトーンになって、知哉さんが続けて言った。


「───俺には無いものだから羨ましいんだよ」

「?」

「そういう感情、欠如してるから」

「・・・寂しいひと、ですね」

少し言い過ぎたかなと彼の横顔を盗み見ると、知哉さんは少し困った表情で笑った。


「────気にしたこと、なかったけどね」


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